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「ここがおかしい! うちの上司」新人社員覆面座談会

プレジデントオンライン / 2015年8月26日 11時15分

新入社員については、「ゆとり世代のせいか、おとなしくて覇気がない。ハングリー精神がなく、出世欲がない。指示待ち型人間ばかりで、言われたことしかしない……」など、様々なことが語られています。しかしながら、当の新人たちが、上司や先輩をどう見ているのか、仕事や会社についてどう考えているのか、語られることは少ないように思います。

そこで、入社1~3年目の若手社員による覆面座談会を敢行しました。集まっていただいたのは、情報通信のAさん、ヘルスケアメーカーのBさん、金融のCさん、外資系メーカーのDさん、人材サービスのEさんです。平成生まれの彼、彼女らのリアルな声に耳を傾け、マネジメントの参考にしていただけたらと思います。

■隣の先輩が電話の声を常にイヤホンで……

【中原】まずはみなさんのお仕事についてうかがいます。

【Aさん】情報通信の会社で法人営業をやっています。ぶっちゃけますが、先日、労基署が入ったんです。昨年までは月100時間残業もざらにあったのですが、今はありがたいことに20~30時間になりました。

【Bさん】私はヘルスケア関連の会社で、厚労省に医療機器の承認を申請する部署で働いています。

【Cさん】私は証券会社の支店で、営業の仕事をしています。来店対応から、訪問、テレアポすべてをやってます。

【Dさん】私は外資系メーカーの営業職ですが、ほぼ在宅勤務で会社に行くのは月に4回程度です。

【一同】おおっ!

【中原】1年目から在宅勤務?

【Dさん】そうですね。1カ月研修があり、その後は在宅です。そのかわり、成果管理は非常に厳しいです。

【Eさん】僕は人材サービスの会社で採用の仕事をしています。実は社会人3年目。1社目の会社も同業で、営業をやっていたのですが、採用の仕事がしたかったのと、仕事がきつくて転職しました。早朝や土日にリストをつくり、1日100件電話をするのですが、達成できないと、夜になっても、誰もいない会社に電話をかけ続けなくてはいけない。もはや罰ゲームのようで……2年目に転職しました。

【中原】入社後、誰に仕事を教わりましたか? メンターなどはいましたか?

【Aさん】一応、20歳上の人がトレーナーとしてついています。

【中原】20歳上って? 40代ですね。

【Aさん】そうです。でもやっている仕事も全く違うし、部署も違うので、トレーナーとは名ばかりで。実際にわからないことがあるときは、近くの先輩に聞いています。

【中原】名ばかり管理職ならぬ、名ばかりトレーナーですか。

【Bさん】うちの会社にはメンター制度があります。本来は、毎週面談をして、いろんな相談をするのだと思うのですが、私のメンターさんは別の部署の7年目の方で、なにを聞いても、「ごめん、わからないから、あの人に聞いて」ということになり、結局年の近い同じチームの先輩に聞いていました。

【中原】こちらは名ばかりメンター。

【Cさん】うちは新人1人につき1人インストラクターが必ずついています。私のインストラクターは4歳年上の先輩で、席も隣で常に一緒。私が電話している声もすべて拾っています。

【中原】横で聞いているんですね。

【Cさん】いえ、私の電話だけイヤホンがついていて、常に先輩が聞いているのです。私が困った声を出すと、耳元ですかさず指示をいただけます。逆に、変なことを言うと、電話を置いた後に「今の言い方は法律ギリギリだから気をつけて」などと絞られます。

【中原】インストラクターは1年間つくんですか?

【Cさん】はい。1年間びっちりつきます。次の年は、また新人のところにイヤホンがカチッと(笑)。

【中原】Dさんは在宅勤務ですが、どうやって仕事を教わっているのですか?

【Dさん】チームで私と同じ商品の営業をやっているバディの先輩やチームメンバーに電話で聞いています。

【中原】わからないときは、自分から積極的に聞くしかないというわけですね。

■「ワンワードで」と言われても、それがわからなくて……

【中原】1日100件営業電話をかけていたときの上司は、怖かったですか?

【Eさん】はい。外面はよくてニコニコしているのですが、社員から陰で「インテリヤクザ」と呼ばれていました。とにかくガンガン詰めてくるんです。論理的でないことも多いのですが、全国大会出場の体育会系なので、とても言い返せない……。

【中原】どんなふうに詰められるの?

【Eさん】成果が出ない、仕事が遅い、となると、「部署全員にロープレをお願いしろ」「スケジュール管理の仕方をきいてこい」とか言いだすのです。

【中原】確かに、理不尽ですね……。Cさんの上司は?

【Cさん】直属の上司はアタリですが、支店長はハズレです。営業経験があまりなく、みんなに「この数字を達成しろ!」と言う割に、自分は席に座ってたまに寝ているんです。よく「眠眠打破」を飲んでいるのを見かけます。

【中原】それではヤル気を喪失しますね。Aさんの上司はどうですか?

【Aさん】僕は大ハズレでしたね。初めて配属された部署に行ったときのことが忘れられません。フロア全体が明るいのに、僕の配属先のチームだけがどんよりと暗いんです。「なにか変だな」と思いながら過ごしているうち、隣の同期から「おまえのチームはヤバいらしい」と。部長と課長が体育会系のものすごく厳しい人たちで、部員は全員中途。僕が入る前に4人がストレスで辞めていたんです。

【中原】どのくらい厳しいんですか?

【Aさん】椅子を蹴られたり、「馬鹿野郎!」と殴られたり……。夜や週末でも電話で仕事をふられたり。寝ても覚めても上司の顔が頭から離れず、2回、急性胃腸炎になりました。

【中原】よく耐えましたね……。

【Aさん】もう何回辞めようと思ったことか。結局、その2人はパワハラが問題になり、2年目に異動になりました。今は天使のような上司です!

【中原】Bさんの上司はいかがですか?

【Bさん】50代の女性の上司なんですが、最初の頃は「このクソババア」と思いながら仕事してました(笑)。忙しい方なので仕方ないのですが、まずつかまらない。やっとつかまえて「こんなトラブルがあり、こう対処します」と説明すると、「なんで? なんで? なんで?」と「なんで? なんで? 攻撃」の猛アタックです。入社1カ月目の私に「なんで?」と聞かれても、なにもわからなくて、つらかったです。悔しくて泣いちゃったこともあります。

【中原】上司の前で?

【Bさん】そうです。先輩から「こう書けばいいよ」と言われて書いたのに、「なんで?」と聞かれて説明できず、どんどん自信がなくなってしまって。ふがいない自分が悔しくてぽろっと。でも、今思うとその上司も、部下十数人を抱えて忙しい中、育てようという意図があってわざわざやってくださっていたのかな、と感謝してます。

【Dさん】私も上司の前で泣いたことがあります。あとキレたこともあります。

【中原】泣かれると、上司としては相当狼狽してしまうものなのですが、なんで泣いちゃったんですか?

【Dさん】やはりわからなすぎて、悔しくてですね。あと、「はい、いいえで答えろ」とか、「ワンワードで言え」とか言われて。今は大丈夫ですが、右も左もわからないときは、「それがわからないから相談してるのに!」と。

【中原】僕も研究室などで「なんで? なんで?」とか「ワンワードで言え」とか言っていますね。でもね、ワンワードで言えないことや「なんで? 攻撃」に耐えられないことは、実践することもできません。だから、僕らは聞くんです。

【Bさん】こちらは上司が何を求めているのか、何がポイントなのかわからないから1から10まで話そうとしてしまうんですよ。でも、上司はポイントだけを知りたいんですよね。

【Dさん】それで「ワンワードで言え」とおっしゃるんでしょうけど、そもそもどのワンワードを言ったらいいかがわからないんですよ!

【中原】すみません、たしかにキツイよねぇ……(笑)。

■学閥が強く、出身大学ごとにゴルフコンペが……

【中原】みなさんは、キャリアプランというか、この先も今の会社で働こうと思っていますか?

【Dさん】うちは外資系だし、先行き不透明。いつクビ切られるかもわからないし。今は目の前のことで精一杯です。

【Bさん】そうですね、うちもいつ事業部が売却されるかわからない。

【Cさん】私はまずは3年勤めて、それから考えようと思っています。今の会社でしっかり3年働いたら、その後別の会社で働く場合も有利だと思うので。

【Eさん】僕は一度転職をしているし、今の会社でずっとやっていきたいです。

【中原】出世はどう? 偉くなりたい?

【Dさん】私は就職活動のときに、「社長になりたい」とか言う人にあまりいいイメージがなくて。自分がやった成果に対する対価としてマネジャーというポジションがあるのであればいいと思うのですが、まだなにもやっていない学生が「早く出世したい」と言うのはなんだか信用できない気がします。

【Eさん】すみません、僕はマネジャーになりたいです(笑)。1年目にハズレ上司の下で働きながら、いつも「自分がマネジャーだったらこういうふうにするのに」などと、考えていたので。部下に対していい影響を与えられるような上司になりたいです。

【Aさん】僕は今の会社では出世できるわけがない、と思っています。学閥が強い会社で、出身大学ごとに飲み会だけでなく、ゴルフとかもあって。同期の中でもなんとなく、あの人が上がっていくんだな、ということがわかるんです。だから今の会社では出世したいという考えは消えちゃいましたね。

【Cさん】私は出世したいとは思っていないのですが、目指している存在はいます。直属の女性の課長さんで、全国でもトップクラスの実力者で、お客様からの信頼も厚い憧れの先輩です。

いかがでしょうか。懸命に組織に馴染もうとする彼、彼女らの声を聞いていると、自分たちの若い頃とあまり変わらないように感じました。誰しも「何がわからないかすらわからなかった」時代があったはず。新人は理解不能と決めつけず、まずはじっくり話を聞いてあげようではありませんか。

(立教大学経営学部 教授 中原 淳 構成=井上佐保子)

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