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「お金の無料相談」は最悪の選択肢である

プレジデントオンライン / 2017年10月14日 11時15分

「山崎先生、将来、お金に困らない方法を教えてください」(プレジデント社)

お金の問題に直面したとき、「専門家」への相談を考える人は多いだろう。その場合、金融機関などの「お金の無料相談」に出向くのは最悪の選択肢だという。なぜなのか。経済評論家の山崎元さんが実際あった危険なケースを元に、正しい相談先と正しい運用方法を伝授する――。

※以下は山崎元『マンガで解説!将来、お金に困らない方法を教えてください!』(プレジデント社)のコラム部分から抜粋、再構成したものです。

■「最悪の相談先」は、身近な金融機関だった!

お金の問題に直面した時に、専門家に相談したくなる場合もあるでしょう。こうした場合に最も良くないのは、銀行・証券会社・保険会社などの金融機関に相談することなのです。こうした金融機関での相談は、多くの場合「無料」ですし、名前の通った会社のサービスだという安心感があります。加えて多くの場合顧客への対応は親切・丁寧です。つい気軽に、そして気持ちよく利用しがちになるのですが、そこに落とし穴があります。

金融マンは、お客さまに儲けさせるプロではなく、自分の会社(ひいては自分)が儲けるためにお客さまを動かすプロフェッショナルなのです。露骨に言うなら、「手数料稼ぎ」のプロです。そして、もちろん、プロの力量を甘く見てはいけません。お客さまの側では、プロが繰り出す「ご提案」のどこに問題があるのかを即座にかつ正確にダメ出しすることは不可能でしょうし、相手が、親切・熱心・真面目そう、などと思う心から「少しは付き合わないと申し訳ない」という気持ちになって、手数料の高い商品(100%ダメな商品です)を購入してしまうパターンに陥りがちです。

それでは、金融機関の窓口に相談してはいけないとなると、誰に相談するといいのでしょうか。FP(ファイナンシャル・プランナー)に相談したらいいのではないかと思った方は、幾らか正解に近づいています。しかし、それだけでは、安心ではありません。実は、FPには二種類あります。筆者の表現では、「販売系FP」と「非販売系FP」の二通りです。

「販売系FP」とは、生命保険の代理店を兼営していたり、証券仲介業のビジネスをしていたり、あるいは不動産の購入や投資を紹介して不動産会社から謝礼金を受け取ったりしている、商品の販売に関わることによって自分も経済的に潤うFPのことです。こうしたFPのアドバイスは、どうしても、自分が販売したい商品の購入に傾きがちになることはご想像いただけるでしょう。まさに、その通りなのです!

生命保険の代理店を兼営するFPは、販売した生命保険のおよそ1年分くらいの保険料の報酬を得ることが多いようです。証券仲介業を営むFPは商品の販売手数料の6割以上を得る場合が多い。内外の証券会社の正社員よりも、稼ぎに対する取り分の比率は大きく、「普通の証券セールスよりも危険な証券マン」かも知れません。不動産の購入で物件を紹介して、不動産業者から紹介した物件の1~3%くらいの謝礼を受け取るFPもいます。

■相談すべき相手は「非販売系FP」

いずれも小さくない収入になり、一度手を染めると抜け出しにくいのが実情です。そして、メディアで名前が売れているような有名FPでも、これらのいずれかに手を出している場合が少なくありません。

FPには、商品を販売することのある「販売系FP」と、純粋に相談料だけを報酬とする「非販売系FP」の2種類があると考えてください。もちろん、相談すべき相手は「非販売系FP」の方です。

日本では、対価(相談料)を払って専門家に相談するやり方が根付いていないのが現実ですが、クリーンなFPに払う相談料は、例えば相談1時間当たり1~2万円くらいのものですが、相談料よりもずっと大きな改善効果が得られる場合が少なくありません。金融機関に「無料相談」するよりも、はるかに安全で効果的です。

「商品を販売する可能性のある人に、相談してはいけない」。少々考えると分かりそうな話なのですが、案外守られていない「常識」です。

■高齢者も若い人も、買うべき商品は同じ

『マンガで解説!将来、お金に困らない方法を教えてください!』は、現役世代の夫婦が将来に備えてお金について考え直す物語です。現実にお金をたくさん持っているのは高齢者ですし、高齢になってからのお金の運用は大変重要な問題です。筆者が、親の知人など高齢者のお金の相談を受けてみてしばしば思うのは、「セールス」という行為の絶大な威力です。お金を持っている高齢者はたいてい、銀行や証券会社などの担当者のことを「人として」信じていて、商品について詳しいことは分からないが、自分の「人を見る目」は間違っていないと思っている場合がほとんどです。そして、「真面目な子なので、信用している」、「悪い物は勧めないと思った」などと言いながら、毎月分配型の投資信託や貯蓄性の生命保険など100%ダメだと言うしかない投資商品を保有しています。

高齢の経営者などにもよくあることですが、人間のよし・あしで(実際は単なる好き・嫌いに過ぎませんが)物事を判断できると思い込むようになると、その人は「老いて」おり、危険な状態です。

以下、高齢者の資産運用で大事なポイントを3つ挙げます。

■「インカム・ゲインにこだわるな」

第一に、高齢であるということはお金の運用にあって特別な問題ではないということを理解しましょう。標語風に言うなら「ポートフォリオにまで年を取らせる必要はない」ということです。ちなみに世界一有名な投資家と言っていい米国のウォーレン・バフェット氏は現在87歳ですし、彼の仕事上のパートナーであるチャーリー・マンガー氏はさらに93歳ですが、共に現役の運用者ですし、自分達が高齢だからと言ってリスクを小さくして運用するようなことはありません。

人が、若くても、高齢でも、運用の目的は「お金をなるべく安全に増やすこと」以外にありません。「高齢者に向いた運用商品がある」という考えは、手数料の高い運用商品を売りたがっている金融機関が世に振りまいている作り話です。

判断力さえ確かなら、運用方法は若い頃と同じで全く構いません。例えば、現在なら、リスクを取る運用は内外の株式のインデックス・ファンドを買うといいでしょうし、リスクを取りたくなければ個人向け国債変動金利型10年満期と普通預金でいいでしょう。

第二に気を付けてほしいことは、「インカム・ゲインにこだわるな」ということです。インカム・ゲインとは利息や配当、投資信託の分配金など主として定期的な現金収入を指しますが、金融機関は、インカム・ゲインに注意を引いて高齢者を手数料の高い毎月分配型の投資信託などに誘導するセールスの手法を広く使っています。例えば、公的年金の不足額を定期的な分配金で補うといいと提案して、「自分年金を作りましょう」などと勧誘する手口です。

『山崎先生、将来、お金に困らない方法を教えてください!』山崎元著 プレジデント社

実際には、分配金が頻繁にある投資信託は税制上不利ですし、商品としてはリスクが大きく、手数料が高いことが多い(現存の毎月分配型投信は金融論的に100%ダメなものばかりです)。仮にリスクを取っていいとしても、別の形でリスクを取り、生活費の補填は普通預金を取り崩すのが、手数料の節約の面でも、資金管理の面でも正解です。高齢になると、リスクを落として利息や配当金などインカム・ゲインを中心に運用すべきだという通念は昔からあり、現代にも残っていますが、「誤った常識」です。

第三番目の注意は、「判断力の喪失に備えよ」。ということです。例えば、へそくりを通常の取引行とは別の銀行に預金したまま、急逝したり、あるいは認知症にかかって忘れたりしたとしましょう。資金の動きのない「休眠預金」になる訳ですが、10年たつと銀行本店の利益となって没収され、同時にデータの保管期限が10年であるため、後から家族等が発見し、これを取り戻すことが極めて難しくなります。

せめて、自分の金融的な財産が「どこにあるのか」ということは、家族など、「信頼できる誰か」と共有しておくことが必要です。一人暮らしの高齢者などの場合に、司法書士や弁護士などを後見人とするケースもありますが、ところが、この後見人が金融機関と裏で手を結ぶ場合もあるなど、最晩年の財産管理は油断ができません。また、配偶者なのか、子供なのか、子供が複数いる場合に、一体誰を信頼するのかも難しい問題です。「本当に信頼できる人を持つ事ができるか」は、つくづく人生の大問題です。

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山崎元(やまざき・はじめ)
経済評論家、マイベンチマーク代表取締役
1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社。野村投信、住友信託、メリルリンチ証券など12回の転職を経て現職。専門は資産運用。楽天証券経済研究所客員研究員。

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(経済評論家、マイベンチマーク代表取締役 山崎 元)

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