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女性部下に「友達申請」はパワハラなのか

プレジデントオンライン / 2017年12月15日 9時15分

お金に関する法律相談件数が増え続けている。あなたは法律を知らないことで"大損"しているかもしれない。雑誌「プレジデント」(2017年10月16日号)の特集「ヤバすぎる『法律』の常識」から、「残業代」「セクハラ」「相続税」などについての法律知識を紹介しよう――。

■社内不倫は別れ際にこじれる

「職場内で恋愛関係に陥る男女はとても多い。不倫関係を持つ人も結構な数いるようです」

そう語るのは弁護士ドットコム執行役員で弁護士の田上嘉一氏。なぜか?

「スマートフォンの普及によって連絡が取りやすくなり、バレにくいように浮気や不倫ができてしまうからでしょう。一方、LINEのキャプチャーを残す文化も根付いている。つまり、証拠が残りますので、別れ際にこじれるケースも増えています」

その証拠をもとに相手に社会的な制裁やダメージを与えようとすることもあるようだ。上司と部下の関係にある職場内恋愛であれば、上司が部下に嫌がらせをしたり、職場外恋愛であれば、ふられた相手が職場に乗り込んだり、職場に内容証明郵便を送り付けたり。

「もちろん、度を越せば恐喝やストーカー、パワハラ、セクハラなどで訴えることができますから、弁護士や警察に相談すべきです。しかし、たとえば『同じ職場の上司と不倫して、別れたら評価を下げられた』という場合、その評価が妥当かどうかを判断することは難しい。法律的には解決できません」

タレントのベッキー、政治家の今井絵理子議員や山尾志桜里議員など、男女問題に対する世間の目は厳しくなるばかり。だが、一般庶民の世界でも同じように、さまざまな男女問題が繰り広げられているというわけだ。

「交通事故や消費者被害、労働問題などは、実際に被害にあったり問題が生じたりする前に思い悩むということはまずありません。一方、離婚・男女問題については、何か大きな問題があるかどうかにかかわらず、常に悩みの種を抱えているといえます」

■カードローンが会社にバレたら、減給・解雇される?

こうした離婚・男女問題に続いて多い相談は「犯罪・刑事事件」「労働問題」「不動産・建築」「借金」などだが、全カテゴリーで依然増え続けるのが「お金」に関する問い合わせだという。

「なかでも借金カテゴリーでは『カードローン』に関する問い合わせが目立ちます。従来の消費者金融から大手銀行などが運営母体になり、クリーンで手近な存在になったからでしょう。カードローンの利用やブラックリストに載ることが会社にバレるのかを心配する声も多い。ただ、それを理由に降格、減給があるとすればややいきすぎ。争点になるでしょう」

近年急増しているキーワードである「残業代」などの労働問題、「SNS」を巡るトラブル、法改正で対象者が広がった「相続税」などにスポットを当てて見ていく。

急上昇ワード▼残業代
TOPIC 2017/7/18
ヤマトHD、未払い残業代支給

【相談者の声】
・未払い残業代を請求したところ、調整手当が残業代だといわれました。取り返すことはできないのでしょうか?
・会社で裁量労働制が採用されています。深夜残業代が部分的にしか支給されません。これは適法なのでしょうか?

■未払い残業代を会社に払わせるための武器とは?

電通過労自殺問題、ヤマトHDの残業代未払い問題などが表面化し、労働に関する相談が一気に増えている。

「『裁量労働制』が曲者です。『強制されて残業をこんなにしているのに、裁量労働制の範囲なのか?』という相談が特に目立つ。派遣切りや、契約社員の契約内容に関する相談も絶えません」

労働基準監督署の企業に対する監視の目が厳しくなっているが、「人のふり見てわがふり直せ」と襟を正したいところだ。

「弁護士も、消費者金融の過払い金問題が一定の収束をみたことにより、残業代に注目しています。つまり、これまで弱い者が泣いてきた、次なるエリアというわけです。弁護士事務所によっては、残業代専門のチームを作っているほどです」

最も多い相談は、「残業をしても残業代が全く支払われない。これまでのすべてを取り返したい」というものだ。こうした残業代未払い問題に対し、労働者ができる対応策はあるのだろうか。

「証拠次第です。これは虚偽の残業代申請が横領になるかどうかも同じ。タイムカードの履歴や、手帳に記録したものでも構いません。残業請求は2年で時効となってしまいますが、不法行為など悪質性が高いと判断された場合は、損害賠償請求という形で3年になることもあります」

急上昇ワード▼SNS
TOPIC 2017/6/14
SNS上も規制、改正ストーカー法施行

【相談者の声】
・SNSで悪口を繰り返し書き込まれています。相手を特定することは可能でしょうか?
・面識のない人にSNSで自分の写真をアップされました。相手を訴えることはできますか?

■Facebookで女性部下に友達申請するのはパワハラか?

2016年5月、東京都小金井市で音楽活動をしていた当時20歳の女子大学生が、ファンの男からツイッターに執拗な書き込みをされた末、刃物で刺されて一時重体となった「小金井ストーカー刺傷事件」。当時は、SNSによる付きまといはストーカー法の規制に含まれていなかった。だが、この事件をきっかけに、改正ストーカー規制法が17年6月に全面施行された。

改正ストーカー規制法では付きまとい行為を新たに規制対象に追加。(共同通信フォト=写真)

「職場でよくあるのが、たとえば上司である男性が部下である女性に、Facebookで友達申請をする。女性としては自分のプライバシーを見せたくないけど、断れない。これはパワハラか、という問題があります。あるいは、同じ職場の女性がSNSにアップしたものすべてに対し、男性社員が『いいね!』とコメントしてきたら、一種の付きまといのようなもので、女性は『気持ち悪い』と感じるかもしれません。場合によってはセクハラとなります」

工場で働いている人が発売前の新商品をSNSにアップするなどという事案もあり、従業員のSNSに関するコンプライアンス動向にはますます注目が集まっている。

「ネットでのプライバシー侵害や機密漏えいは従来、文字情報が主体でした。ところがSNSの広まりとともに、それが画像へ、さらには動画へと移り変わり、その侵害度が高まっています」

急上昇ワード▼相続税
TOPIC 2017/4/6
遺産分割、定期預金も対象に

【相談者の声】
・実家で認知症の母と同居する長男がいます。母の年金を勝手に使っているようですが、許されるのでしょうか?
・夫に多額の借金があり相続放棄を申請中です。夫の車の税が未納で督促状が来ています。どうすればいいでしょうか?

■認知症の母親の年金・財産を使いこむ長男

15年から相続税の基礎控除が大幅に減額されるなど、相続税を支払う対象者が一気に増えた。

「『大相続時代』がやって来ました。加速する高齢化社会の中で、被相続人に意思能力がなくなっているケースもあります。すると相続する兄弟姉妹の間で、誰かが被相続人の財産を使いこむといったケースも増える。そうなると、不当利得返還請求をするしかないわけです。相続に関しては、弁護士ドットコムへの相談も増える一方。意思能力のあるうちに遺言書を作っておくことが重要です」

2016年12月に続き、最高裁判所は「預金は遺産分割の対象に含まれる」という判決を今年4月にも下した。(共同通信フォト=写真)

相続で実は見逃せないのは「借金」問題だという。

「親と離れて暮らし、とりあえず相続したら、借金のほうが多かったといったケースが少なくないのです」

昨年12月には、預金債権に関する新たな判決が最高裁で下された。

「これまで預金債権は遺産分割の対象になっておらず、たとえば90万円の預金があり3人の相続人がいた場合、1人30万円ずつ受け取ることができた。しかし、たとえば3人のうち1人が生前に100万円の贈与を受けていた場合、預金を均等に分けるのは不公平。だから預金も遺産分割の対象にしようという判決が下ったのです」少額にもかかわらずもめごとのタネとなるのが“お金”の怖いところ。預金債権を巡る相続人同士の争いは、今後も増えそうだ。

※問い合わせ件数は弁護士ドットコム提供。相談者の声は弁護士ドットコムへの問い合わせ内容と取材をもとに編集部作成。

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弁護士 田上嘉一
弁護士ドットコム執行役員。同社名を掲げたポータルサイトは月8000件以上の相談が寄せられる。早稲田大学大学院法学研究科卒業。
 

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(小澤 啓司 写真=共同通信フォト)

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