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仕事が物足りない人は、まず「履物」を揃えよ

プレジデントオンライン / 2017年1月25日 15時15分

「仕事にやる気が出ない」「もっと頑張らなくては」──。こんな悩みを抱えている人は多いのでは。今大ブームのアドラー心理学は、無理に頑張らなくても、自分のやる気を引き出せる方法を教えている。やる気をなくしてしまった7つの症状別に「やる気が湧く行動習慣」を紹介していく。

(3)理想追求型

■履物を揃えるだけで商売が繁盛

理想追求型の長所は、高いビジョンと志を持ち、自分の潜在能力を信じている点。ただ、少しばかり遠い理想を描きがちで、足元の現実を疎かにしている。理想を追い求めるあまり、地に足がついていない印象を周囲に与えていることもある。

こうしたタイプへのアドバイスとして、行動イノベーションの専門家である大平信孝氏は「まず、履物を揃えよう」という。どういう意味か。

かつて整骨院の経営者が相談に来た。「こういう整骨院にしたい」というビジョンは描けているのだが、それだけに現実の経営状況に納得がいかず、理想と現実とのギャップに士気が下がりがちで困っていた。そこで一気に理想に近づこうと考えるのではなく、まず患者さん用のスリッパをきれいに揃えるよう勧めた。

院内が一カ所でもピシッと整うと、その他の乱れも目につくようになる。待ち時間用の雑誌が乱雑に置かれていたり、ゴミ箱にはゴミが一杯になっていたりしたが、それらもスタッフが整理整頓。すると業務のスケジュール管理まで徹底できるようになり、次第に客足も伸び、大いに商売繁盛したという。どんな理想を掲げたとしても、まずは足元の行動から見直すのがいいという好事例だ。

高い理想を掲げるあまり、最初の一歩が踏み出せなくなる状態を、アドラー心理学を使った研修やカウンセリングで定評のある岩井俊憲氏は「青い鳥症候群」「ユートピアシンドローム」と呼び、早くこの状態から脱すべきだと警鐘を鳴らす。この症状の困った点は、ただ単に理想が叶わないことではない。高すぎる目標を掲げると、現在の自分を否定することになり、やる気など出しようがない状態に陥ってしまうのだ。

理想に向けた道筋は一歩一歩でしかない。理想が高すぎると気づいたら、あえて少し下げてみよう。あるいは、究極のゴールの手前に、実現可能な当面の達成目標を掲げる。そして、理想に向かって一段ずつ着実に上っていくことだ。

■「理想」を臨場感たっぷりに描いてみる

アドラー派の心理カウンセラーでもある小倉広氏は「理想ばかり追い求めている人は、『現実から逃げている』ということを直視すべき」という。

「俺はこんな会社で一生を終える人間じゃない。いつか独立したい」。こんな野心を抱えている人もいるだろう。そのために今、どんな行動を起こしているだろうか。「起業するぞ」といいつつ、何もできていない人も多いのではないか。

アドラーは「人は自分の人生を描く画家である」という言葉を残している。今の自分をつくったのも自分なら、これからの自分をつくるのも自分。自分で「行動」を起こさない限り何も変わらないことを自覚しよう。まずは独立や起業に関する雑誌を買ってもいい。独立した先輩に話を聞くのでもいい。「やる気」が起きるのを待つのではなく、先に「行動」を起こすのだ。そうすれば後から「やる気」がついてくるだろう。

ただし、現実とかけ離れた理想を掲げている場合、それが本当に自分の望むことかどうかを見直す必要もある。そのために「理想とする状態をありありと臨場感たっぷりに描いてみる」ことだとメンタルコーチとして活躍する平本あきお氏はいう。

かつて、「アメリカに留学してミュージックビデオに出たい」という理想を持った若いクライアントがいた。しかし、話を聞いてみると英語を勉強する気はさらさらなく、真剣に音楽の練習をしているわけでもない様子。そこで、理想が実現した場面をありありと描いてもらったところ、実はその若者が大切にしているのは、「言葉の壁を越えた一体感を味わう」という価値観であることがわかった。留学もミュージックビデオへの出演も、本物の理想ではなかったのだ。

それに気づいた彼はその後、国内の国際交流イベントでボランティア演奏をして、そこでタイ人と知り合った縁でタイに渡った。今では現地でタイ屋台を経営している。

「夢を叶えるには3つのカタチがある。一つは、描いた夢の規模そのままに、もう一つは規模を変えて、そして最後は、価値観を満たす叶え方。だから、こういう人も価値観を満たし『夢を叶えた人』だ」と平本氏はいう。理想をありありと描くことで、自分が大切にしている価値観に気づけたら、やる気が自然に出てくる。

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大平信孝(おおひら・のぶたか)
アンカリング・イノベーション代表取締役。目標実現の専門家。独自に開発した「行動イノベーション」により、日本大学馬術部を2度の全国優勝に導くなど活躍。
 
岩井俊憲(いわい・としのり)
ヒューマン・ギルド代表取締役、中小企業診断士、上級教育カウンセラー、アドラー心理学カウンセリング指導者。カウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行う。
 
小倉 広(おぐら・ひろし)
小倉広事務所代表取締役。組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。リクルート、ソースネクスト常務、コンサルティング会社代表取締役を経て現職。
 
平本あきお(ひらもと・あきお)
チームフロー代表取締役、メンタルコーチ。東京大学大学院修士課程修了。米国の心理学専門大学院(アドラー心理学)でカウンセリング心理学修士課程修了。
 

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(小島 和子 大沢尚芳、榊 智朗、柳井一隆=撮影 教えてくれる人:大平信孝、岩井俊憲、小倉広、平本あきお)

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