若手女性議員が論議「シルバーデモクラシーの弊害」

プレジデントオンライン / 2017年3月24日 15時15分

小幡沙央里さん

今回は、全体で1%もいないという20代議員も含め、若手地方議員の方にお集まりいただきました。「シルバーデモクラシーの弊害」について議論していきます。

小野塚礼佳さん/江戸川区議会議員(東京都)。うつ病の経験から、カウンセラーに。昨年の統一地方選挙で初当選。
山薗有理さん/メーカーでの営業アシスタントなどを経て伊丹市議会議員(兵庫県)。25歳のときに当選し、現在2期目。
小幡沙央里さん/横須賀市議会議員(神奈川県)。学習塾勤務を経て、昨年の統一地方選挙で初当選。当時29歳で最年少。
※ユースデモクラシー推進機構の協力を得て3人の女性議員にご参加いただきました。

■町内のご用聞きしかしないシニア議員が新しい挑戦を阻害します

――早速ですが、地方議会においてシニアの意見ばかりが重用されているとの実感はありますか。

【小幡】年配の議員が重きを置いているのは市政全般というより、町内会の活動という場合も多い。地域の人たちの要望でもあるのですが、「ミラーを付けてくれ」とか「道路を直してくれ」といったことに応える“ご用聞き”と化している節はあります。その背景には、地元の人が「知っている人に票を入れる」ことがあるのですが……。

【山薗】シニア議員は固定観念でガチガチになっていると感じることはあります。例えば、議会にはパソコン一つ持ち込めません。情報が流出しないのか、などの横やりが入るからです。議会の内容はもともと公開されているので問題ないと思うのですが(笑)。

【小野塚】ICT化は、議会の仕組みを簡易化するだけではなく、医療に適用する、一人暮らしのシニアの見守り活動に応用するなど、シニアにも必要な施策なのに、それが伝わっていないのは残念です。

【小幡】横須賀市は市長が40歳と若いのですが、彼より年上の議員たちの反発があります。オープンガバメントや住民自治を促す政策にしてもそう。市民の意見を聞くのは大切だと言いながら、自分たちの特権が奪われそうになると、抵抗しようとする。市民が我々と同じレベルで情報を持ってしまうと、では議員は何をするのだと言われてしまいますから。

――社会保障も、保育園の整備、若者の就労支援など若年層向けより、シニア向けが優先されている印象ですか?

【山薗】保育園の整備には保育士の待遇改善が欠かせませんが、例えば議員が保育園の視察に行くと、男性議員は陰で「保育士って、誰にでもできるんでしょう」なんて言っていたりする。現場の状況や待遇に共感していないんです。

【小幡】引きこもりの人の就労支援にしても同じです。シニア世代の議員は今の若者は生ぬるいと捉え、就労支援をしようとすると、いい顔をしません。

【山薗】それに、引きこもり問題を抱える家庭はあまり相談にこないため、相談件数が少ない。本当に困っている人に情報が届いていないために件数が少ないだけなのに、「やっています」と既成事実を作ろうとするのは問題です。

【小幡】学校の先生の負担もすごい。しばらく採用を控えていただけに今、半数の教員が20代です。

【山薗】先生が全部を抱え込む状況ですよね? 例えば18歳選挙制の話、LGBTなどデリケートな話まで自分で学んで生徒にフィードバックしなければいけない。

【小幡】本当は外部の力を借りたほうがいいのに、学校に企業やNPOなど外部団体が入ることを、教育委員会やシニア議員の多くは極端に嫌うんです。

【山薗】「何かあったときに、どうするんだ」と言うんですよね。

――では、今後どうすべきだと?

【山薗】国政でも低いのに、地方選挙は若者の投票率がさらに低い。よって、我々ももっと啓発活動をしていくべきだと思います。実際、20代、30代の議員と市民を集めてざっくばらんに話す会を実施したのですが、若者に政治についてもっと関心を持ってもらう一つのきっかけになったと思います。

【小野塚】今回の18歳選挙制も若者がその本質を理解しないうちに駆け足でやってしまっている印象です。ですから、「18歳選挙制の講座」などを学校の教育プログラムに少しずつ盛り込み、主権者教育を進めていきたい。

【小幡】子どもへの予算がつけられるよう、税収そのものを上げるためにも、横須賀では企業誘致だけでなく、ベンチャー企業の創業支援をやっていますし、今後も続けていきたい。会社もつぶさないことが大事なので、事業承継セミナーも続けていきたいですね。

▼「シルバーデモクラシーの弊害」に関する要望書

シルバーデモクラシーの問題について下記により要望いたしますので、宜しくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。

(1)ICT導入や画期的な政策を提案しても、リスクを恐れるシニア議員の反対に遭います。教育によって、若者の政治への関心を高めていくこと、投票の仕組みを高齢者有利に傾かないようにする工夫が必要です。
(2)シルバー世代は若い世代に支えてもらうのだから、若い世代への政策が重要という意識づけを行っていくべき。

以上 第16回 座談会参加者 一同

▼ユースデモクラシー推進機構 仁木崇嗣さんから
提言:独立自尊の精神の消失が、将来世代にツケをまわす政治を許している

選挙権年齢が18歳に引き下げられたことは大きな前進と言えますが、「シルバーデモクラシー」の根本的な原因は、少子高齢化や投票率の低下といった社会的な変化ではなく、多くの有権者と政治家が民主主義の原点を忘れてしまったという内面的な老化にあるとみています。

欧米で生まれた「代表なくして課税なし」という財政民主主義の精神は、約150年前に福澤諭吉によって日本にもちこまれ、自由民権運動に影響を及ぼしたのち、人びとが議会開設を求める理由の一つとなりました。

現在の政府や地方自治体の財政規律の緩慢さからは、その記憶をうかがい知ることはできません。特に、独自の財政基盤が弱い地方自治体は、公債(将来世代へのツケ)だけでなく、国からの補助金や地方交付税交付金に大きく依存しているため、財政状況の悪化が住民の税負担増加に直接的に結びつかず、高齢者向けの歳出が際限なく増えていく仕組みを許しています。

このような「シルバーデモクラシー」の是正のために、「被選挙権年齢の引き下げ」や「インターネット投票方式」導入の議論が始まっていますが、より踏み込んで、議席数を世代別人口に応じて割り振る「世代別選挙区制」や、1人複数票を持つ「連記投票制」、子どもの票を親権者が代わりに投じる「ドメイン投票方式」、平均余命が長い若年者の一票の価値を高める「余命比例投票方式」なども含めた抜本的な制度改革の議論を深めていくべきです。

とりわけ、地方の自治権拡大の流れの中で、地方議員や首長の選出方法については、住民の意思に基づいた多様な制度を認めていくことも選択肢の一つでしょう。今こそ私たちは、先人たちが何のために民主政治を始めたのかを思い出す必要があるのではないでしょうか。

(佐藤留美=構成 文=仁木崇嗣(提言) 市来朋久=撮影)

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