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「スキル不安、会社不信、お金不満」1000人の本音【1】

プレジデントオンライン / 2013年9月9日 11時15分

アンケート回答者データ

東日本大震災と原発事故。2011年を語るときに、この2つの出来事を外すことはできないだろう。震災と原発事故の影響は、物理的なものに留まらない。日常が脆くも崩れ去っていく様子を目の当たりにして、自分の働き方や生き方を問い直した人も多かったはずだ。

激動の1年を経て、ビジネスマンの仕事や人生観はどう変わったのか。それを探るため、プレジデント誌読者1126人を対象にアンケート調査を実施した。回答者の平均年齢は45.8歳、平均年収は883万円。課長職以上が50.8%で、一般的な意識調査と比較すると、年収は高めでマネジメント層が多い。それを押さえたうえで調査結果を分析していこう。

■年収減のしわ寄せが管理職と経営層に

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図1 お金・学歴に不満を持っている人が多い

自分の人生において不満な点は何か。結果を見ると、上位には「お金」「学歴」「出世」「地位・名誉」といった項目が並んだ。「恋愛」や「友人」「結婚」などプライベートに関する不満は少ないが、一方で社会人として満たされていない思いが強いようだ(図1)。

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読者が選ぶパーソン・オブ・ザ・イヤー(PANA=写真)

「不満の根っこは同じ。すべてポスト不足に起因しています」と解説するのは、人事コンサルタントの城繁幸氏だ。

「いま働き盛りのバブル世代は、はしごを外された世代です。彼らは上の世代と同じように出世できると思って真面目に働いてきましたが、いざ40代になるとポストがなく、7割はいまだに平社員のままです。日本企業の多くは職能給なので、出世できなければ年収も上がりません。また、出世できない原因を学歴に求める人も多い。回答は割れていますが、これはポスト不足に対する不満がさまざまな形で表出したと見るべきでしょう」

年収に関しては、低年収層ほど自分の年収額に不満を持っている(図2)。ある意味で当然だが、注目は年収800万~1000万円の壁。これより少ないと年収への不満がグッと増える。

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図2 1000万円前後が年収満足の分かれ道

「世界的には、年収7万5000ドル(約600万円)までは収入と幸福度が比例し、それ以上になると年収が増えても幸福度に貢献しにくくなるといわれています。税制や物価の違いを考慮すると、日本の場合は800万~1000万円前後が分岐点。地域でいうと、地方なら800万円、東京なら1000万円あたりがボーダーになるのではないでしょうか」(城氏)

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読者が選ぶ上司、部下にしたい著名人(PANA=写真)

肝心の年収はどう変わったか。前年と比較して「増えた」と回答した人は38.1%で、「減った」の23.4%を上回った。09年、10年の調査では減少傾向が顕著だったが、ビジネスマンの年収はようやく下げ止まったのか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「減っていた賞与が、少し回復しただけ」と分析する。

「企業は08年のリーマンショックを賞与カットで乗り切りました。10年度に入ると、減り幅が大きかった製造業を中心に賞与を若干戻す動きが見られた。今回、年収が増えたという回答が多かったのは、その恩恵を受けた人がいたからでしょう。ただ、それでもリーマンショック前の水準には戻っていません」

マクロの視点から見ると、長期的な下落傾向は変わらないという。

「労働者の給与の源泉は名目GDPなので、その増減を追えば給与のトレンドがつかめます。具体的には、07~09年の3年間で名目GDPは約8%減少。10年に下げ止まりましたが、震災前からふたたび減少に転じ、11年7~9月期で少し戻すまで3四半期連続で減り続けました。長期的な下落傾向は明らかで給与もこれに連動して減っていくはずです」

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図3 中間管理職と経営トップの年収は減っている/図4 中間管理職の残業時間が多い/図5 若い世代ほど転職を真剣に検討している

給与が減って損するのは誰なのか。年収の増減を職位別に見ると、「減った」と答えた人は会長・社長クラスで27.5%、課長クラスで30.4%に達し、一般社員の21.2%を上回った(図3)。人件費減のしわ寄せを受けるのは、規制で守られている下の社員より、経営責任を問われる経営トップや、組合員ではない中間管理職のようだ。

とはいえ、一般社員も安心はできない。一般社員の収入は残業時間に左右されるが、残業時間を職位別に比べると、一般社員は課長や部長・次長クラスに比べて短かった(図4)。

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読者が選ぶ世界に誇れる日本企業

「震災後、サラリーマンの所定外労働時間は減り続けています。原因は2つあります。1つは、震災時にサプライチェーンが分断するなどして仕事そのものがなかったから。少ない給料を残業手当で補っていた一般社員は、この影響をもろに受けたはずです。一方、仕事はあっても、人件費抑制のために一般社員の残業を意図的に減らしたところもある。こうした会社では、残業代のつかない中間管理職にしわ寄せがいきました。どちらの層にとっても歓迎すべき状況ではないかもしれません」(小宮)

転職についてはどうか。この1年で転職を検討したことがある人は、20代で4割に達したものの、30~40代は3割以下だった(図5)。

「転職市場には、35歳以上になると求人が激減する“35歳限界説”があります。04年の法改正で求人に年齢の条件をつけてはいけないことになりましたが、その後も企業は人材紹介会社に裏で年齢の要望を出しています。ただ、企業の採用担当を責めるのは酷です。年齢で給与のベースが決まる人事体系において、年齢で線引きをするという企業側の判断は、ある意味で合理的。この状況を変えたければ、終身雇用のシステムから変えていかないとダメです」(城氏)

■半数近くの人がうつを身近に感じる

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読者が選ぶ転職したい会社(PANA=写真)

ちなみに転職したい会社ベスト10には、グーグル(1位)やアップル(3位)といった外資系が上位にランクイン。一方、ソニー(4位)やパナソニック(5位)など電機メーカーも健闘した(表)。ただ、城氏は「ソニーやパナソニックが上位なのは解せない」と手厳しい。

「電機メーカーに先はありません。なにしろつくったばかりの半導体工場を閉鎖しているくらいですからね。そもそもこれからはグローバル化によって、ものづくり分野の給与が低くなっていくことは避けられない。日本企業に転職するなら、メーカーより三菱商事(6位)ですね。商社は日本版投資銀行。知的集約産業は今後も成長が期待できます」

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図6 30~50代が“うつ”を身近に感じている

うつに関しては、もはや縁遠い病気ではなくなった。「うつになった人が周囲にいる」と答えた人は、40代で半数を超えた(図6)。40代でうつがもっとも身近になるのは中間管理職になって仕事に忙殺されるからだと推察されるが、城氏の意見は異なる。

「現場の声を聞いていると、忙しく働いている人より、35歳前後で燃え尽きてしまった人のほうがうつのリスクは高い気がしますね。ポストに余裕があった昔と違い、近年は30代後半で出世の白黒がつきます。競争に敗れた人は、会社で何の希望も見いだせないまま日々の業務をこなしていく。あるとき飼い殺しになっている自分に気づき、メンタルを病んでいくのです」

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小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶
1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現東京三菱UFJ銀行)入行。86年、ダートマス大学エイモスタック経営大学院にてMBAを取得。96年、小宮コンサルタンツを設立。
 
Joe‘s Labo代表取締役 城 繁幸
1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年、同社を退社し、人事コンサルティング会社を設立。『若者はなぜ3年で会社を辞めるのか?』など働き方や人事制度に関する著書多数。

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(ジャーナリスト 村上 敬 石橋素幸、小倉和徳、若杉憲司、上飯坂 真=撮影 PANA=写真)

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