父の仕事を1人で継いでも兄弟の遺産を全取りするのは不可能

NEWSポストセブン / 2012年3月23日 7時0分

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「父の農業を手伝ってきた私が、兄弟の分も遺産相続したいのですが」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 田舎で農業をしていた父が亡くなりました。兄と弟は都会に出て暮らしているので、二男の私が農業を手伝ってきました。母はすでに3年前に亡くなっているので、相続するのは兄弟3人だけです。農業をしていない都会の兄と弟の分も、私が相続したいのですが、どうすればいいのでしょうか。

【回答】
 ほかの兄弟が反対すると厄介な問題です。まず考え方ですが、兄弟3人ですから、法定相続分はそれぞれ3分の1ずつです。そして兄弟の中で、生前、被相続人から贈与を受けた者がいるときは、これを相続財産とみなして(特別受益の持ち戻し)加算した上で分割の計算をします。そして特別受益を受けた者は、相続財産を先取りしていたと扱い受益額を控除します。

 例えば特定の相続人にだけ贈られた結婚の持参金や学資などが、これにあたります。ただし、被相続人が持ち戻しを不要としていれば、この計算はされません。

 一方、相続人の中に遺産の維持・増加に特別に寄与した者がいれば、その分(寄与分)を遺産から控除した残りが共同相続人間で分割すべき相続分となり、寄与分はその寄与相続人の相続分に加算します。寄与分の額が相続人間で決まらないときには、裁判所が決めます。

 都会に出た兄と弟だけに特別受益があれば、お父さんがその兄弟のために余計に使ったお金を遺産に加算する必要があります。

 次にあなたが農業を続けていたことを寄与分として主張できるかですが、高卒後一貫して父親に協力して農業を営み、相当な資産を残した事例で、寄与分40%とした裁判例があります。また、教員をしながら親と同居して農業を手伝い、認知症の発症後、死亡時まで介護した相続人に、15%の寄与分を認めた裁判例があります。

 専業農家でお父さんを助けていたのであれば、寄与分が認められるでしょう。その額の目安としては、本来もらえた賃金相当額から生活費分を控除して、提供した労働の対価を計算することが考えられます。

 他に農家をすべて相続するには、兄弟の具体的相続分に相当する現金で精算する代償分割の方法により分割することも検討できます。

※週刊ポスト2012年3月30日号



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