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脱・公家体質! キリンは「一人負け」から脱却できるか?

プレジデントオンライン / 2015年2月12日 18時15分

磯崎功典氏

■「王者復活」への険しい道のり

2014年の課税済み出荷量が10年連続で前年割れし、長期低落傾向から抜け出せない国内ビール系飲料市場で不振が際立つキリンホールディングス(HD)が、5年ぶりに社長交代に踏み切る。3月末にHDの三宅占二社長が代表権のない会長に退き、後任に国内飲料事業を統括する中間持ち株会社「キリン」と傘下の事業会社キリンビールの社長をそれぞれ兼務してきた磯崎功典氏が昇格する。

これに先立ち、1月1日付でキリンビールマーケティングの布施孝之社長を、キリンビール社長に充てた。トップ人事の刷新を機に反転攻勢に打って出る狙いとみられ、磯崎氏は「キリンの復活はここ数年にかかっている」と、退路を断った覚悟でかつての王者復活に賭ける。

しかし、中核のビール系飲料事業の不振は深刻だ。14年の国内シェアは33.2%と前年から1.6ポイント落とした。38.2%と逆に0.6ポイント伸ばした首位のアサヒビールとの差は開くばかりで、5年連続で後塵を拝した。第3位以下のサントリービール、サッポロビールもシェアを伸ばし、キリンの一人負けが鮮明になった。

さらに昨年は、株式時価総額でアサヒグループホールディングスに逆転を許し、05年に経営統合交渉に入りながら破談に終わったサントリーホールディングにも、14年12月期の通期売上高で酒類業界首位の座を明け渡す見込みだ。その体たらくに、かつて国内ビール市場で5割を超える圧倒的シェアを誇った“ガリバー”の面影はない。さらに、11年に3000億円(当時)を投じて買収したブラジルの大手ビールメーカー、スキンカリオール(現ブラジルキリン)は苦戦が続き、積極的に展開した海外M&A(企業の合併・買収)は収穫期にほど遠く、王者復活への道のりは険しい。

■「公家体質」から脱却できるか

磯崎氏は「これまでのキリンは公家集団で、闘う姿勢に欠けていた」と語り、変革の風を企業風土に吹き込み、業界で揶揄されてきた「公家体質」からの脱却を目指す。手始めに、屋上屋を重ねる経営体制で指揮系統が明確でなく業績低迷につながったとの指摘がある中間持ち株会社キリンとキリンHDについて、3月末に取締役、執行役員の体制を見直し、組織の一体的、機動的な運営を図る。さらに磯崎氏が復活に向けて真っ先に取り組む課題に、国内ビール系飲料事業の強化を掲げる。年初に発表した15年事業計画で主力の「一番搾り」を代表格に「ビールジャンルへの最注力」を打ち出し、反転攻勢を宣言したほどだ。

しかし、公家集団のぬるま湯体質と負け癖が付いたかつての王者が復権するには、期待と不安が入り交じる。なぜなら、政府が1月14日に閣議決定した15年度税制改正は、3ジャンルに分かれるビール系飲料に対する酒税税率の見直しに早期に結論を出すと明記したからだ。与党内で検討される税率見直しは、本流の「ビール」への税率を下げ、麦芽比率が低く低価格を売りとする「第三のビール」の税率を上げる方向にある。キリンは第三のビールに注力してきた結果、ビール系飲料に占める「発泡酒」と第三のビールの比率は約65%に達し、酒税見直しの影響は業界内で最も大きいとみられる。

ビールでトップを独走する「スーパードライ」を抱えるアサヒは、その比率が約35%と低く、キリンとの差は歴然としている。15年事業計画でビール最注力を打ち出したのも、税率見直しを視野に入れた判断だ。しかし、ビール離れが進み、市場が縮む中で量とシェアの二兎を追うのは並大抵でない。王者復活に賭ける磯崎次期社長にとって、多難な船出が待ち受ける。

(キリン社長 磯崎 功典 撮影=的野弘路)

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