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"森友学園事件"政府は証人喚問をすべきだ

プレジデントオンライン / 2017年11月29日 15時15分

毎日新聞の社説(11月23日付)。見出しは<森友値引きは「根拠不十分」 やはり証人喚問が必要だ>。

森友学園への国有地売却で、会計検査院は問題の8億2000万円の値引きについて、「十分な根拠が確認できない」とする検査結果を出した。「法令に基づき適正な価格で処分した」という政府の説明は何だったのか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は、「政府は、国会に安倍昭恵氏など関係者を証人喚問すべきだ」と訴える――。

■「85%以上」の大幅値引きの根拠は?

新聞各紙が社説で一斉に批判を始めた。

学校法人「森友学園」に対する国有地の売却問題で、会計検査院が11月22日、問題の8億2000万円の値引きについて「十分な根拠が確認できない」とする検査結果を明らかにしたからだ。

これまでの国側の説明がいかにでたらめだったかがよくわかる。

問題の約8億円は、地中のごみの撤去費用分としての値引きの額だ。鑑定価格が9億5600万円だというから8割5分以上も値引きされたことになる。

会計検査院はごみの推計量について「売却の契約のときに推計の理由としたデータの根拠が不十分だ」とし、そのうえで「会計検査院がごみの量を独自に算出すると、最大で7割も減る」と指摘した。

今回、会計検査院が調べたのは、大阪府豊中市の8770平方メートルの国有地の売却の経緯だ。2015年5月、森友学園は小学校の用地として定期借地契約を財務省近畿財務局と締結した。その後、森友学園側は地中にごみがあると訴えた。

森友学園は、安倍晋三首相の昭恵夫人がこの土地に開設予定の小学校の名誉校長に一時、就任していた。国会では官僚の忖度(そんたく)などが値引きにつながった疑いがあると野党が追及してきた。現在、大阪地検特捜部も刑事告発を受け、近畿財務局の職員らを背任容疑などで捜査している。

会計検査院の役目は、税金の無駄遣いを厳しく指摘するところにある。その会計検査院の検査でも十分だとはいえない。記録文書が破棄されていたからである。新聞各紙の社説は「再調査を命じよ」「証人喚問が必要だ」と主張している。

■国は「不適切な売却」と認めよ

毎日新聞の社説(11月23日付)は「森友値引きは『根拠不十分』 やはり証人喚問が必要だ」(見出し)と主張する。

毎日社説は会計検査院の検査結果について「価格の妥当性に疑義を示したといえる。税金の無駄遣いをチェックする独立機関の指摘は極めて重い」と評価する。

全くその通りである。しかも「財務省などは、値引きの算定についてか『基準に基づき適切に処理した』」と説明してきた」(毎日社説)のは一体何だったのか。

毎日社説はこうも主張する。

「安倍晋三首相は、国会審議で売却の妥当性を問われると、『検査院の検査に委ねる』と繰り返してきた」
「結果が示された以上、一連の売却が不適切だったことを政府はまず認めるべきだ」

頼もしい主張である。沙鴎一歩は読んでいて拍手を送りたくなる。

■証人喚問で真相を解明せよ

さらに毎日社説は「大阪地検特捜部による捜査の過程では、財務省近畿財務局職員が学園側の希望する金額に近づけるために『努力する』と両被告に答え、具体的に金額を示す音声データの存在が明らかになっている」と指摘する。

そのうえで「佐川宣寿(のぶひさ)・前財務省理財局長(現国税庁長官)は国会で『価格を提示したことはない』と答弁していたが、明らかに矛盾している」と批判する。

佐川氏は記録文書について「破棄した」とも国会で答弁している。7月から彼が徴税トップの国税庁長官に就任したことで現場の税務職員たちは「書類を破棄したといえば許されるのか」と納税者から反発を受け、税務業務に大きな問題が生じている。

来春には国税の一大行事の確定申告も始まるなか、国税当局は対応を検討していると聞く。

毎日社説は最後にこう訴える。

「疑惑の解明には、昭恵氏や佐川氏、さらに(ごみの量を推計した)国交省の幹部らの国会での証人喚問が必要だ」

これもその通りである。過去の事件を振り返ってみると、ロッキード事件やリクルート事件などの疑獄事件では真相の解明のために国会の場でこの証人喚問が実施されている。森友学園の事件も例外ではない。

■お得意の皮肉が見られない朝日社説

11月23日付の朝日新聞の社説はこう主張する。

「政府には指摘に答える義務と責任がある。値引きの根拠と経緯を再調査するよう、安倍首相は関係省庁に命じるべきだ。国会も政府をたださねばならない。参院が検査を要請したことを忘れてはならない」

偽証罪に問われることもある、証人喚問を求める毎日社説に比べると、弱い。なぜなら再調査を命じるのは、首相として当然の義務だからだ。

会計検査院の検査に対し、「その検査も十分とは言えない」と訴え、「壁になったのは、財務省や国交省が関連文書を破棄していたことだ。検査院は『会計経理の妥当性について検証を十分に行えない状況』と指摘し、文書管理の改善を求めた。両省の責任は重い」と強調する。その通りだろう。

最後に朝日社説は「今度は、首相が疑問に答える番だ。検査が不十分な点は国会が解明に努める。それが国民に対する責務である」と主張するが、安倍嫌いな朝日にしては「今度は疑問に答える番だ」では弱いと思う。

いつものお得意のアイロニーはどこに消えたのか。そのあたりを楽しみに読んでいる沙鴎一歩として、とても残念である。

■読売社説の主張は「パンチ」がない

続いて読売新聞の社説(11月23日付)を読み解こう。

まず「不透明な値引きに疑念が募る」という見出しは、ぱっとしない。あまりにも当然すぎるからだ。もう少し奇をてらうところがほしい。これだから「新聞の社説はおもしろくない」と批判されるのだ。

読売社説はその中盤でこう事実関係を書く。

「財務省近畿財務局の依頼を受けた国土交通省大阪航空局が、ごみの量や撤去費用を推計した。専門業者を通さずに直接算定する異例の対応だった。ごみのある範囲や深さ、混入率などの数値を設定し、全体量を見積もった」
「検査院は、数値がいずれも過大だった可能性に言及した。見積もられた量の3割や7割しかない独自の試算結果も示した」

そしてこの後の主張が「値引きに至る不透明な実態が、改めて浮き彫りになった」だが、これではあまりにも当たり前すぎないか。パンチのきいた主張を期待したい。

■捜査の行方を具体的に書いてほしい

後半では捜査当局に「捜査を尽くせ」と要望している。これも新聞社説によくあるパターンである。

「刑事告発を受けた大阪地検特捜部は、近畿財務局職員らを背任容疑などで捜査している」
「背任罪の成立には、故意の立証が欠かせない。職員らが自身や学園に利益をもたらし、国に損害を与える目的で値引きをしたかどうかだ。立件のハードルは高いだろうが、検査院の報告書を踏まえて、捜査を尽くしてもらいたい」

大阪地検特捜部の捜査に触れるなら捜査の行方を具体的に書いてほしい。たとえば背任事件が成立するならば、その次に捜査はどう展開するかを書いてほしかった。

■各紙に出遅れた産経社説の緩さ

最後に11月25日付の産経新聞の社説(主張)を挙げる。

社説の最後で読売社説と同じように「背任容疑」を書いているが、やはり書いている内容が甘くて緩い。

「近畿財務局の担当者らは国有地を格安で学園に売り、国に損害を与えたとする背任容疑などで告発されている。立件はハードルが高いが、まず政府が丁寧な説明をし直すことが欠かせない」
「政府の丁寧な説明」の段階はもう終わった。新聞社説としては毎日社説のように関係者の証人喚問の実施を訴えるべきだ。

さらに「撤去費用の単価が妥当か確認できる資料もなかった。国有地売却が、このようにどんぶり勘定で扱われている」と指摘し、見出しをここから取って「どんぶり勘定に疑念残る」としているが、斬新さに欠ける。

産経の社説は、毎日、朝日、読売がすでに社説を書いた後だ。書き手である論説委員の頭の中には他紙の書きぶりが残っているのだろう。どうしても論調が弱くなる。各紙が横並びで書いたときには、各紙のスタンスがはっきり出てくるが、遅れた場合には主張がしづらくなる。今回の産経も苦しい内容だった。これでは読者を増やすことはできないだろう。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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