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アサヒ・キリン・サントリー・サッポロと大手全社参入! ニッチな「クラフトビール」が注目されるワケ

プレジデントオンライン / 2015年9月24日 10時15分

■地ビールとは違う「クラフト」

「クラフトビールと地ビールって、何か違うの?」

この数年、「クラフトビール」という言葉を目や耳にする機会が増えるのにともない、聞かれることが多い質問です。両者に具体的な定義があるわけではないので、厳密にここが違うと言えるわけではありません。ただし、かつてブームとなった際の地ビールと、最近注目のクラフトビールとでは、その意味するところがかなり違うと考えてよいでしょう。

日本国内において「地ビール」が注目されたのは、1990年代の中盤から後半にかけてのことですが、そのきっかけとなったのは細川護煕内閣による規制緩和政策でした。ビールを醸造するには認可が必要ですが、そのためには「年間最低製造数量」、つまり一年にこれだけはつくりなさいよ、という「ノルマ」が課せられます。そのノルマがそれまでの年間2000キロリットル(kl)から60klへと、一気に30分の1以下に大幅に緩和されたのです。

これによって大手メーカー以外であっても、ビールを製造することが容易になりました。中には理想のビールを追求して参入した企業もありますが、よくも悪くも当時存在感を放ったのは、日本のそれぞれの「地域」でした。各地では「街おこし」の一環として、その土地の食材(例えば、じゃがいもやら大根やら味噌やら)を副原料に使ったビールを製造し、それらの風変わりなビールが世の中に乱立することになりました。よく言えば個性的、悪く言えば奇妙奇天烈なこれらの「ご当地ビール」の多くは、確かな醸造技術もないままにつくられたために品質としても十分ではなく、結局ユーザーの支持を得ることのないまま消えていきます。そしてその後、地ビールは日の目を見ることなく低迷を続けます。

■「クラフト」は時代の要請?

しかし、2000年代の後半からビールを取り巻く環境は徐々に変わっていきました。国内市場においては2つのポイントが挙げられます。1つは「プレミアム」を受け入れる層が増えていったことです。サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」の大ヒットはまさにその代表例ですが、ビールに限らず「ちょっと高くても、いいものを楽しみたい」と考える人が増えていきました。

ザ・プレミアム・モルツ

そしてもう1つのポイントは「新しいアルコール」を求める動きが、主に飲食店の関係者から強まっていたことです。飲食業界とトレンドは切っても切れませんが、食べ物に限らずお酒にもブームが存在します。2000年代前半には芋焼酎が爆発的な人気を獲得し、その後、日本酒地酒やシャンパン、梅酒などの瞬間的なブレイクを経て、2010年頃からは街にワインバルが溢れるようになりました。結果的には今に至るまでワインが多くの飲食店にとっての核となる商材となっています。しかし次なる動きを狙う関係者の間では、数年前からワインに代わる「新しいアルコール」としてプレミアムなビールに注目が集まっていたのです。

そして日本に新しいビールが普及することを決定づけたのが、アメリカでのクラフトビールのブームです。お酒に興味のない人は、アメリカのビールと言えば「バドワイザー」に代表される、水のようにがぶがぶ飲むタイプのヤツでしょ、と思っている人も多いことでしょう。しかし、実はアメリカでは、個性的な造り手が小規模で生産するクラフトビールがじわじわと人気を集めるようになっていたのです。

クラフトとは「手芸品・工芸品」という意味ですが、そこには大手メーカーが大量生産の「工業製品」として造るビールとは違うんだという造り手のプライドが込められていると言えるでしょう。イメージとしては小規模ワイナリーに近いかもしれません。

■米国ではシェア11%にまで!

アメリカでのクラフトビール人気は数字としても明確に表れています。ビール市場全体に占めるクラフトビールのシェアは2014年には11%までに成長しています。2010年には5%にすぎなかったのでこの4年で倍以上へと急拡大していることがわかります(ちなみに日本では、まだシェア1%程度にとどまります)。

よなよなエール/コエドビール

ちょっと高くても、いいものを楽しみたいというニーズが生まれ、そこにワインにかわる「新しい旬な飲み物」として、日本においてもクラフトビールが一気に注目されるようになったのです。前回の地ビールブームが「地域活性化」の観点で語られることが多かったのに対して、今回はまったく異なる文脈で支持されていることがおわかりいただけたかと思います。

「よなよなエール」「コエドビール」など、以前の地ビールブームのときから存在し続けているブランドが今改めて業績を伸ばしていますが、決してその地域性をウリにしているわけではなく、大手メーカーの製品にはない味わいやブランドのたたずまいが多くのファンを魅了しているのです。

今回は、今クラフトビールが注目を集めている理由について見てきましたが、次回はこのブームは今後どうなっていくのかについて考えていきたいと思います。

 

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子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食コンサルタント。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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(カゲン取締役、飲食プロデューサー 子安 大輔)

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