なぜ「損保頭」「生保頭」はいらないのか
プレジデントオンライン / 2014年10月1日 12時15分
■グループ事業の全体最適を図る
損保ジャパン日本興亜グループの誕生とともに、私はグループCEOとしての自覚を再認識した。私の使命を一言でいえば、グループ事業の成長に向けて経営資源の全体最適を図ることに尽きる。よりわかりやすく表現すれば、新しいグループの方向性を明確にし、なぜそうするのかを国内外5万5000人の社員に発信するということだろう。グループ全体を牽引する大きな役割を果たしたいと考えている。
そこで役割の1つ目は、全グループが一丸となって、ビジョンの実現に向け、力強く前進させることである。当然のことだが、新しいグループには経営理念・行動指針・目指すグループ像が定められている。それらに共通しているのは、「お客さま評価日本一」を実現する最高品質のサービスの提供にほかならない。このことは、海外32カ国に広がる事業会社も同様。そして、そこにはスピード感も必要である。私自身が率先垂範で推進していくことでグループブランドの強化とグループ各社の発展につなげていく。
さしあたり、2015年度を最終年度とするグループ全体の中期経営計画を達成しなければならない。いうまでもなく、中計は数値目標を伴う。私がとりわけ重要だと思うのは修正連結利益だ。これについては順調に進んでいる。2013年度に1015億円となり、2014年度は国内損害保険事業のさらなる収益改善効果などにより1460億円への増益が見込める。この勢いを駆って、2015年度はさらなる収益性改善と国内生命保険事業、海外保険事業を中心とした成長戦略を加速させたい。
2つ目がコーポレートガバナンスの構築である。当社は、2014年度のスタート時では社外取締役は外国人1人を含んだ4人になっており、当社とのしがらみや利害関係のない立場から意見・提案をしてもらっている。
■広い視野を持つ意識改革を促す
しかし「これがベスト!」というガバナンスはありえない。欧米流の社外役員を中心としたボードのあり方はコンプライアンスおよびリスクマネジメントの質を高めるという点で有効であるのは間違いないが、今後はむしろ果敢にリスクを取りながらも高度なリスク管理のもとで戦略的に資本を投下し、イノベーションを起こしていくという点で大変参考になる側面を持っていると考えている。そのことは、アップルやアマゾンのように優れた経営体制を擁する企業が証明している。
そして3つ目は、経営戦略上の的確ですみやかな意思決定だ。例えば、この5月に完了した英国キャノピアスの買収がそれに当たる。私どもでは、これまでも海外事業拡大の基本方針に沿って、戦略的投資を行ってきた。今回の狙いは、イギリス・ロンドンのロイズを通じてグローバルな保険市場への足かがりを得ることにあった。キャノピアスではスペシャルティと呼ばれる特殊な分野の保険を中心に世界約200カ国の保険を引き受けており、キャノピアスを通じて全世界にアクセスすることができる。
また、キャノピアスは将来の成長やリスクシナリオをもとにした迅速な意思決定を基本とし、ガバナンス、保険引受ノウハウなどの点で学ぶことも多く、当グループの海外保険事業とのシナジーを最大化できると判断したことが決定要因だったといっていい。
私は常々、社内のさまざまな会議に出たときに「損保頭は捨てろ!」といっている。入社以来、何十年も損保事業に携わっていると、発想や判断の基準が損保一色になってしまうからだ。グループ会社の損保ジャパン日本興亜ひまわり生命なら「生保頭はいらない!」ということになる。もちろん、関係当局への書類作成などの基本的なスキルは、これまで以上にブラッシュアップする必要はある。
しかしその上で、今後、「真のサービス産業への進化」に向けてさまざまな事業をグローバルに展開していくためには、業際を越えての広い視野を持つことが大事だ。全グループの社員に、そんな意識改革を促すのも私の大切な役目だ。
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1956年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、安田火災海上保険入社。2010年に損害保険ジャパン社長に就任、2014年9月より損保ジャパン日本興亜会長。12年より日本興亜損保との持ち株会社NKSJホールディングス(現・損保ジャパン日本興亜ホールディングス)社長を兼任。
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(損保ジャパン日本興亜ホールディングス社長 櫻田 謙悟 構成=岡村繁雄 撮影=市来朋久)
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