「何事もバランス」-畠山健介
プレジデントオンライン / 2014年6月27日 11時15分
はたけやま・けんすけ●1985年、宮城県気仙沼市出身。仙台育英学園高校を経て早稲田大学スポーツ科学部に進学。小学校時代にラグビーは始めていたものの、本格的に取り組みだしたのは高校生になってから。高校時代には3年連続の花園出場を果たし、高校日本代表にも選ばれた。大学時代にも学生日本代表となる。08年早稲田大学卒業後、サントリーに入社。サントリーサンゴリアスの中心選手として活躍している。
■畠山健介(ラグビー日本代表プロップ)
サッカーのワールドカップ(W杯)の日本代表の不振をよそに、ラグビー日本代表がイタリア代表を初めて下し、テストマッチ(国代表同士の試合)10連勝をマークした。原動力はスクラムの安定で、そのけん引車が右プロップの畠山健介である。
178cm、115kg。大きなからだを揺すりながら、畠山は人懐っこい笑顔を浮かべる。
「春のツアー最後の試合を勝利で終えることができて、ホッとしました。いいスクラムを組めたことは自信になります。これに満足せず、今後もひたむきにやっていきたい」
21日のイタリア代表戦(東京・秩父宮ラグビー場)。最初のスクラムを組んだあと、畠山は周りの選手に「今日はイケる」と声を掛けていた。なぜ。
「イタリアの重さは感じたけど、こちらもバック5(ロックとバックロー)の重さを十分、感じとることができたからです。これは、自分たちでスクラムをコントロールし、いいボールが出せると思いました」
スクラムは地味なプレーながら、ラグビーの基本中の基本である。ここの優劣が勝敗を左右する。ツアー最後に欧州六カ国対抗でもスクラムが強いといわれるイタリアFWを押したことは日本代表の躍進を印象付けた。
スクラム成長の理由は、元フランス代表のプロップだったマルク・ダルマゾコーチの就任とハードワークにある。
「ダルマゾが来て、スクラムの意識改革をしてくれた。バック5が押してくれるようになった。理不尽だなと思う練習もありますが、その分、まとまりと意識の部分で向上しているのではないでしょうか」
宮城県気仙沼市出身。中学時代はバスケットボールを中心に活動していたが、仙台育英学園高校時代にはラグビー部で3年連続の全国高校選手権大会(花園)出場を果たした。早大でも活躍し、サントリーでも不動の3番として人気を博する。
スクラムだけでなく、フィールドプレーでも走力とテクニックを披露する万能選手。当たってよし、走ってよし、ボールを持った時の動きはきらりと光るものがある。
イタリア代表戦で日本代表キャップ(テストマッチ出場)数は「58」となった。入社3年目の2010年、「現役でいられる間はプレーに専念したい」とプロ転向。11年の東日本大震災の際は実家が被害をこうむったこともあり、被災地復興に対する思いもつよい。
血液型がO型。陽気なキャラの28歳は、ラグビーの人気アップを常に意識している。イタリア戦後のテレビインタビューでは珍しくフロントロー3人が呼ばれ、畠山もテレビカメラに囲まれた。
「フロンロー3人、インタビューにそろい踏みですよ」なんて聞けば、「日本でフロントローがとりあげてもらえるのはうれしいですが」と苦笑した。
「ライト層というか、新しいラグビーファンを獲得するためには、うちのカッコいいバックスが前面的にメディアに出てくれたほうがファンは増えると思いますので」
愛称が「ハタケ」。観ていて楽しくなるようなラグビーを標榜する。モットーが「何事もバランス」という。プレーも生活もバランスが肝要なのである。
日本代表の世界ランキングは初めて10位に上昇した。来年のW杯に向け、ハタケの、そしてジャパンの進撃がつづく。なんと言っても、ジャパンに「スクラムを押すぞ」という『スクラム文化』が醸成しつつある。最後に、そう問えば、畠山は冗談っぽく笑った。
「いえいえ、その答えはワールドカップが終わってからにします。サッカーの本田くん(圭佑)みたいに大きなことを言えませんから。結果を出してからにします」
サッカー人気に負けるな。結果とは、来年のラグビーW杯でスクラムを押して、ベスト8に進出することである。
(ノンフィクションライター 松瀬 学 松瀬 学=撮影)
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