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ユニクロも値下げ! アベノミクスを見限った消費の最前線

プレジデントオンライン / 2016年7月4日 8時45分

■ユニクロが「新価格」の値下げを断行

消費の最前線に商品・サービスの値下げ・低価格化が連鎖的に広がっている。それは、一向に抜け出せない個人消費の低迷に業を煮やした消費関連企業が、デフレ脱却を掲げたアベノミクスを見限ったかに映る。

安倍晋三首相は6月1日、国民に説得力に乏しい「新しい判断」で、2017年4月の消費増税率10%への引き上げを2年半先送りすると表明した。しかし、消費の現場からは、「とっくに『新しい判断』に切り替えたよ」と、あざ笑う声も響いてきそうだ。

小売業で商品値下げの先鞭を付けたのは、カジュアル衣料のユニクロだった。運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、「官製賃上げ」をはじめアベノミクスの効果から、「値上げは受け入れられる」と判断し、2014、15年と連続値上げを断行した。しかし、値上げに伴う客離れが進み、既存店売り上げが失速したことから、今年に入り、定番商品を中心に「新価格」と銘打ち、値下げ路線に180度転換した。競合他社が価格を据え置いて業績を伸ばしたことも、値下げへの背中を押した。

ユニクロと同じSPA(製造小売業)の米衣料品大手、ギャップが来年1月末までに日本での低価格カジュアル衣料店「オールドネイビー」事業を撤退することを決めたのも、停滞が続く個人消費と無関係といえない。値下げ・低価格化の連鎖は小売業に限らず、さまざまな消費分野に広がっている。

外食はその典型で、牛丼大手の吉野家は4月に、主力の牛丼に比べ低価格の「豚丼」の販売を復活した。ハンバーガーチェーンのバーガーキングも5月に490円のセットメニューを投入したほか、回転ずし大手にも値下げの動きが出るなど、消費者の財布の紐を緩める体力勝負に大きく舵を切るケースは枚挙にいとまがない。

■アベノミクスを見限った「新しい判断」

さらに、運賃など規制にがんじがらめのタクシー業界にも値下げの動きが波及した。都内最大手の日本交通は4月、初乗り1.059キロで410円の実質値下げを国土交通省に申請した。これには台数換算で都内事業者の7割超が同調し、来春にも都内などで初乗り運賃が値下がりする見通しとなった。

また、4月に主力銘柄を値上げした日本たばこ産業(JT)に追随し、8月から主力銘柄「ラーク」の値上げを財務省に申請したフィリップモリスジャパンは値上げに伴う販売減少を懸念し、6月に入って値上げを撤回した。これらはいずれも日本銀行が目標に据えた2%の物価上昇によるデフレ脱却を公約したアベノミクスに裏切られ、一向に上向かない個人消費に業を煮やした末の「新しい判断」と受け取れよう。

安倍首相は7月10日投開票の参院選を視野に消費増税を先送りし、それに先立つ主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でリーマンショック級の世界経済のリスクへの備えを、議長国としてごり押しして首脳宣言に押し込んだ。結果的に、英国民が6月23日の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を選択したことから、安倍首相は24日の関係閣僚会議で消費増税延期の「判断は正しかった」と強調した。

しかし、これは“後出しジャンケン”であることは否めず、説得力は持たない。むしろ、これをきっかけにした世界規模での金融混乱で「円安・株高」が生命線のアベノミクスそのものが脅かされかねない。このため、参院選後に安倍首相はがむしゃらに大型の補正予算編成に動くのは必至だ。

その意味で、デフレ脱却を果たせていないアベノミクスを早々と見限った消費の現場の「新しい判断」は正しい選択だったように映る。

(経済ジャーナリスト 水月 仁史)

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