1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

橋下徹"尾木ママは荒れた学校を見てみろ"

プレジデントオンライン / 2017年11月15日 11時15分

(略)

■むしろ「地毛登録制度」のある方が子供の権利は守られる

毎日新聞が行った大阪府立高等学校に対するアンケートの回答では、回答した学校の6割で「地毛登録」を行っているとのこと。さらに、このアンケートの回答によれば地毛が茶色の場合に黒染め指導する学校はないようだ。地毛の色はそのまま認めるということ。

まあ、そもそも地毛登録というのは地毛が茶色の子供にまで黒髪を強制することがないようにするものだから、地毛登録をしながら地毛が茶色の場合に黒染め指導するというのはおかしな話だね。つまり地毛登録制度は子供たちを守るためのものであって、それがない方が、地毛が茶色の子供が黒染め指導されるリスクが高くなる。

教育評論家の尾木直樹さんは、この地毛登録制度について「生徒の身体的特徴や遺伝に関わる情報を収集するものでプライバシーの観点から問題がある」なんて軽薄なコメントを出していたけど、地毛登録制度がある方が、地毛が茶色の子供が守られることへの思いが及ばない。さらに「強制的に黒髪にさせても教育上効果がない」とコメントをしているけど、これは教育現場の現実について全く悩みのないコメントだね。尾木さん、本当に教育現場で仕事していたのかね。

尾木さんは気付いていないのか、知らないのか、学校現場には次のような悩みが現実に存在する。

大阪府内の中学校や例の懐風館高校では、生まれつき髪が茶色でも黒く染めさせる指導をしていたという報道がある。ここは報道が錯綜しており、生まれつきの髪が茶色ならその色を認めて黒く染めさせてはいないとの報道もある。

いずれにせよ大阪の教育現場の教員に話を聞いてみると、生まれつき髪が茶色の子供がさらに茶色に染めてきてトラブルになることが多いらしい。明らかに茶色に染めているのにそれを指導すると地毛だと主張する。確かに地毛は茶色で、学校側も地毛の茶色は認めるけれど、さらなる上乗せの茶色染めは認めない。このような指導なら一概に学校が悪いとは言えない。懐風館高校の訴訟の件は、まだ生徒側の主張しか報道されていない。この段階で今回の件を断じるのは非常に危険だ。これから学校側の主張も出てくるので双方の主張をしっかりと見てから現実の問題について悩むべきだ。学校側は指導に問題がなかったと主張しているので、自称インテリが一斉に批判しているような単純な案件ではなさそうだ。双方の主張をしっかりと見ていきたい。懐風館高校を批判している自称インテリの主張を見ると、学校現場の現実の悩みには何ら思いを寄せていない感じだね。学校現場からのヒアリングもせずに批判だけしている。地毛が茶色の子供がさらに茶色に染めている教育現場の状況など全く想像もできないんだろう。

さらに現場の意見としては、もし生まれつきの茶色はOKだとしたら、多くの子供や保護者が、「自分(この子)は生まれつき茶色だ」と言ってくる懸念がある、とのこと。まあ端的に言えば、嘘を付いてくるということだね。子供や親を信用していないのか! と言われるかもしれないけど、これが大阪における現実なんだよね。

もちろん大阪の学校の全て、大阪の保護者全てがそういうわけじゃない。だけど学校がいわゆる荒れていて、指導が大変な学校では、そのような子供や保護者が多くいるということも大阪の現実なんだ。

(略)

■なぜ、誰でも言えるもっともな意見は役に立たないか?

髪の色なんかにこだわるな! グローバルな時代では髪の色はバラエティーに富むのが当たり前だ! そんな意見は誰でも言えるもっともなこと。

しかし大阪の荒れた学校で、子供の非行と髪の茶色がリンクしていることも間違いない事実。髪の色なんか関係ない! と言っている人たちは、しっかり勉強してきた人たちや進学校で育ってきた人たちが多いよね。そういう学校では髪の色も、髪型も、服装も自由であって何の問題もないんだろう。どんな髪の色であろうが、どんな髪型であろうが、どんな服装であろうが、そういう学校の子供たちはやることはちゃんとやるからね。

じゃあ、荒れている学校はどうなのか? 子供たちを校則で縛るな! と言っている人たちには、こういう学校をぜひ見てもらいたいよ。おそらく荒れている学校の現実を知らずに、髪の色は自由にしろ! なんて言っているんだろう。

生徒が学校に来ない、授業を聞かない、生徒同士のケンカ、そして生徒による教師への暴力などが常態化している学校を立て直すのはほんとにしんどいことだ。これらは現場の先生が日々闘ってくれている。そんな学校での指導方法の要は、髪の色と服装を正すことと挨拶の徹底から。こんなところから、徹底して指導しなければならない現実がある。

こういう指導方法については賛否があるだろう。しかし、現場の先生がそのような指導方法に効果があると言っている以上、教育指導の素人である僕などの政治家が口を挟むわけにはいかない。明らかにおかしいだろ! という指導方法でない限り、現場の先生の裁量を尊重することが重要だ。

いつも朝日新聞や毎日新聞は現場の声を聞け! と言っているのに、いざ問題が起きると現場の声に任せるな! 現場に任せたトップが悪い! と批判するんだよね。ほんとご都合主義。

(略)

■僕が通っていた中学校で、髪の色を自由にしたらどうなっていたか?

自由が大事だ! 自由を認めろ!! と単純に言う人たちは、あらゆる人間が何もしなくてもルールを守り、自らを律する人間であり、そんな人間を信じることが重要だと、きれいごとばかり言うことが多いよね。こういうきれいごとを言う人たちは、善人ぶっているのか、世間を知らないのか。自由を謳歌できる社会を維持するためには、各人が必死に努力して他人の自由を侵害しないようルールを守る必要がある。つまり自由を享受するためには自らルールを遵守する努力が必要なんだよ。だからこそ教育現場ではルールを守らせる教育が重要なんだ。

大阪の荒れた学校で髪の色を自由にしたら学校現場は収拾がつかなくなるだろう。だから学校現場で生徒の髪の色にこだわることは理解できる。実際、僕も中学2年の夏休みに、オキシドールで脱色したら、2学期の始業式のときに用務員室に連れて行かれて白髪染めで真っ黒にされたよ。でも今考えると、髪の色の指導は僕が通っていた中学校では必要だったんだと改めて思う。

じゃあ「元々の地毛が茶色だからそれは認めろ!」という主張についてはどうか? おそらく僕が通っていた中学校でそんなことを認めたら、一斉に地毛茶色の主張が出てくるね。本当は地毛は黒なのに、嘘の地毛茶色主張。親が子供をコントロールできていない家庭が多かったし、さらには親までが嘘の地毛茶色主張をしそうな環境だった。

僕が中学校のときと今の大阪の学校現場の状況は異なるだろうし、今の学校現場を僕自身つぶさに現認したわけじゃないけど、それでも荒れた学校がまだ多く存在するということはよく耳にする。髪の色の指導は全く不要というわけではないんだろう。

さらに学校現場での髪の色、髪型、服装の自由を認めると、それ以外にどこまで自由を認めるべきなのかという問題にもぶつかる。ピアスは? 装飾品は? それこそタトゥーは? 全て自由にしたらいいじゃないか! という意見もあるだろう。アメリカなんかは結構自由だよね。日本のインターナショナルスクールもそんな感じ。

それはそれで一つの方向性だろうけど、でも日本の学校がアメリカのやり方に全て合わせる必要はないし、大阪の荒れた学校であらゆる自由を認めたら、現場はお手上げ状態になるだろう。

完全に自由を認めることができる学校もあれば、完全な自由を認めることができない学校もあるんだ。そもそも自由って、楽なもんじゃない。むしろしんどいよ。全て自分で律していかなければならないからね。(ここまで約3100字、メルマガ本文は約1万4000字です)

(略)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.79(11月14日配信)を一部抜粋し簡略にまとめ直したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《髪染め問題、組体操……叩くだけではわからない「現実を悩みぬく問題解決」》特集です!!

(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください