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天才が伝授する"集中力"を切らさない技術

プレジデントオンライン / 2017年12月25日 15時15分

遠藤保仁『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)

どうすれば「集中力」を維持できるのか。サッカー日本代表として活躍してきた遠藤保仁さんは「強弱を意識するといい」と話します。90分間、同じ状態を維持しようとするのではなく、リズムやテンポといった「強弱」を意識することで、無理がなくなり、安定したパフォーマンスが出せるようになるといいます。仕事にも役立つ「天才」の知恵をご紹介しましょう――。

※本稿は、遠藤保仁『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■PKは蹴る瞬間だけ集中する

サッカーの試合中は、常に頭の中で考えながらプレーをしていますが、唯一、何も考えずに、無心になる瞬間があります。それはPK(ペナルティーキック)を蹴る瞬間です。

PKを成功させるいちばんの秘訣は、ギリギリまでGK(ゴールキーパー)の動きをじっと見て、GKの重心とは逆方向に蹴ること。このとき、何も考えずに、GKの動きだけに集中する。ボールもほとんど見ていません。

そういう意味では、無心というよりも100%集中している状態だといえるでしょう。このボールを蹴る瞬間にいろいろな邪念が浮かぶと、GKの動きを見極めることがむずかしくなるのです。

人間の集中力が持続する時間は、想像以上に短いといわれます。相手の話を真剣に聞いているつもりでも、1分もすれば別のことを考えていたりするもの。サッカーも90分間フルで100%集中することは不可能です。また、思考のクセとして集中しようと思えば思うほど、雑念が浮かんでくるものです。

だからこそ、ここぞというとき、一瞬で100%の集中力を発揮することが大事になります。PKのとき、僕は蹴る瞬間しか集中していません。だから、蹴る前はリラックスしている状態で、相手選手に話しかけられてもとくに気になりません。よく集中力を削ぐためにわざとPKのキッカーにプレッシャーをかけにくる相手選手もいますが、まだ集中している状態ではないので、まったく邪魔にはならないのです。

集中の時間は短ければ短いほど、高いレベルで神経を研ぎ澄まし、いわゆる無心に近い状態になれるのだと思います。仕事でもプライベートでも、本当の意味で集中できる時間はかぎられることを理解しておいたほうがいいでしょう。そのうえで集中すべき時間とそうでない時間のメリハリをつける。そうすることで、結果的に質の高い学びやクリエイティブな仕事ができるのではないでしょうか。

では、どうすれば、集中力をコントロールすることができるのでしょうか。

■集中力を長時間持続させる秘訣とは?

サッカーでは集中力がプツリと切れたときに、ゴールを奪われることが多いといわれます。よくあるのは、セットプレーで集中力が途切れるケース。フリーキックやコーナーキックをとられると、いったんプレーが止まる。その際、自分のポジションやマークする相手を気にしてしまい、ボールへの執着が途切れる瞬間があります。このとき心のスキが生まれ、敵の選手へのマークが甘くなってしまうのです。だから、セットプレーのときほど、ボールに対する集中力を高めるように意識しないといけません。

撮影=佐藤亮

しかし、現実的に考えれば、90分間、100%の集中力を持続させることは不可能です。特にサッカーは体力の消耗が激しいので、集中力が落ちる時間が必ずあります。

集中をできるだけ切らさずにプレーするためのポイントは、集中力に強弱をつけることです。「集中力のスイッチをオンにする」という表現をよく聞くことがありますが、僕の感覚では少し違います。オンとオフを切り替えるというと、100%か0%かのイメージですが、サッカーでは0%のときがあると必ずそのスキをつかれてしまいます。だから、僕の感覚では「集中力に強弱をつける」という表現のほうがしっくりくるというわけです。常に50%くらいの集中力を維持するようにして、勝負どころでは100%の集中力でプレーをする。そうすれば、セットプレーのときも完全に足が止まることもないし、プレーの質は低下しません。

感覚的なものなので、なかなかイメージしづらいかもしれませんが、家電にたとえれば「省エネモード」、パソコンでたとえれば「スリープモード」という感じです。電源が切れているわけではなく、すぐに起動することができる。そんなイメージになります。

また、集中力が50%以上の状態で維持されているときは、試合の状況や相手チームと味方のポジションもよく見えるもの。サッカーで重要なスキルである先読みの精度が上がるのは間違いありません。

仕事の場合はサッカーの試合よりも長丁場になると思いますので、集中力の強弱をコントロールすることは重要なスキルになると考えられます。もしかしたら、長時間の仕事では50%ではなく、10%くらいを維持するほうが長く集中力を発揮できるのかもしれません。そうすれば、ぷっつりと集中が切れて大きなミスをすることを防げて、全体的に質の高い成果を生むことができると思います。

■「リズム」が集中をつくる

集中力を高めるには、リズムを意識することも効果的です。「遠藤がいるとチームのリズムがよくなる」「遠藤が入ってから試合運びが安定した」といった声を聞くことがあります。

「あの選手が入るとリズムがよくなる」と評される選手は、他のチームにもいます。中村俊輔選手、中村憲剛選手など司令塔タイプに多いようです。

そのような評価を受けるのは実績や経験によるイメージの部分も大きく影響しているでしょうし、こうすればいいという絶対的なコツもありません。ただ、僕の場合は、どんな試合でも安定したパフォーマンスを発揮すること、そして、試合の「流れ」を読んでプレーすることを心がけています。

たとえば、チームが試合で負けているとき、早く追いつこうとあせって、チーム全体が前へ前へと行きすぎてしまうことがあります。残り時間がわずかなら前がかりになるのもわかりますが、まだ十分に時間が残されているのにもかかわらず、前がかりになったら逆効果です。じっくりボールをまわしたほうが効果的であるにもかかわらず、やみくもに前線にボールを放り込めば、相手の思うつぼです。

そのため、全体に前に行きすぎていると感じたら、わざと僕のところでゆっくりボールをまわして、チームに「あせらずにいこう」とメッセージを送ることがあります。そのメッセージが伝わると、チーム全体の集中力もアップし、いい攻撃につながることが多いのです。そうした流れを読んだプレーが、「遠藤が入るとリズムがよくなる」という評価につながっているのかもしれません。

■「リズム」や「テンポ」を意識するだけで結果が出やすくなる

「結果を出したかったら、ひたすら一生懸命やりなさい」とよく言われます。しかし、何かで結果を出すには、リズムよく取り組むことが大切です。たとえば、睡眠不足で頭がボーッとしているときに何かに取り組んでも集中できず、パフォーマンスは下がるばかりです。疲労がたまっているなら、思い切って昼寝の時間を確保して、頭をすっきりさせてから作業を再開したほうが結果的に高いパフォーマンスにつながるはずです。

集中して何かを生み出したければ、自分の自然なリズムにさからわないことが意外と重要です。サッカーの練習でもテンポよく取り組むことができれば、量をこなしても疲れを感じることが少ない。これは練習に集中できているからです。逆に、練習に集中できていないときほど疲労感に襲われるものです。

また、日常における生活リズムも大事です。残業や飲み会が続いて早く帰れない、帰宅してもついインターネットをして寝るのが遅くなってしまうなど、生活リズムが乱れていれば、これを機に見直してみてはどうでしょうか。普段の集中力に変化があらわれるはずです。

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遠藤保仁(えんどう・やすひと)
1980年1月28日、鹿児島県生まれ。鹿児島実業高校卒業後の1998年に横浜フリューゲルスに入団。京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)を経て、2001年にガンバ大阪に加入。数々のタイトル獲得に大きく貢献し、2003年から10年連続でJリーグベストイレブンに選出され、現在もガンバ大阪の中心選手として活躍中。また、U-20日本代表をはじめとし、各年代の日本代表に選出され2002年11月に日本代表国際Aマッチデビュー。その後は、日本代表の中心選手として活躍し3度のワールドカップメンバーに選ばれる。「日本代表国際Aマッチ出場数最多記録保持者」「東アジア最多出場記録」「2009年アジア年間最優秀選手」「2014年JリーグMVP」など数多くの記録を持つ。178cm、AB型。

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(遠藤 保仁)

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