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認知症が始まった親の遺言。認められる?

プレジデントオンライン / 2015年9月24日 11時15分

認知症が進むほど、遺言が無効となる可能性が高くなる

■内容しだいで有効な遺言に

厚労省は、認知症にかかる人が2025年には700万人になるとの推計値を発表した。65歳以上の5人に1人が認知症になる計算だ。

認知症の増加に伴って、これから続出しそうなのが相続トラブルだ。相続を円滑に行うには、遺言書の作成が欠かせない。しかし、被相続人が認知症だった場合、「遺言能力」がないと判断されて、遺言書が無効になるおそれがある。生前に贈与する場合も同じ。法律上、有効な法律行為(たとえば取引行為など)をなすには「意思能力」が求められるが、認知症で意思能力がないと判断されれば、生前贈与契約が無効になることもある。

ただ、認知症なら遺言が直ちに無効になるわけではない。相続・医療に詳しい加治一毅弁護士は次のように解説する。「有効な遺言に必要とされる遺言能力は、相続の難易度によっても変わります。たとえば遺産が預貯金のみであったり、不動産1つだけというようなケースなら、必ずしも高いレベルの遺言能力は求められない。一方、被相続人が会社を経営していたり、株や不動産など多岐にわたる遺産を複雑に配分するようなケースでは、それにふさわしい遺言能力が必要とされます」

認知症と診断されても、症状が軽度で、シンプルな内容ならば、遺言は有効と判断される可能性が高い。認知症になったからといって、手遅れと決めつける必要はない。

■認知症が進んでも一時回復のチャンス

認知症が軽度なら有効性は認められやすいとはいえ、トラブルが起きるリスクは減らしておきたいもの。事前にどんな手が打てるだろうか。

「遺言書をつくるときに専門医の診察を受けて診断書・意見書をつけておくと、後に認知症が進行した場合も『遺言作成時は遺言能力があった』と証明しやすくなります。また、認知症の場合にかぎりませんが、自筆ではなく公正証書遺言を作成したほうが相対的にトラブルは生じにくい」

では遺言できないほど認知症が進んでいると診断されたらどうすべきか。意思能力が低下した人に対して、後見人が財産管理をはじめとした法律行為全般を支援する成年後見という制度がある。民法では、被後見人の能力が「一時回復」して遺言する場合は、医師2人以上の立ち会い等が必要とされている(民法973条)。現実には認知症でも成年後見人をつけていないケースが多いが、

「制度を利用していなくても、同じような方式で遺言書を作成すれば、有効性は高まる」

ただ、認知症が始まる前に遺言を書いてもらったほうがいいのは言うまでもない。しかし、元気なときに遺言書の作成は切り出しにくい。いいタイミングはいつだろうか。

「私見ですが、定年して10年やりたいことをやり、一段落した70歳くらいがいい。遺言は書き直せます。最終決断ではないことを教えてあげると、親御さんも書きやすいのではないでしょうか」

(ジャーナリスト 村上 敬 図版作成=大橋昭一)

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