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潔く"家計は妻に一任"の恐ろしすぎる結末

プレジデントオンライン / 2018年2月24日 11時15分

写真=iStock.com/minhee park

「夫婦別財布」と「夫婦でひとつの財布」、お金が貯まるのはどちらでしょうか。「ひとつの財布」のほうが効率的だと、夫婦のどちらかに家計管理を丸投げすると、貯まるどころか、浪費が加速してしまうこともあります。なぜなのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が実例を紹介します――。

■貯められない「別財布」の夫婦は「1つの財布」でもダメだった

●家族構成(4人家族)
会社員のTさん(40)/妻(Mさん・フルタイム会社員・38)/長男(小3)、長女(5歳)
●手取り収入(月) 55万円(夫35万円 妻20万円)
●貯蓄 200万円


「インターネットでマネー記事を読み、わが家も家計を『夫婦でひとつ』にしてみたのですがなかなかうまくいかず、予定通りお金がたまらないんです」

浮かない顔で相談にきたのはTさんご夫婦(夫40歳、妻38歳)。聞けば、半年前までは「夫婦別財布」で、互いにいくら収入があって、いくら使っているのかしっかり把握していませんでした。

その結果、手取り月収が2人合わせて約56万円もあるのに、なかなか貯金ができずに困っていたそうです。そんな折、本欄の記事「共働き家計“パワハラ退職”で完全に傾く 貯められない『別財布』の落とし穴」(http://president.jp/articles/-/22717)を読み、自分たちも「夫婦でひとつの財布」で出直そうと決心したといいます。

▼家計管理は「妻に任せて一切口を出さない」

プランはこうです。

毎月の生活費はすべて夫のTさんの月収約35万円でまかなう。そして妻のMさんの月収約20万円は全額貯金に回す。極めて、シンプルです。家族は長男長女を含めて4人。マイホームのローン支払いが月11万円ありますが、35万円あればやりくりは可能なはず。妻の20万円は毎月着実に貯めて子供の将来の教育費にしよう。そう考えたのです。

それ以来、毎月の給料からTさんは自分のこづかい5万円を引いた30万円を妻のMさんにそっくりそのまま渡しました。Mさんは費目ごとに予算を決め、その中でやりくりするようにしました。やる気になっている妻を見て、Tさんは思いました。「信頼して妻に任せよう」と。「つい細かいことにまで口を出してしまう」という自分の性格を考え、家計費のやりくりは妻に一任。それが、「夫婦でひとつの財布」を成功させるコツなのではないかと感じたと言います。だから毎月の収支や貯金額も、いちいち聞くことはなかったそうです。

そうして半年が経過した頃……。

■貯蓄は30万円?「今まで何やっていたんだ!」

自宅でレシート整理していた妻に「毎月、家計のやりくりお疲れさま」と声をかけました。ところが、妻から返答がない。「実は、貯金が30万円くらいしか増えていないの」。この発言に衝撃を受けたのは、毎月20万きっちり貯金されていると信じ切っていたTさんです。半年もたったのだから、優に100万円は超えているはずだと思っていました。ところが……。

実際の貯蓄額は毎月5万円程度だったことになります。当初のプランは完全に崩壊してしまいました。「給料を全部渡して、君のやりたいようにやらせてあげたのに、いったい何をやっていたんだ!」と、Tさんはつい声を荒らげてしまいました。

これにはMさんも黙ってはいません。

「任せた、の一点張りで、相談にも乗ってくれなかったじゃない。私が毎月やりくりでどんなにつらかったか、全然わかってないでしょ! 『やらせてあげた』なんて、何様のつもり!」

2人の間にはこの冬の最強寒波さながらの、冷たい空気が横たわったままだそうです。

▼「食費と外食費」は予算の2倍以上の11.4万円

そんなお2人に家計の立て直しをしてもらうべく、まずは毎月の各費目の「予算額」と実際の「支出額」を教えてもらいました。その一覧をそばで見たTさんの目は血走っています。

予算は、食費4万円、外食費1万円、教育費4万円、交通費1万円。しかし、支出額はどれも予算を大きくオーバーしています。食費8.1万円、外食費3.3万円、教育費5.2万円、交通費1.9万円となっていました。子供のために使う教育費はともかく、食費と外食費は、予算(合計5万円)の2倍以上の11.4万円。一体どうしてしまったのでしょうか。

家族4人ですが、子供はまだ小さい(8歳と5歳)ので、外食費込みで月5万円という予算は、それほど少ない額とは言えません。立てた予算に無理があったわけではないのです。ところが、計画は完全破綻していました。Mさんはぽつりと言いました。

「予算を守らなくては、というプレッシャーが強くて……」

夫に家計管理を一任され、当初は張り切っていました。しかし、だんだん荷が重く感じられてきたそうです。以前の「夫婦別財布時代」から、保育園や塾のお迎えを1人でやっていたMさんは、ときどき「デパ地下総菜」「外食」「タクシー」に頼ることがありました。当時は、頻度も金額も少なかったそうです。

ところが「夫婦でひとつの財布時代」になり、「家計を切り盛りして、お金を貯めなければ」と思えば思うほどストレスがたまり、逆に「総菜」「外食」「タクシー」の3点セットに頼りきりの生活となり、出費が激増してしまったといいます。

■大事な教育費をデパ地下の総菜代に全投入

ここまでの話を聞いて、私はTさんご夫婦の家計には、2つの問題点があることに気づきました。ひとつは「家計管理を夫婦の共同作業にしていない」こと。もうひとつは、「目標が高すぎる」ことです。

写真=iStock.com/paylessimages

その対策として、Tさん夫婦2人で、毎週日曜日に「家計簿いらずのお金会議」を開いてもらうようにしました。その会議で、1週間分のレシートを見ながら、使ったお金を2人で確認します。この作業の狙いは、実際の出費を「目で見て」知ることで現状の問題を共有することです。

この会議を積み重ねるうちに、Tさん夫婦の関係も徐々によくなり、

「次の日曜日は“おかずの作りおき”をして、お総菜代を抑えよう」
「騒ぐだけの飲み会には行かず、僕が電車で塾のお迎えに行こう」

など、互いに実行可能な節約に積極的に取り組むようになったそうです。その結果、「デパ地下総菜」「外食」「タクシー」という悪魔の3点セットのコストが大幅に削減できました。特に食費は月3万円も減りました。お店で外食をする回数が劇的に少なくなったことと、夫婦でおかずを作り置きして冷蔵冷凍したことが効果を発揮しました。

▼月の支出額を計7万円削減し、黒字額は12万6000円に

そのほか、ママ友に刺激され「見栄」で入会してしまった長女の英語教室(教育費)や、無頓着に昔の料金プランのままにしていた大手キャリアのスマートフォン代(通信費)も無駄支出ではないかと感じ、自ら調べ、英語教室はキャンセル、スマホは格安スマホにチェンジすることにしました。クリーニングも、夫の仕事着のスーツなど以外は家で洗濯するようにしました。

そうしたコストカットを積み重ねた結果、月の支出額はトータルで7万円も削減でき、月の黒字は12万6000円になりました。もともと、貯金しようとしていた月20万円には届きませんが、目標額を月10万円とし、余ったお金は「特別支出用」として貯めていくことにしました。そうすると、毎月の蓄えだけで、1年間で約150万円、5年間で約756万円の貯蓄が作れることになります。このペースでいけば、子供の教育費がたくさんかかる10年後には1000万円以上も実現できそうです。

家計管理の一番大事なポイントは、「夫婦で家計を共有すること」です。今回、Tさんは「信頼して任せた」といいますが、任せられた妻からすれば「仕事を丸投げされた」だけ。こうした夫婦観のギャップは、多くの家庭に共通することだと感じます。

「夫婦でひとつの財布」を家計改善の切り札にするには、生活で使うお金の流れを、ふたりで把握して対策を講じる必要があります。これからもお金のことを気軽に相談しながら、お子さんたちが健やかに育つ姿を見守ってほしいと思います。

■やればできる、外食含む食費を月5万円も削減できた理由

▼【家計費コストカット額ランキング】
写真=iStock.com/hungryworks

1位:食費 -3.1万円
夫婦で家計を話し合うことで、デパ地下総菜の“ストレス買い”にストップをかけることができた。また、作り置きおかずでお金を節約した。
2位:外食費 -1.8万円
「作り置きおかず」の料理レシピ本を数冊買い、夫婦で週末に作ることが習慣化したことで外食より家の食事が豊かになった。
3位:教育費 -0.7万円
学習塾、スポーツ教室、英語教室など親がやらせたい習い事を詰め込みすぎたので、子供がやりことだけに絞った。「見栄」で始めた英語教室は即キャンセル。
4位:被服費 -0.6万円
スーツなど仕事で必要なものはクリーニングに出すが、それ以外のシャツなどは自宅で洗濯をするようにした。
5位:通信費 -0.5万円
夫婦2人のスマホ代を格安スマホに。
6位:交通費 -0.4万円
子供の習い事のお迎えを夫にフォローしてもらい、タクシー代を削減。

(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭 写真=iStock.com)

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