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パックンの話のつかみ方を真似てみよう! ハーバード式「頭がよく見えるジョークの技術」

プレジデントオンライン / 2015年10月11日 10時15分

パトリック・ハーラン氏

スピーチの冒頭で笑いがとれれば、聞き手の心はこっちのもの。東工大で「コミュニケーションと国際関係」を教えるパックンにその奥義を聞いた。

■面白くなければ女性にモテない

どうも日本ではアメリカンジョークの印象が悪く、「笑えない」という固定観念があるようです。でも、じつは面白いんですよ。その証拠に何人もの落語家が小噺の1つとして取り入れています。僕は立川談志師匠にかわいがっていただきましたが、楽屋でアメリカンジョークを言い合って、いつもネタ交換をしていたものです。

アメリカ人、特に男性は、子供の頃から面白いことを話そうと意識しています。なぜなら、女性にモテたいから。あるアンケートによれば、女性が相手に一番求めるのは、ルックスよりも、お金よりも、「面白さやユーモア」という結果があるほどです。

アメリカンジョークの入門として「Knock-knock jokes」という駄洒落を使ったものがあります。興味のある方は是非調べてみてください。アメリカ人の子供も大体これから入ります。

大人になっても、会社員、社長、政治家など、一流ならだいたいユーモアのセンスが抜群。話が面白い人は言うことを聞いてもらえるだけではなく、「頭がいい」と見られ説得力も増します。

TECHNIQUE 1●必ずウケる! 身内のおとぼけエピソード

【パックン】それは息子がまだ3歳だった頃のこと……。

僕が息子に「大きくなったら何になりたいの?」と聞いたら、大きな笑顔で「消防車!!」と答えた。

車のほうか~と、これだけでも十分笑えるけど、この話には後日談がある。

息子6歳、娘4歳のときに同じように質問した。

「大きくなったら何になりたいの?」息子は「お医者さん!!」っと答えた。おっ、人間を目指すようになった! 成長したな~と僕が感心していたところで、隣にいた娘が大きな声で「じゃ、わたし患者さんになりたい!!」と入ってきた。人生の夢が病人!?
 

▼子供についての話は、オチがなくてもほのぼのするもの。加えて、こんなふうに、予想する答えと違った答えが飛び出すと、笑いのネタとしてもバッチリだね!

大統領だってそうです。たとえば、2012年の大統領選挙の際に、オバマ大統領とロムニー候補がニューヨークのチャリティイベントに登場して、ジョークを言い合いました。

ジョークは対象の特徴をデフォルメさせるのが基本。大金持ちのロムニーに対して大統領は「今日、五番街のお店を回っていて、『何を買おうかな?』と思っていたときに、ロムニーさんを見かけた。彼は『どのお店を買おうかな?』と迷っていた」とやって、爆笑をとりました。タキシード姿のロムニーも「すみません、今日は普段着で来ちゃいました」と自ら金持ちネタを披露。両者ともうまかったです。

と、ここまで「アメリカンジョークも捨てたものじゃないよ」と言っておいてなんですが、日米間のお笑い文化では、取り上げる題材も、笑ってもらうための話の組み立ても、笑いを生む言葉も、間も違います。だから実際に、「アメリカでは絶対に大爆笑がとれる」と思ったことを、日本で同じようにやってもスベる。そうした痛い思いを、僕は何度も繰り返し味わいました。

それで「日本でウケる話や言葉のやり取りは何か」を研究するようになったのです。みなさんにお勧めしたいのは、テレビのバラエティ番組。ちょっとした機転のきいたやり取りが必ずあるはずです。「面白い」と感じた場面があったら、それを真似して自分なりに使ってみましょう。失敗を恐れてはダメです。やればやっただけ、腕が上がりますからね!

TECHNIQUE 2●失敗談で笑いをとり「こんな僕でも」→「うまくいった」

大学で「ストーリーを組み立てよ」という課題を出したら、ある学生は悩んだ末に、新しいことをしてその経験をこんな物語にまとめてきた。

【学生】省エネや節約、利便性の面から電球をLEDに替える家庭が増えています。これなら僕にでも売れるに違いないと思い実践してみることにしました。

「高齢者なら天井が高くて自分で交換するのも大変だから、量販店で買ったLED電球を設置費込みで数百円高く売っても喜んで買ってくれるのではないか!」とひらめいたのです。

そこで高齢者が多く住むエリアへ行き一軒一軒家を回りました。ところが1つも売れません。考えが甘すぎたのです。

結局、今わが家はLED電球だらけですけど、気分は真っ暗です。
 

飾らず実体験を伝えているのがポイント。こうした失敗談を皮切りに「こんなドジな僕でも、社会人になって5年目には会社の売り上げ倍増に貢献しました」と、ツカんだうえで実績をアピールするといい。

■意表をつく答えが笑いを呼ぶ

面白い話をするとなると、ジョークや落語家がやるような定番の噺を頭にたたき込んで、それをうまく演じきることだ、と考えるかもしれません。ですが、さすがにそれは一般的には難しすぎます。多くの人は構えすぎて、言葉が自然に出てこないのではないでしょうか。

では、誰もが自然に話せるネタは何かといえば、その人の実体験です。そしてその実体験が、失敗談であったり、自虐ネタにつながるようなものであれば、かなりの確率で笑ってもらえます。家族や友人、知人などから聞いた話でも、実体験に近い感覚で話せるでしょう。

林家三平師匠のネタで、先代の三平師匠、つまり、自分のお父さんについてのエピソードがあります。

(先代の三平師匠が赤信号を無視して急いで横断歩道を渡ったら、お巡りさんに止められた)

【警察官】あら!? 三平師匠じゃないですか? ダメですよ、信号を無視しちゃ。

【三平】ごめんなさい。見えなかったもので。

【警察官】信号が?

【三平】いや、お巡りさんが。

「バカでしょ。うちの親父は……」という自虐ネタになるわけです。

「自分には、そんなに面白い自虐ネタはないな」と言う人もいるかもしれません。でも、それは考えすぎです。自虐ネタのポイントは、自分のバカさ加減をさらけ出すことにあります。そのことによって、親近感や興味をもってもらうのが目的です。そうすれば、その後の話がすごく相手に届きやすくなるのです。

TECHNIQUE 3●国民性編:その場にいるみんなを心地よくする

もしもシリーズ。

自分が60分間講演をするセミナーに寝坊して15分遅刻をしたら、どうする?

【アメリカ人】自分が帰る時間は予定通りにしたい。早口でしゃべって間に合わせる。(事足りる主義)

【フランス人】開始時間が遅れようが、とにかく話したい気分だし。終了が1時間オーバーしても気にしない、気にしない。(ただの話し好き!)

【イタリア人】遅れてきたけど、まぁいいや。30分で切り上げて帰ろうかな。(おいおい、遅れてきたのに予定より早く帰っちゃうの?)

【日本人】そもそも遅刻しない。
 

日本人の特徴をとらえているだけでなく、日本人にとっての“誇り”の部分もくすぐっている。だから、日本人には喜んで笑ってもらえるよ!

たとえば、奥さんに怒られた話や子供にバカにされた話でもいい。あるいは「電車を乗り間違えて終電がなくなり、新小岩で一泊した」といった失敗エピソードがあれば、そこで笑いをとった後、「僕は、電車の時刻表は読めないんです。僕にわかるのは株式チャート。そこから、この先どう動くかを見極めることしかできないんです」とやればいい。そこで「この人は面白くて、やさしくて、身近な感じだな~」と思った相手は株の話も聞きたくなるんです。

「TECHNIQUE 1」では、自虐ネタとまではいかない、子供の“おとぼけ”ネタを紹介していますが、まじめなやり取りだからこそ、笑いにつながります。また、子供の話はたとえ腹を抱えて笑うほど面白くなくても、場を和ませてくれるのに役立ちます。

それと、このやり取りでポイントとなることがもう1つ。聞き手は、なんとなく話の先読みをしながら聞いているもの。「大きくなったら何になりたいの?」と僕が質問した時点で、「パイロットかな? スポーツ選手かな? スパイダーマンかな?」などといった答えを思い浮かべるはずです。そこへ「消防士」ではない「消防車」といった、ちょっと違ったイメージの答えがくるから面白い。三平師匠のエピソードも同様ですよね。聞き手の頭の中をイジるような結果になるわけです。

失敗談などの自虐ネタにせよ子供の話にせよ、やや無理矢理でも、そこから本来のテーマである、経営、セールス、夢、将来、教育、家族、しつけ、防災、医療などなんにでも結びつけることができます。ちょっとだけ、実際に話す練習をしてみるといいですよ。

TECHNIQUE 4●地方出張編:相手に身近さを感じさせる

(ある地方へ行って話をすると想定して……。○○はすべてその地域の人なら知っている名称)

【パックン】こうやって地方にお邪魔すると、方言に困ったりすることがありますが、その前に僕の日本語がまだまだですよね。今日、こんなことがありました。○○空港に着いたのがちょうどお昼頃だったから、美味しいラーメン屋さんを教えてもらって○○ラーメン店まで、タクシーで行ったんです。そこで「降ろしてください」って言うつもりで言っちゃったのは「ここで殺してください!」。

○○タクシーの運転手の△△さん、驚いていましたね!
 

コミュニティにはそれぞれみんなが共通にもち合わせている情報や知識、共感できるものがある。方言の実例や空港名、タクシー会社の名前など、ローカルな情報が入っているとウケが断然よくなる!

■話し上手の鍵はコモンプレイス

笑いを生む重要な要素に「コモンプレイス」があります。これは、笑いをとりたいときだけでなく、人とコミュニケーションをとる際に、とても大切です。

では、コモンプレイスとは何かというと、これを日本語に訳すのが少々難しい。

「その場にいるみんながもち合わせている情報、知識、感覚」とでも言えばいいでしょうか。地域、会社、部署、学校などコミュニティによって、それぞれ異なるコモンプレイスが存在します。

国によっても価値観が異なります。日本では「安全・安心・元気・マナー」、米国では「自由・自主性・独立心・実力主義」などが心に響くコモンプレイスになります。

そのため、日本語の「元気」などを英語で表現するときは大変苦労します。たとえ同じテーマを話すにしても、話す相手が誰かを考えて、その人の価値観にあわせた言葉を選べば、それだけで相手との距離も縮まるというわけです。

もし聞き手が医療関係者であれば、その業界がよく使う医療用語を話に盛り込むのも手ですし、面白いもちネタがあるなら、登場人物を医療関係者に置き換えるのもいい方法です。

TECHNIQUE 5●美味しくいただく「テンドン」

【パックン】相手の話をよく聞いて、そこからヒントを得て笑いをとるのが大事です。

お笑い用語に「テンドン」といわれる言葉がありますが、これは頭に出た話題(天)を後に使ってドンと落とすことです。

会話をしている際に、フックのあるキーワードが出たら覚えておきましょう。そのあと、どこかでそれを引き出すと有効的です。

相手も笑うし、そうひらめく瞬間は頭上に電球が点灯する感じで自分も気持ちいい。

その電球ももちろん訪問販売のLEDでしょう。
 

この例は、TECHNIQUE 2に出てきた学生の電球販売の話を最後に復活させている。まさにテンドン。それを読んだ人にしかわからないからこそウケる。会話も同様に生きもの。

地方へ行った場合などは、地元の飛行場や駅の名前、飲食店の名前、地元スーパーの名前などを出せば、一気に親近感をもってもらえます。それを話のきっかけにして、別の場所で起きた話をしてもいいんです。

たとえば……、

僕、○○市に来たら必ず○○ラーメンというお店で○○特製チャーシュー麺を食べるんです。さっきも食べてたら、東京のラーメン店での出来事を思い出しました。

そこの店主が「いつもテレビで見てますよ。サインを書いてくれたら、ご馳走します」って言ってくれたんです。でも、よくよく話を聞いたら、僕をセイン・カミュと間違えている様子。とはいえ、僕としては、せっかくだからラーメンをご馳走してほしい。

結局、「セイン・カミュ」と色紙に書いたんです。スペルがわからなかったのでカタカナで。

基本的に、ジョークを言おうと意気込むと、なかなか人を笑わせるのは難しくなり、話もうまく展開できなくなります。

それより実体験のエピソード、しかも失敗談や自虐ネタ、周囲の人のおとぼけ話などをネタに、聞き手にとって身近な情報や言葉、つまりコモンプレイスをうまく活用して盛り込むことです。それさえ押さえておけば、バッチリ!

TECHNIQUE 6●スピーチの場で目の前の人を「イジる」

(聞き手のみんなが手を挙げるような質問をして、あらかじめ見定めていたターゲットに“ふる”)

【例1】じゃ、そこの中途半端な正装の方!

【例2】じゃ、そこのすらりと長い首をおもちの方!
 

なぜか日本人は「中途半端」という言葉で笑ってくれる。いろいろなバリエーションを研究してみると面白いかも!?一方、「すらり」の次には「足」がくるとみんな思い込んでいるわけで、そこへ「首」をもってくるのは茶化し。でも、言われて悪い気もしないでしょ?

TECHNIQUE 7●日常の中で人とからみ面白がり楽しい時間を提供

【男性A】Bさん、今日はおきれいですね!

【女性B】今日は!?
 

仕事場でこんなやり取りが耳に入ってきたら、思わず笑っちゃうでしょ? しかも、このようなやり取りを真似して、自分でも言ってみたら意外とウケた、という経験もみなさんあるのでは? そうしたことをきっかけに、いろいろなパターンを覚えていけば、引き出しがどんどん増えます。あなたもきっとできますよ!

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パトリック・ハーラン
1997年、吉田眞(マックン)とお笑いコンビ「パックンマックン」結成。NHK「実践! 英語でしゃべらナイト」をはじめ多くのテレビ番組に出演。著書に『ツカむ! 話術』(KADOKAWA刊)など

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(お笑い芸人 パトリック・ハーラン 構成=小澤啓司 撮影=遠藤素子)

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