被災した宮城の“猫の島” 災害基金で牡蠣養殖、漁業を再開

NEWSポストセブン / 2012年3月24日 16時0分

 その日、海に出ていた牡蠣漁師の尾形千賀保氏は、海上で島がブルブル震えているのを目撃したという。やがて津波が“猫の島”と呼ばれる人口70人の田代島を襲い、島の主幹産業だった数百を超える牡蠣養殖棚が全て失われるなど、壊滅的な被害をもたらした。

「今回の震災では、ほかの地域に比べ、離島への支援が大幅に遅れていた。さらに、島の漁師は高齢者が多く、収入源である牡蠣養殖の復興が難しいことは目に見えている。こんな時こそ、島が好きで移り住んだIターン組が何とかしなければと思ったのです」

 こう語るのは、8年前に移住し、田代島で民宿を営む濱温(ゆたか)氏。そこで濱氏は、島のもう一つの収入源となっていた “猫”の力を借りることを提案し、一口1万円の災害基金「にゃんこ・ザ・プロジェクト」をメンバーと共に立ち上げ、昨年6月に活動を開始した。

 全国の猫ファン、田代島ファンの反応は素早く、たった3か月で目標金額の1億5000万円に到達したという。

「震災前は、たくさんの観光客が猫に会いに来てたけど、我々漁師はあまり接する機会がなかった。その人たちが島を助けてくれる存在なんだと、改めて気付かされました」(尾形氏)

 基金は島の牡蠣養殖や漁業の再開に必要な資材購入などに充てられる。出資者にはオリジナル猫グッズのほか、牡蠣養殖が復活した暁には特産の島牡蠣が送られる予定だという。

 もちろん、基金は猫のためにも使われている。獣医が定期的に島を訪れ、1匹ずつカルテを作成して健康管理をしているおかげで、震災後100匹を切った猫は130匹まで増えたという。

「プロジェクトを通じて濱さんのような移住者と深く知り合えたのが一番の収穫のような気がするなぁ」と漏らした尾形氏。意外にも、これまでIターン組と島の古い住民同士が親交を深めるような付き合いはなかったという。

 島を愛して移り住んだ移住者と、全国の“猫の島”ファンの力を得て、小さな離島は復興へと歩み出している。

※SAPIO2012年4月4日号



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