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"希望の党が希望"安倍首相に改憲は可能か

プレジデントオンライン / 2017年11月27日 9時15分

写真=AFLO

10月22日の衆院選から約1カ月。やっと国会で論戦が始まろうとしている。だが安倍晋三首相は、今国会のことなど眼中になく、来年以降本格化する憲法改正に照準を定めている。安倍首相は政党間の協議に期待するだけでなく、自らが個別に議員を説得し、改憲を実現しようという構えも見せ始めている。まるで奴隷制度廃止に向けた憲法改正を実現するため、慎重な議員を1人ひとり説得していった米第16代大統領・エイブラハム・リンカーンのように――。

■「希望の党」のリベラル旋回はない

「日本の未来をしっかり見すえながら、今、何をなすべきか。与野党の枠を超えて、建設的な政策論議を行い、共に、前に進んでいこうではありませんか。互いに知恵を出し合いながら、共に、困難な課題に答えを出してく。そうした努力の中で、憲法改正の議論も前に進むことができる。そう確信しています」

11月17日、衆参の本会議場。安倍晋三首相は、所信表明演説に臨んだ。衆院選での勝利を受け余裕の表情で、野党側に目を向けた。

「改憲勢力」は衆院では約8割を確保。参院でも3分の2を維持している。議席数をみれば、改憲案を国会で発議し、国民投票に持ち込むことは可能になっている。安倍首相は今、改憲論議については自民党の憲法改正推進本部に任せており、1歩退いたように見える。ただし、これは年末から年明けに向けて自民党の案がまとまり、国会に提出されたら自らが前面に出る構えだ。

安倍首相が狙い定めるのは希望の党だ。リベラルの受け皿となった立憲民主党と違い、既に「改憲勢力」に位置づけられる希望の党。保守色の強い小池百合子東京都知事が代表から退いたことでリベラル旋回するのではないかとの見方もあるようだが、それは間違っている。むしろ逆だ。

■自民党入りというシナリオも視野に

玉木雄一郎代表は、政調会長に長島昭久氏、憲法調査会長に細野豪志氏を起用した。2人はともに民進党の幹部だったが、その中では最も保守的な考えで、自民党議員とのパイプも太い。「自民党入党予備軍」とさえ言われてきた。玉木、長島、細野の3氏は憲法改正論議で自民党と接近し、いずれは連立、そして自民党入りというシナリオも視野に入れている。

希望の党は22日、憲法調査会の初会合を開き、党としての考えを条文化し草案化を進める方針を決めた。玉木氏は自衛隊が憲法に規定されていないことを念頭に「明文規定がないことで、かえって時の権力の自由な解釈を許してしまう」と発言。9条も含めた改憲に前のめりの姿勢を隠さなかった。

2018年以降、自民党側が希望の党の草案の一部を取り込むような形で希望の党が与党の一角に組み込まれていく可能性は十分にある。競い合うように日本維新の会も自民党に接近していくことだろう。

■スピルバーグ監督の映画がヒント?

安倍首相は、こういった展開はもちろん想定している。機が熟せば自身が玉木氏と会談して改憲で足並みをそろえたいと思っている。

その一方で、もう1つの道も念頭に置く。改憲に理解のある勢力を党まるごとのみこむのではなく、個別の議員を1人ずつ、安倍首相自身が説得するという道だ。安倍首相は最近、周辺に「1人ひとり、丁寧に語り合い、理解を深めたい」と語っている。希望の党、維新の会だけでなく、無所属議員などにも個別説得していく考えのようだ。

米国の場合、憲法の改正や法案の成立に向けて大統領が議員1人ひとりにコンタクトを取り賛同を求めることが多い。

2013年公開された映画『リンカーン』(S・スピルバーグ監督)では、奴隷制廃止に反対する議員をリンカーンが個別に会い、粘り強く説得し、時には交換条件を示すなどして憲法修正第13条可決を実現していく過程が克明に描かれている。

2013年5月11日、この映画を鑑賞した安倍首相は「指導者は常に難しい判断を迫られる」という感想を語っている。安倍氏は今、自らが劇中のリンカーンのように前面に出て改憲を実現しようと考えているのではないか。

■早ければ2019年に国民投票か

安倍氏はリンカーンを強く意識しているのは周知の事実だ。安倍氏のローマ字ローマ字表記は「ABE」。英語ではしばしば「エイブ」と誤って発音される。「エイブ」は、リンカーンのファーストネーム「エイブラハム」の略称と同じ。

安倍首相は2015年4月、米連邦議会で演説した際「私の名字ですが『エイブ』ではありません。米国の方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。民主政治の基礎を、日本人は、近代化を始めてこのかた、ゲティズバーグ演説の有名な一節に求めてきたからです」と語り、軽い笑いを取っている。

衆院選で「安倍1強」を確立した安倍首相が、世界史の中でも偉人の域に達しているリンカーンに自らを模し、日本史に名を残そうと考えているとしても、なんら不思議ではない。早ければ2018年中に衆参3分の2の賛成で発議し、19年に国民投票に持ち込まれることになる。

(写真=AFLO)

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