1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「古い制度に縛られない政治勢力の結集、野党再編を目指す」 -浅田均(日本維新の会政調会長)

プレジデントオンライン / 2014年6月23日 11時15分

日本維新の会政調会長、大阪府議の浅田均氏。

■なぜ橋下・石原代表は袂を分かったのか

【塩田潮】2012年9月、大阪維新の会を母体に日本維新の会が結成され、11月に石原慎太郎氏(元東京都知事。現衆議院議員)らの太陽の党が合流して、橋下徹大阪市長と石原氏が共同代表になりましたが、結いの党の合流問題をめぐって、橋下氏と石原氏の意見の食い違いが表面化し、今年の5月28日、袂を分かって分党となりました。日本維新の会の結党のときから、いずれ橋下氏と石原氏が対立し、分裂するのでは、と見ていた人は少なくなかったと思います。そもそも12年になぜ両者は手を組み、一つの党に結集したのですか。

【浅田均(大阪維新の会政調会長)】僕らの原点は統治機構の改革です。最初は石原さんが都知事だった頃、一緒に大都市の首長連合を組もうという考え方だった。これからは中央集権体制で国が国民を引っ張っていく時代ではない。地方が国を引っ張っていく時代だ。だから、元気な地方をつくる必要がある。その点で、石原さん、橋下さん、愛知県知事の大村秀章さん、名古屋市長の河村たかしさんも同じ考えで、結びついていたわけです。石原さんとは、大都市がこれからの日本を支えていく、地方を元気にするための地方制度をつくっていく必要があるという点では完全に考え方が一致していました。

ところが、石原さんは国政に転じると、僕らが主張する統治機構改革や地方を元気にすることよりも、自主憲法制定とか原子力推進というところに先祖返りしてしまった。

【塩田】ですが、石原氏の個性や過去の言動を見れば、そうなるのは初めからある程度、予想がついたのではないかと思いますが。

【浅田】憲法問題も原子力などのエネルギー問題も、太陽の党と合流するとき、石原さんも納得して合意文書をつくったんです。僕らは合意文書に則って進めたのに、石原さんは「いや」と言って自分の原点に戻ってしまった。

【塩田】昔から自分の考えは譲らずに主張し続ける政治家です。その点も承知の上で合流を決めたのでは。そうでなければ、中央政界での石原さんの存在について、理解が足りなかったと言われても仕方ありませんね。

【浅田】その点は橋下代表も全然、承知していなかった。そう言われれば、そのとおりです。

【塩田】分党を決めた後、6月10日に結いの党の柿沢未途政調会長と会談して、「維新・結い」の合流に向けて7項目の基本政策で合意した、と報じられました。

【浅田】こちらは国会議員団の政調会長の片山虎之助さん(元総務相)と僕、向こうは小野次郎幹事長と柿沢さんで4者の政策協議を行い、7項目で合意しました。

【塩田】結いの党とは4月25日に参議院で統一会派を組みましたが、合流・新党結成はいつ頃までに。

【浅田】7項目の基本政策で合意しましたが、政策の細部をまとめた61項目について、実はこちらの国会議員団の中で了解が取れていません。それを7項目の共通政策にどういうふうに落とし込んでいくかという作業が必要です。来年4月の統一地方選挙のための運動を展開していく前段としての政策協議ですから、政策的な取りまとめは、遅くとも今年の7月頃までにできていないと、選挙の準備ができません。夏までには合流を前提とした政策協議を終えることにしたいと思っています。

■「維新」と「結い」と「みんな」、さらに民主党

【塩田】石原グループと分かれた後の維新は、野党側に立って、大同団結を目指して再編を推し進めていく方針だと思いますが、結いの党以外に、渡辺喜美前代表から浅尾慶一郎代表に交代したみんなの党とも、合同を視野に入れて交渉する計画ですか。

【浅田】はい。話をしていくつもりです。一緒にやりたいと思っています。

【塩田】橋下さんは維新と結いとみんなが一つになる方向を目指しているのですか。

【浅田】それに望むらくはプラス民主党も。対民主党で、僕は何人かの国会議員と定期的に意見交換しています。松井孝治さん(参議院議員時代に内閣官房副長官、民主党総括副幹事長などを歴任。現慶応義塾大学教授)を通して知り合った松本剛明さん(現政調会長代行。元外相)とは個人的なつながりがありますから、話し合いができたらいいなと思っています。

【塩田】2016年には参院選と衆議院議員の任期満了が控えています。狙いはやはり次期衆参選挙をにらんだ野党の結集ですか。

【浅田】目標はそこですが、その前段の統一地方選から一緒にやっていきたい。それが国政選挙の原動力になる。前段のところで敵味方に分かれて戦ったら、敵同士だから、修復できません。だから、統一地方選でできるだけ協力する。そこを見据えた政策協議です。

【塩田】「民主党も」と言いましたが、「民主党まるごと」ということですか。

【浅田】民主党はいま地方議員レベルで、神奈川県議とか横浜市議を中心に、結いの党、河村名古屋市長の減税日本、それから大阪維新の会と一緒に、ずっと勉強会を続けています。オブザーバーという形ですが、次から民主党の兵庫県議も参加したいという意向と聞いています。そういう場は広がりつつあると思っています。ですが、民主党でも官公労系の人たちは駄目ですね。民間労組系は、問題ないとは言えませんが、前原さんなんかは「官公労と民間労組は別に考えて下さいね」と言っていますから、一考の余地はあると思います。

【塩田】野党の大結集を推し進める場合、一番大きな問題となるのは。

【浅田】国家観ですね。僕らは地方主体の統治機構改革でこれからの国をつくっていこうと考えています。いま集団的自衛権の問題が大きな議論になっていますが、僕らは自衛権を再定義すれば、当然、集団的自衛権に入るものも含まれるし、内閣による憲法解釈の変更についても、憲法改正が直ちにできない以上、解釈による改憲も認めようという立場です。

ただし、チェック・アンド・バランスということで、憲法裁判所をつくるか、あるいは現在の最高裁に憲法判断を行う憲法部みたいな機能を持たせる。現在、違憲立法審査権を持つ最高裁は具体的な訴訟事件で憲法適合性を審査する通常裁判所というシステムで、1959年の砂川事件の判決でも、事件に付随して憲法に関する解釈をしているわけですが、そうではなくて、抽象的な解釈権を行使する憲法裁判所、あるいは憲法裁判所の機能を持った最高裁という形にする。内閣法制局が実質上の憲法解釈機関のようになっているのはおかしい。われわれは統治機構改革の一つとして、憲法を保障するために憲法裁判所、あるいは最高裁に憲法部みたいなものをつくりますと主張はしていますが、江田憲司さん(現結いの党代表)も、その点では見解は違わない。

【塩田】憲法問題以外で、結い、みんな、民主党との間で問題となる政策や路線は。

【浅田】エネルギー問題ですね。結いの党は明確に時期を切って2030年代に原子力発電を終えると言っています。僕らは自然的に淘汰されるだろうという見解ですから、そこは詰める必要がありますね。民主党も同じです。僕の個人的な見方ですが、結いと民主の細野さんのグループ、それから僕らと前原さんとは考え方が極めて近い。

■リーダーは橋下徹大阪市長が適任だ!

【塩田】野党の大結集によって新しい政治勢力をつくり出したとき、トップリーダーに誰を擁するかが最大の課題です。

【浅田】手前味噌になりますが、それぞれの国政政党で代表を務めた方ではなく、まだ手垢が付いていない橋下が最適だと思いますが。

【塩田】であれば、橋下さんはいま取り組んでいる大阪都構想などの改革のめどがつけば、次は国政に出なければなりませんが、その決意を固めていますか。

【浅田】本人は、もうこれでいい、政治の世界は堪能したから、弁護士稼業に戻りたいみたいなことを言っています。ですが、僕は国政に出て頑張ってほしいと思っています。大阪都構想のめどが立つのは、今秋から来年の統一地方選の頃ですね。来年4月実施と唱えてきましたが、ちょっと遅れそうです。遅くとも統一地方選とセットで住民投票ができるような流れに持っていきたい。

【塩田】そうすると、橋下さんが国政に転じるとすれば、次の総選挙か参院選ということになりますね。

【浅田】彼は本当によく働きますから、ちょっと休みたいと思っているのは事実です。ただ、そこで休んでしまって、いったん政界から姿を消すと、過去の人になってしまう。僕の個人的な希望にすぎませんが、大阪都構想で実績をつくって、その実績を持って日本の改革に取り組むというスタンスで国政に乗り込んでほしいですね。

【塩田】ですが、リーダーとしての橋下さんのパワーダウン、人気の落ち込みが目立っています。石原グループが合流した後、急速に「維新ブーム」が消えました。さらに従軍慰安婦などをめぐる発言も重なって、橋下さんの求心力と指導力に疑念を持つ人が多くなっています。現在の維新の低迷は、橋下さんの言動も大きな原因となっているのでは。

【浅田】それは確かに否定はできないですね。ですが、もともと狭い土地に米軍の基地が集中している沖縄は負担が大きすぎるから、重荷は広く国民で分かち合うべきではないかという問題意識に立って、米軍の兵士が起こす事件の問題を取り上げた発言なのに、あそこまで発展してしまった。

【塩田】将来、橋下さんが国政に転じて、日本のトップリーダーを目指すとすれば、アメリカとの関係が重要な課題になります。この前の発言問題で、アメリカとの関係がまずくなっていますが、日米同盟は続きます。アメリカ側の橋下観を変える努力が必要では。

【浅田】関係を悪化させてしまった面はありますが、折に触れて、来日したアメリカの要人と話し合う場を持っていますから、そういう地道な努力を続けていきたいと言っています。僕らの基本的な方針である「維新八策」も英訳して、アメリカの大使館や領事館の人に見てもらいましたが、向こうも基本的な価値観は共有できるという受け止め方です。アメリカ政府の側には、将来の有力なパートナーの一人という認識を持ってもらっているので、僕自身も、その点をもっと強調して、マイナスの部分が消えていくような努力を続けたいと思っています。

【塩田】橋下さんに注文するとすれば、どういうところですか。

【浅田】一緒にやってきて、いまのところ、あえて注文を付けなければというところはないですね。実によく本を読んでいるし、勉強している。人の話をよく聞いています。自分から絶対に言いませんが、見えないところで人一倍、努力しています。

■「アベノミクス」は成功したとは思わない

【塩田】現在の安倍政権をどう見ていますか。

【浅田】アベノミクスは結局、失敗に終わると思っています。物価が上昇しても、結局、賃金が上がらないという最悪の結果に近づいていると思う。そういう意味では約束は守れなかった。株価も上がって多少、景気がよくなった部分もありますが、実質的な意味での経済成長は実現できていません。「3本の矢」の肝心の成長戦略では、規制緩和が前に進まない。岩盤規制はいまも健在です。デフレから脱却できたかどうかというところにきているのは事実ですが、デフレ脱却で個人の実質賃金が上がっていくという明るい展望はないから、アベノミクスは成功したとは僕は思わない。

【塩田】安倍首相は集団的自衛権の行使容認の実現に懸命です。維新の会は、この問題では安倍首相の姿勢を支持していますね。

【浅田】いまの法制下では対応できない事態が想定され、法整備が重要となって、それに取り組んだという功績は大きい。有事の場合の自衛権の行使や防衛行動について、いままでの変な理屈をきちんとした理屈に変えたという功績も大きいと思います。もともと集団的自衛権という概念は、国連憲章第51条に書いてあるだけで、日本は集団的自衛権、個別的自衛権と分けて考える必要はありません。全部を自衛権という範囲で考えるべきです。

【塩田】以前のインタビューで、「安倍さんが自民党総裁に復帰する前、維新の会が構想する新政治勢力のドリームチームのトップに安倍さんを担ぐプランを想定していた時期があった」とお聞きしました。その後、首相に返り咲き、在任期間も1年半が過ぎましたが、安倍首相の政治の進め方やリーダーシップについて、どう見ていますか。

【浅田】やはり人柄のよさがあり、それで人を集めていると見ています。チーム内のオフェンスとディフェンス、フロントベンチとバックベンチが役割を分担し、うまく回っていると観察をしています。僕らのドリームチームのトップに、と考えましたが、こちらのベースでやってもらえたら理想的だったなと思う。そういう意味では、僕らは見誤っていなかった(笑)。ただ、経済政策の部分ではこれから怪しくなるだろうと思いますが。

【塩田】安倍首相は維新を友党と見て、当てにしているのでは。集団的自衛権の問題や将来の憲法改正で現在の自公連立政権ではうまくいかないと思ったときは、連立の組み替えを行って維新を政権に引っ張り込む考えも持っているのではないかと思いますが。

【浅田】いまは与党と野党です。連立を組んだ時点で僕たちの存在理由はなくなります。存在する理由があるのですから、この立場を貫く必要があります。だから、安倍政権とは是々非々で対応する。国会では多数党が内閣を形成するから、是々非々の関係はないですが、僕らは地方議会出身の発想だから、是々非々という対応は「あり」と考えています。

【塩田】中央政治では、長期の自民党政権の後、民主党政権が誕生し、その後に自民党政権が復活しましたが、混迷が続くいまの時代、国民にとって、政治が果たさなければならない最大の役割は何だと思いますか。

【浅田】政治の役割は、何といっても国民の生命と財産を守ることにあると思います。その観点に立つと、穴の空いているところは埋め、現実に即して政策を立案していく。国家と国民の利益を求めて現実的な政策を打ち立てていくという政治スタンスのプラグマチック集団はいままでなかったので、新しい現実に即して法律をつくり、穴を埋めて、国民利益を守っていく。そういう勢力を形成していきたい。それにプラスして、いまの豊かさを維持し、それ以上に豊かにしていく。そのためには古い制度に縛られない政治勢力の結集が必要ですから、それを目指して野党再編を進めていく。

■新しい世界秩序をつくる一角を担うリーダーになれる

【塩田】これからはどんな型のリーダーシップが求められていると思いますか。

【浅田】既成概念にとらわれないことが重要でしょうね。既成概念にとらわれると、落とし穴にはまり、新たな展開ができない。とはいえ、鳩山由紀夫元首相のようにファンタジーの世界に行ってしまうと、プラグマチックな実践改革はできません。あくまで現実を見るリアリストの目とプラグマチックな行動力を兼ね備えた人がリーダーになって、集団を形成し、日本を引っ張っていってほしいですね。

【塩田】リーダーとして、安倍首相と橋下さんの違いは。

【浅田】一番の違いは、橋下代表はまだ40歳を少し過ぎた年代で、日本が豊かな時代を迎えた後に生まれたという点です。いままでの政治家は、アメリカには借りがあるとか、敗戦国の負い目を背負って政治をやってきましたが、それがない。世界の人々と基本的な価値観を共有できる初めての世代で、新しい世界秩序も、自分たちが中心になって話し合ったら、同じ価値観を持っている人たちにもっと呼びかけることができる。そういう意味で、戦後初の世代による政党が初めて形成されたといっていいと思う。新しい世界秩序をつくる一角を担っていける人材と僕は思っています。

【塩田】浅田さんはなぜ政治の世界に。

【浅田】親父にだまされたんですよ(笑)。OECD(経済協力開発機構)の職員としてずっとパリで働くつもりでいたのに、「癌になったから、日本に帰ってこい」と言われた。OECDの仕事が終わったら、どこかの大学の教授か、通訳のボランティアでもしようと思っていた。親父に「議員なんて、ボランティアみたいなもの」と言われ、帰ってきたのがきっかけです。

【塩田】なぜOECDに。

【浅田】NHK時代にアメリカのスタンフォード大学に留学させてもらった。NHKに戻った後、研究成果をどう発揮できるのか、悩みがありました。そのとき、外務省の友だちからOECDの代表部に専門調査員で2~3年、行ってくれないかと打診があった。

最初は外務省の職員としてOECD日本政府代表部の専門調査員となり、そこで働いている間にOECDの事務局からこないかと言われた。OECDの職員は政策提案をやる。当時は東欧の人たちが自由主義経済圏に入りたいという意向を持ち始めていた。どういうネットワークをつくったらいいかということで、通信の開放と、プラス情報・通信の仕事をさせてもらった。面白かったから日本に帰ってくる気はなかったんですが(笑)。

【塩田】政治家としてこれからはどんな役割を。

【浅田】後は後進を育てることだと思っています。僕は家老的な役割ですね(笑)。

【塩田】「大阪都」ができたときに、「都知事」に挑戦するという気持ちは。

【浅田】それはもっと若くてふさわしい人がいると思います。

【塩田】ありがとうございました。

----------

浅田 均(あさだ・ひとし) 日本維新の会政策調査会長・大阪府議
1950(昭和25)年12月、大阪市城東区生まれ(現在、63歳)。大阪府立大手前高校、京都大学文学部哲学科卒。日本放送協会(NHK)に入り、アメリカに留学してスタンフォード大学大学院修士課程修了。その後、経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部に転じ、パリに在住。英語、フランス語を使いこなす。父親の浅田貢氏(当時、大阪府議)の要請で帰国し、1999(平成11)年に大阪府議に当選する。現在4期目。3期目の2008年2月の大阪府知事選挙に橋下徹氏(現「日本維新の会」代表、現大阪市長。前大阪府知事)が出馬したとき、自民党府議団のメンバーとして支援したのが橋下氏との出会い。11年5月から14年5月まで大阪府議会議長を務めた。維新の会政調会長として橋下代表の「知恵袋」の役割を担い、12年8月に「日本維新の会」の党綱領の基となる「維新八策」を起草するなど、政策立案の柱として「橋下体制」を支えてきた。維新の会が推進する大阪都構想を実現するため、大阪市を廃止し、特別区の設置を協議する「大阪府・大阪市特別区設置協議会」(法定協議会)が13年2月に設置されたが、発足時から会長を務めている。一方、野党再編を視野に、「結いの党」や「みんなの党」などとの政策協議の中核として活躍中。著書は、大阪維新の会(政調会)著・浅田均編『大阪維新――チーム橋下の戦略と作戦」(PHP研究所刊)。

----------

(作家・評論家 塩田 潮 熊谷武二=撮影)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください