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手取り17万 ヤバい副業の伏線は中国人妻

プレジデントオンライン / 2017年9月5日 9時15分

写真はイメージです

「おいしい副業」は身を滅ぼすリスクをはらむ。自動車部品メーカー勤続30年の男性は、毎月手取り24万円のうち元妻に7万円を払っている。いまは中国人の妻と暮らしているが、家計の足しになればと「おいしい副業」に手を出し、あえなく“お縄”。コラムニストの北尾トロ氏がそんな「実話」を紹介する。

■40代後半 真面目な会社員「ヤバい副業」でお縄

先月(2017年8月)、商標法違反の初公判があったので法廷(東京地方裁判所)へ行ってみると、ビジネスマン風の男性が被告人席に座っていた(裁判時に40代後半であることがわかった)。白シャツにネクタイ、地味なパンツに革靴。表情は不安げで、心ここにあらずな感じから、保釈中かつ初犯と目星をつける。

特許庁によれば、商標とは、事業者が自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)。

<私たちは、商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」を一つの目印として選んでいます。そして、事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です>(特許庁のウェブサイトより抜粋)

となれば、事件内容は察しがつく。商標法違反の多くは、パロディー商品の製作や偽ブランド品の販売だからだ。ではこの男、具体的に何をやらかしたのか。

中国人の妻の里帰りに同行し仏高級ブランドのニセモノ購入

検察「被告人はフランスの○○の携帯ケースの類似品など偽ブランド品343点を所持し、一部を販売するなどして商標権を侵害し、現行犯逮捕されたものである」

被告人は共犯者である中国人の妻の里帰りに同行した際、偽ブランド品をいくつか購入。これをネットで販売したら儲かるのではと考え、その後、夫婦で1年間に5回も中国への仕入れ旅行を行ったという。

■手取り24万円 うち7万を元妻へ“送金”する理由

商品はネットオークションに出品し、160万円以上の売り上げがあったが、偽物販売に目を光らせるブランド側が告発し、あえなく御用となった。商品を自宅に保管し自ら発送、代金も回収業者から自分の口座に振り込ませているなど、いかにも素人っぽい手口だった。

被告人は、「軽い気持ちで手を出したら意外に売れ、小遣い稼ぎになると思った」と弁明したが、年間5回も仕入れに出かけているところから、完全に調子に乗っていたことがうかがえる。

弁護人は、「仕入れ代が1回10万円で計50万円、渡航費用が夫婦で1回12万円計60万円、約250点売れたので発送費が15万円ほどかかっている」と、規模の小ささを強調したものの、すでに元は取れ、残った343点の売り上げは、ほとんど儲けになる計算。

妻はひんぱんに実家に帰ることができるし、発覚しなければやり続けていたと被告人も認める。犯罪だという認識はあったものの、偽ブランド品はノベルティ商品として安く売られており、購入者も偽物とわかって買っているのだからいいだろうとタカをくくっていたようだ。弁護人が、被告人に問いかける。

再婚した中国人の妻とふたり 月17万円で家賃や食費を……

弁護人「動機は金だったんですよね。あなたは自動車部品のメーカーで約30年働いてきたそうですが、給料はいくらになりますか」
被告人「手取りで24万円くらいでした」
弁護人「そこから、前妻と子供2人などが住む家の住宅ローン7万円、自分の妻と住むマンションの家賃6万円を支払い、残る11万円を生活費としていた。それでは苦しいということで、今回の犯罪を思いついたわけですね」

そうだったのか。事情はさておき数字だけを見れば、手取り収入24万円のうち、7万円を離婚した元妻へ毎月持っていかれるのはつらい。残り17万円で家族を養っていかなくてはならない。給料は変わらないのだから、重くのしかかる住宅ローン分を副業でカバーしたいと考えるのは自然なことだろう。

■小遣い稼ぎをしたいと偽ブランド副業に手を染める

転職もままならず、独立はリスクが大きい。ならば、会社を辞める選択ではなく、給料で足りない分は知恵と工夫で稼いでみよう。趣味を活かしたり、ニッチな需要のある分野を探したりして副業をするなら、何らかの事情で会社をやめなければならなくなったときの”保険”にもなる。

また、本業が別にある安心感で、将来やりたいことに備え、小遣いを稼ぎながら経験値を上げることも可能。さまざまな理由で副業を持つ人が増え、それを勧めるハウツー書も出ている。

だからといって犯罪に手を染めるなんてあり得ない。

被告人は何を考えているんだ。読者はそう思うに違いない。でも、チケットの転売ビジネスなど、犯罪行為といっても、売る側と買う側の双方とも罪の意識が低い場合はあると思う。被告人も、最初は自分のために偽ブランド品を買ったのだが、使わないものを売ったらいくらかでも里帰り費用の足しになると思い、実際売れたためにその気になってしまったのだ。

大企業なら逮捕され罪を認めた時点で懲戒免職

社則で副業が禁じられているけれど、バレなければいいだろう。ネットでやっている分には問題ないだろう。そうだ、バレるはずがないよ……。すべて仮定の話だ。この副業はどうだろう、スレスレかなと思うようなときは、発覚したらどうなるかを想像してから「やる、やらない」を決めたほうがいい。

実直な勤め人だったのに、つい調子に乗ったばかりに犯罪者になってしまった被告人。すべての信用も職も失ったのかと思ったら、そうではなかった。証人として出廷した雇用会社の社長が言う。

「被告人とは30年もの間、苦楽をともにしてきました。どんな男かもよく知っています。金銭に関する相談を受けたことがなく、最近は私生活に関することも詳しくは知りませんでしたが立ち直ってもらいたい。彼の家族とも話をし、皆で頑張っていくとのことでしたので、今回のことで会社を辞めてもらおうとは思っていません」

被告人は初犯で、反省もしている。執行猶予付き判決になるのは確実だが、すでに40代後半で、仕事を失えば大変な思いをする。社長にしてみれば、それがわかっていて首を切るなんてできないということだろう。

雇用を続けることは更生にも直結する。被告人は社長に対する感謝を忘れず、今後犯罪に手を染めることはないと思う。まあ、だからといって給料が上がるとも思えないが、奥さんが働きに出ることで収入アップは見込めるはずだ。

でもこれは、小さな会社だからできたことでもある。

大企業ならどうだったか。筆者が見てきた裁判では、逮捕され、罪を認めた時点で一発退場。懲戒免職になるケースがほとんどだった。

犯罪でなくても、わずかな副収入を得るために、社則を破ったとして社内での立場が悪くなれば本末転倒である。そこに注意するのは当然だが、たとえ社則でOKだとしても黙っているのが賢明だ。間違っても、酒席などで「そこそこ儲かっている」などと自慢してはならない。解禁される動きのある副業だが、これを快く思わない幹部社員はいくらでもいる。給料以外でも稼いでいると思われたらどんな仕打ちが待っているかわからないのだ。

(コラムニスト 北尾 トロ)

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