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外資系コンサルタント流・情報整理術「新聞やニュースをみるよりも、その道のプロ3人に話を聞け」

プレジデントオンライン / 2017年1月2日 11時15分

並木裕太●フィールドマネージメント社長。1977年、ベルギー生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ペンシルベニア大学ウォートン校でMBA取得。2000年マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社後、09年に独立。16年3月からJリーグの理事に就任した。

極限までモノや情報、人付き合いを減らす「ミニマリスト」と呼ばれる人たちが増えているという。「捨てる」ことでどんな効果があるのか。達人に聞く。

■29歳でマッキンゼー最年少役員に

テレビやインターネットのニュースは見ない、新聞や本も読まない、SNSもしない――情報が氾濫する世の中だからこそ並木裕太氏は意識的に情報を遮断している。

並木氏は経営コンサルタントとして2000年にマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に入社。29歳のときに最年少でアソシエイトパートナー(役員)に昇進した。その後、09年に独立し、フィールドマネージメントの代表を務める。これまで手がけた案件は数知れず。日本航空やソニー、日本交通などの企業経営のコンサルティングはもちろん、プロ野球の北海道日本ハムファイターズやJリーグの湘南ベルマーレといったプロチームの運営、パ・リーグやJリーグといったスポーツのリーグ全体を見渡したアドバイスまで幅広い分野に携わり、結果を残してきた。2015年には、MBAを取得したペンシルべニア大学ウォートン校の「40 under 40(40歳以下の卒業生で最も注目すべき40人)」にも、日本人で唯一選出された。

順風満帆に見えるコンサルタント人生だが、はじめは苦労したという。

「マッキンゼーに入社して3、4年は劣等生でした。誰からも見向きもされなかった」

なんとか成果を出そうと、マッキンゼーのルール通りに情報を集め、外部との打ち合わせ前の「インタビューガイド」、打ち合わせ後の「インタビューノート」など膨大な資料も作った。しかし、評価は上がらない。

価値のある、オリジナリティのあるアイデアを思いつくにはどうすればいいか。考えついたのは、情報の集め方を変えることだった。

「誰でも得られる情報からは誰でも思いつくアイデアしか浮かばない。希少価値の高い情報をベースに考えれば、自ずと斬新なアイデアになります。たとえば、日経新聞を読んでいる人はごまんといるけれど、その道のプロから話を聞いた人は限られる。そこで、担当していたコンビニ業界に精通する人物を探しました。伝説の店長やコンビニ出身の経営コンサルタントなどを探し、会いにいったんです。若くて、人に会うしか活路がなかったんですが、結果的には一番有効な手段でした」

何人かの話を統合し、ひねり出した“生きた”アイデアを社内の打ち合わせで発表すると、一気に上司であるパートナーからの注目を集めた。会いにいったのはたった3人。情報量が圧倒的に少なくても、最高の結果を出せると知った。

「晩年をアメリカで過ごしたドイツ人建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉に“Less is more”というものがあります。 数を減らして、限られたものの価値を高くする。メジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースは、09年に球場を新設したとき、わざと座席の数を減らしました。一席あたりの価値をあげて、入場料収入をあげたのです。“Less is more”は、情報にも当てはまります」

情報を闇雲に浴びることで害になることもある。

「僕は影響を受けやすいので、新聞や本を読むと、人の意見を自分の意見のように勘違いしてオリジナルの発想ができなくなる。みんなが思いつくことを自分が思いついて新しい発明をしたような気になることはしたくないんです。知っている情報を増やしていろいろなことに詳しくなる“情報屋”になることと、オリジナルのアイデアを生むことは僕の中ではトレードオフになると思っています」

最低限の情報で独自の発想を生むため、常日頃から情報の少ない環境づくりを心がけているという。

「人に比べて、スマホを見ている時間が圧倒的に少ないです。1日せいぜい30分程度でしょうか。情報を遮断する目的もあるし、もう一つには思考する時間をつくるためでもあります。移動の車や電車の中でもスマホを見ることはなくて、ひたすら考え事をしています。自分の頭で考えた分だけオリジナリティは高まっていく。考えるテーマは、担当する案件の数だけ常に頭の中にあります」

新聞やニュースは見出しのみチェックする。目的は情報に色をつけないことだという。

「たとえば、ニュースでジャーナリストがドナルド・トランプを批判していて、ほかの番組でトランプを賞賛する評論家の話を聞くとします。両方聞くと、僕の場合、バランスをとろうとして中途半端なことしか言えなくなってしまう。だからニュースも内容までは見ないようにしているんです」

SNSも極力使わない。ツイートすることはわずかで、Facebookも寝る前にぼーっと眺めるだけ。友人の投稿を見て「元気そうだな」と思う程度。自分で発信するのは、連載や会社の告知くらいだという。

多くの情報を浴びないことに加えて、情報を捨てることも、新しい発想を生む環境づくりには欠かせない。

「寝る前に必ずメールのInboxを空にしないと気が済まない。あとで必要なものは残すけど、返信したら、95%はすぐに削除します」

増やさない、残さないが鉄則。メモもできるだけしないようにし、すぐに捨てるという。

「ここ4、5年、ノートやペンを持ったことがありません。使うとすれば携帯のメモ機能ですが、社員の給料の話など忘れると本当に困ることだけ。メールと一緒で、メモも不要になったらすぐに削除する。残しておくのは、どんなに長くても1カ月までです」

日頃は徹底して情報を遮断するが、アイデアの裏付けにはマスメディアの情報を利用するという。情報は、集めるタイミングと使い方も重要だと並木氏は指摘する。

「オリジナルのアイデアが固まったら、公の情報を積極的に集めにいきます。過去5年間の関連記事を全部読んだりもします。ただし、情報の広さを求めるのではなくて、内容を深め、発言の説得力を高めるため。情報は、アイデアを生むためではなくて、証明するために使うものです」

余計な情報は、百害あって一利なし。オリジナルのアイデアを自分で考え、それを補うように最小化された情報を駆使する。これが結果を出す並木流の情報との付き合い方だ。

▼並木式情報整理術「3カ条」

1. メールは95%削除
受け取ったメールはその日のうちに必ず返信し、保存するべき情報だけを残し、毎晩受信ボックスは空の状態にする。夜に会食をして、日付が変わっても返信するのが流儀。余計な情報は新しいアイデアを考える妨げになる。
2. メモの賞味期限は1カ月
マッキンゼー時代は打ち合わせの前後に多くのメモを作成したが、現在は後で必要になると思った金額などの数字や気になったフレーズのみを簡潔にスマホのメモ機能に保存する。1カ月以内には使用し、削除していく。
3. ニュースは見出しのみ
新聞やネットニュースなどをすみずみまで見ることはない。ニュースは見出しのみを見て、中身は見ない。マスメディアの情報はだれでも知ることができ、2次的アイデアしか生み出さない。

(ライター 吉田 彩乃 大崎えりや=撮影)

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