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「接待は朝食が一番でしょ」の時代が来る

プレジデントオンライン / 2018年1月26日 11時15分

ホテル研究家の石原隆司さんは、「ビジネス接待をホテルの朝食で」というスタイルが人気になると見ている。3つの理由があり、まずホテルの朝食の質が高まっている。そして、朝は気分がよくミーティングの質も上がる。さらに料金が安い。朝からシャンパンを無料で出すホテルまであるという。

■ことさら、オレンジジュースにこだわる

1980年に画期的なホテルが開業した。香港のザ・リージェント(2001年からはインターコンチネンタル香港)である。創業者のロバート・バーンズらが打ち立てたホテル哲学が、何より驚嘆の対象であった。

当時、高校生だった私は、このホテルの哲学とコンセプトに憧れ、ホテルマンを目指したのである。このホテルグループから始まった、恐らくは世界初といえることがいくつもある。まず、シンガポールのマリーナベイ・サンズの登場によって世界的に広まったインフィニティー・プール。すなわち、プールの水が景色の水平線と合わさって見えるプールだが、この元祖はザ・リージェントのジャクージである。

ロビー中央に据えられたアイランド型チェックイン・カウンターもそうだ。運営上の不都合を退けて、壮観な眺めに接しながらのドラマティックなチェックインを実現した。バスルームの深いバスタブと独立シャワーブースの標準装備も、このホテルからである。バスルームを「汚れ落としの場」から「リラクゼーションの場」へ転換させた。

このホテルが掲げた画期的なコンセプトが、「3つのB」であった。ドイツ音楽の3大B、バッハ、ベートーベン、ブラームスになぞらえてのことと思うが、ベッド(Bed)、バスルーム(Bathroom)、ブレックファスト(Breakfast)である。快眠をいざなうベッド、前述のバスルーム、そして朝食。焼きたてのパン(特にクロワッサン)、淹れたてのコーヒー、そして、絞りたてのオレンジジュースには格別にこだわった。最初に口をつける確率の高いからだ。氷なしの適温の絞りたて、繊維を絶妙に濾すなどの工夫をしているという。

そもそも、朝食はホテルにとって非常に重要な部分だ。ホテルの宿泊客は、夕食を外でとる場合が多数である。そうした宿泊客にとって、朝食がホテルで楽しむ唯一の食事となる。しかも、チェックアウト直前になるため、朝食がホテル全体の印象を左右してしまうといっても過言ではないからだ。

さて、高級ホテルの朝食には、いくつかのスタイルがある。

■「定食スタイル」が朝のビジネスミーティング向き

高級ホテルの、主にウェスタン式(西欧式)の朝食には、いわずもがな2つの形式がある。かつて主流だった「完全着席式定食スタイル」、それから、現在の圧倒的多数派「着席バフェ式(バイキング式、ブッフェ式)」である。「定食スタイル」について、正統的ダイニングルームでの定食が本当に少なくなってしまい、今では帝国ホテルのフレンチダイニング「レ・セゾン」くらいだろうか。定食とバフェ、両方準備しているカジュアルダイニングはよく見かける。

正統派の定食といえば、パン、ジュース、コーヒー主体の「コンチネンタル式」と、そこに卵や肉の温かい料理の皿が付く「アメリカン式」がもちろん主流である。朝食における"スペクタクル性"は乏しくなるが、じっくり話をする朝のビジネスミーティングなどには、こうした定食スタイルが適している。

出張中などで仕事相手と朝食をともにすれば、より親近感が深まる。宿泊先ではないホテルで仕事先の方と朝食を一緒すれば、すがすがしい気分での建設的なミーティングとなるはずで、これなどはあるテーマを決めてのセミナー的な会合にも適しているはずだ。

■ホテルの朝食は、ますます楽しくなっていく

一方のバフェ朝食であるが、世界中の共通点として、だんだん品数が増え、豪華になっている。いわゆるビジネスホテルクラスの業界でも、「朝食戦争」に拍車がかかっており、料金に比して品数が多く、個性的な朝食を供するホテルが出てきている。高級ホテルは品数はもちろんのこと、質の高さで勝負しなくてはならない時代に突入した。

日本人の特性と外国人観光客の要求をあわせた結果、和食の要素を取り入れるホテルが増加している。朝食の評判がよい高級ホテルのうち、東京ステーションホテルは和の要素も取り入れて、約120品目を揃え、壮観で美味しい朝食を提供している。地方の料理(ローカルフード)を充実させたホテルもある。

朝食はますます充実し、そして楽しくなり、心身のパワーチャージに最適であることから、今後はビジネスミーティングならぬ"ビジネス接待朝食"などの動きも出てくると私はにらんでいる。

さて、高級ホテルでは、専門の日本料理店(和食堂)を備え、朝食営業をしているところも多い。この場合、日本料理の料理人が朝から支度をしている場合がほとんどで、正統派の日本料理の朝食がゆっくりテーブルで堪能できる。粥などを準備していることも少なからずある。出張時であれば、気分を変えるのに適していて、ミーティングにも意外感が出て、狙い目だ。

朝食が楽しいホテルを1つ紹介しろ、と言われたら、ザ・リッツカールトンを挙げる。

■朝からシャンパーニュ。それも無料

ザ・リッツカールトンの朝食は、機会があれば、ぜひ試してもらいたい。シンガポール、東京などいくつかの事業所のクラブレベルの朝食では、バフェとともにシャンパーニュを無料提供している(要望すれば、有料ではあるが朝食にシャンパーニュを提供してくれるホテルは多い)。朝食のときのシャンパーニュ――これは格別だ。

いずれにせよ、高級ホテルの朝食はリッチであり、気分も高めてくれ、ビジネスにも余暇にも(出張時の一人朝食も、これまたよい)好適である。そして、近年価格は上昇しているとはいえ、会食ディナーより安価なのは言うまでもない。ぜひ、積極的に人と会う機会を、朝食の場にセッティングしてみてはいかがだろうか。

(ホテル研究家・プランナー 石原 隆司 イラスト=富田茜)

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