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iPhoneは変なのか、違うのか……? 180°視点を変える発想法

プレジデントオンライン / 2015年8月10日 8時15分

■地図の真ん中に日本があるのは、正しいか?

欧米の道を歩いていると、それぞれに名前がついている。長細いプレートに道の名前が書かれた標識が交差点に立っているため、645 Beacon streetといえばビーコンストリートを歩いて645番の建物が目的地という風だ。デレク・シバースは日本人が道を尋ねるなら、アメリカ人と逆の発想をすると講演で語っていた。そこにあるのは、文化の違い以上の “視点の違い”。それは、こんなものだ。

日本人が住所を探すときには、まずは番地や何丁目かの“区画”を探すだろう。だから、アメリカで道に迷ったらやりとりはこんな風になる。

日本人「この区画の名前は何ですか?」
アメリカ人「この区画に名前はなく、名前は道についています。名前のない部分が区画です」

そう、道に名前があっても、区画には番地のような名前がないのだ。

では、アメリカ人が日本に来て道を尋ねたとしたらどうなるかだろう。

アメリカ人「この道の名前は何ですか?」
日本人「道に名前はなくて、名前は区画についています。ここのあたりは8丁目で、この区画は16番地。ですからここは8丁目16番1号の家です」

所変われば、発想そのものも見方も変わる例である。道に名前がつくアメリカと、細い道には名前がなく、その囲まれた区画に名前がつく日本。そして、日本の地図では、もちろん日本が真ん中に置かれている。ところが、欧米からすれば日本は「極東」であり、地図の右端にあることが多い。

物をどこから見るかで、大きく発想は変わっていく。正しいか間違いかではなく、ふたつの地図はどちらも正解だ。ただ何を真ん中に据えたかという、捉え方や視点の違いで仕上がりはこんなにも違ってくるということだ。

では、最近流行のマテ茶から、地球の裏側の発想をみてみよう。

■地球の裏側の、逆の視点もまた正なり

アルゼンチンで取材をしたときに、草原で牛を飼うガウチョ(カウボーイ)たちがビタミンをとるためにマテ茶を飲んでいた。最近は日本でも人気のお茶で、その豊富な栄養から「飲むサラダ」との異名もとる。日本では急須やティーポットに茶葉を入れて湯を注いでカップで飲むか、あるいはペットボトルでゴクゴクとやるだろう。

ところが、本場での飲み方は大きく違う。ひょうたんのカップに茶葉を入れて湯を注ぎ、先が茶こしになった鉄やアルミのストローをさして飲む。ストローの先が茶こしになっているおかげで茶葉が口に入らず、しかも熱いお茶を熱いままにいただける仕組みだ。

急須かティーバッグで茶葉を濾して飲むのが“正しい”私たちにしてみれば、なぜカップに茶葉を入れ、茶こしのついた、しかも金属系のストローで熱いお茶を飲むのか不思議に思える。実際、ストローを通って口に入るお茶はかなり熱い。一説によると、草原で生活をするスタイルの中で、水筒のようにこぼさず、しかも南極に近い寒い土地柄で熱いお茶を熱いままに飲むためだという。ガウチョたちにしてみれば、むしろティーポットを汚して熱いお茶をカップに移し、冷まして飲むこともない……のかもしれない。

お茶の入れ方ひとつでも、逆もまた真なり。どちらが正しいわけでもない。

「当たり前」の概念を崩すことは難しいが、こうして考えてみれば、自分で勝手に“これが当たり前、あちらは間違い”だと思い込んでいるだけで、本当は生かせる視点や発想はたくさんあるのかもしれない。

デレク氏は「正しいことの逆は、また正しい」というインドの言葉を紹介していた。奇妙に見えても、ただ違うだけ。互いに“ふつう”の文化であり、特にスペシャルなことではない。それでも、地球の裏側の当たり前にヒントをもらうような視点を持つことで、画期的な製品が生まれたり、すばらしいプロジェクトが生み出せたりするのかもしれない。

では、ビジネスでこうした「視点を変える」発想を見ていこう。

■ビジネスで生かす、視点を変える発想法

ある企業が、塩の売り上げを大きく伸ばしたこんな話がある。商品の売り上げを伸ばすために会議をし、マーケティングを展開し、販売促進を行い……としているところで、ひとりの女性社員が「塩が出る穴を大きくしたら使う量が増えるのに」と言ったという。なるほどと塩が出る穴を改善したところ、売り上げが伸びたというもの。

つまり、誰もがいかに売るかをやっきになって考えている中で、その人は消費を増やすことに視点を置きかえたというわけだ。真相はともかく、会議やマーケティングと発想が凝り固まったところに、少しだけ違った視点を持ち込むことで大きく飛躍できる発想例だといえるだろう。

同様によく聞かれるのは「アフリカに靴を売る」話だ。アフリカで靴を履かない地域をまかされた営業が、「その地域では靴を履かないから、靴は売れない」と考えるか、「靴を履かなかった地域だからこそ全員が買ってくれるかもしれず、大きな市場となりうる可能性がある」と捉えるかというものだ。今まで履いていなかったのだから、もし履きはじめたときに初期参入をしておくことは、大きな利益につながるだろう。「裏返しも考えてみること」が、より大きな可能性を生むかもしれないのだ。

スティーブ・ジョブズは携帯電話からボタンをとり去り、レコード会社やアーティストが嫌ってきた音楽のダウンロード配信を、iTunesでビジネスとして成立させ、音楽販売ビジネスの形態を根本的に変えてしまった。ハード面を優先に考えてきたコンピュータや機器の世界で、コンテンツやデザインなどソフトの側面から考えて必要なハードに落とし込むことで新たな発想が生み出せたのだ。

変なのか、違う視点なのか……ひとつの物事を表からも裏からも見て発想に生かすことは、ビジネスでも大きく生かせるはずだ。

[脚注・参考資料]Derek Sivers: Weird, or just different? TED India 2009, Nov 2009

(コミュニケーション・アナリスト 上野 陽子)

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