大地震が起きても安全な中古物件はどこが違うか
プレジデントオンライン / 2014年8月13日 11時15分
建物が地震に強いかどうかを見分けるポイントとしてよく知られているのが、現行の耐震基準(新耐震基準と呼ばれる)を満たしているかということだ。新耐震基準は1981年6月に施行されたので、それ以降に建築確認が下りていればひとまず安心ということになる。
国土交通省の2008年時点の推計によると、新耐震基準を満たしていない旧耐震基準の住宅は、約4950万戸のストックのうち3分の1強の約1700万戸あるという。とはいえ、旧耐震基準の住宅がすべて大地震で倒壊するわけではない。東日本大震災では新旧を問わずマンションで倒壊した例はなく、「中破」や「小破」と認定された割合にも新旧の差はほとんどなかった。
旧耐震だから地震に弱いとは一律に言えないが、耐震診断や耐震改修を行えば耐震性は確保できる。国では旧耐震住宅を対象とした耐震診断・改修の補助制度を行っており、診断・改修をして耐震性が確保できれば税金の軽減が受けられたり、固定金利のフラット35を利用することができる。しかし09年末時点の累計では、耐震診断を受けた住宅は約97万9000戸、耐震改修した住宅は約6万戸どまりだ。特にマンションの場合は共用部分の診断・改修に管理組合の同意が必要なため、普及のハードルが高い。
■耐震等級、設備のほか防災マニュアルも
新耐震基準をクリアしていれば大地震でも建物が倒壊しないとされるが、損傷する可能性はある。損傷の程度が大きければ給排水管がダメージを受けたり建物が傾いたりするケースもあり、大規模な修繕をしなければ住み続けられなくなる事態も考えられる。そこで大地震でも損傷しにくい住宅を見分けるポイントとして、耐震等級が挙げられる。
耐震等級は住宅品質確保促進法(品確法)に基づく住宅性能表示制度に規定されているもので、等級1から等級3までの3つのランクがある。等級は数字が大きいほど性能が高く、等級1は新耐震基準レベル、等級2はその1.25倍の強さ、等級3は等級1の1.5倍の強さという意味だ。等級が高いと地震保険の保険料が割引される特典もある。
住宅性能表示制度じたいは00年度からスタートしており、最近の新築住宅着工戸数に占める普及率は20%前後だ。築10年前後までの中古住宅なら、住宅性能評価書で耐震等級を確認できるケースもあるだろう。ただし、直近のデータによると一戸建ては等級3が9割近くに達しているが、マンションは等級1が9割を占める。マンションで等級2や3にこだわって物件を探すと、極めて対象が限られるので注意が必要だ。
なお、マンションでは免震構造を採用するケースも見られる。基礎にゴムなどでできた免震装置を組み込み、地震のエネルギーを吸収して揺れを抑える構造だ。この免震構造は耐震等級では「評価対象外」とされるが、地震保険では等級3と同レベルの割引が受けられる。また油圧ダンパーなどで建物の揺れを抑える制震構造を採用するケースもあり、耐震等級には反映されないが、地震の揺れを小さくするとされている。
さらに最近のマンションでは、防災用品の備蓄庫を設けたり、停電時でもエレベーターなどを長時間動かせるよう自家発電装置を増強するといった動きが目立つ。家具転倒防止用に壁に下地を付けたり、防災マニュアルを作成して管理会社が防災活動をサポートする例もある。
こうした取り組みは東日本大震災以降に広がったもので、中古物件で探すのは難しいかもしれない。だが中古でも防災マニュアルを整備するケースは見られるし、マニュアルがあるということは管理組合がそれだけ防災活動に熱心ということだ。建物や設備だけでなく、住民のコミュニケーションなどソフト面での防災対策も重要なポイントだろう。
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1962年、東京都生まれ。立命館大学法学部卒。住まい研究塾(sumaken.jp)主宰。著書に『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)など。
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(住宅系シンクタンク・オイコス代表取締役 大森 広司)
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