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目の難病の資生堂女性「働いて自立する」

プレジデントオンライン / 2018年3月28日 15時15分

資生堂ジャパンCSR部 奥沢美砂さん

■視覚障害者向けに美容情報を紹介する音声コンテンツを作る

バラのアロマオイルを使うスキンケア、目もとが華やぐメーキャップなど、気になるテーマが聴き手の心に届く。資生堂が年4回発行する『おしゃれなひととき』は視覚障害者向けに美容情報を紹介する音声コンテンツだ。ナレーターを務める奥沢美砂さんはこんな願いを込める。

「視覚障害のある方は街を歩いていても流行の色やファッションなどが目に入ってこないので、おしゃれしたいと思えるような情報を提供したいのです。きっかけができると外へ出かけたくなるし、人に会いたくなる。たくさんの方に社会へ出て元気に活躍してほしいから、その後押しができればと思っています」

奥沢さんが網膜色素変性症と診断されたのは中学1年のとき。網膜の視細胞が障害され、徐々に視野が欠けていく進行性の難病だ。音大でピアノを専攻していたが、20歳の頃に障害者手帳を取得。白杖(はくじょう)歩行の訓練や就労支援の講習も受けた。

「何しろ働きたかったのです。親と一緒に住んでいると手助けしてもらえるし、自分もつい甘えてしまう。いずれは1人で生活し、ちゃんと自立しなければいけないと。仕事があれば、何とか生きていけるだろうという思いがあって……」

就職活動は厳しかったが、全盲の女性を採用した実績のある資生堂へ入社。社会貢献関連の業務を任された。パソコンの音声読み上げソフトなど補助具も備えられたが、慣れないオフィスでは移動がおぼつかず、誰が何をしているのかという判断も難しい。仕事がなく戸惑うこともあったと振り返る。

「周りの方も何を頼んでいいかわからず遠慮してしまうので、とにかく聞いて回りました。相手の仕事内容を尋ね、この部分はお手伝いできそう、やり方を変えればできるかも、と相談しながら、周囲の協力や理解を得て自分にもできる仕事を見つけていったのです」

初めての朝礼や全体会議では自分の障害について話し、疑問点があればいつでも聞いてほしいと伝えた。周囲の理解が深まるなかで仕事の幅も広がっていく。

■働く喜びは自分の感じ方ひとつ、どんな中にも見つけられる

社員から給与引きで寄付をつのる「花椿基金」や災害発生時の義援金などに対応。現在は地域事業所で取り組む社会貢献活動「未来椿活動」の事務局運営に携わり、XP(色素性乾皮症)の子どもたちへの支援活動も行っている。XPとは紫外線に当たると高い確率で皮膚がんを発症する難病で、日中の外出が困難な子どもたちにサンケア商品を寄贈して喜ばれてきた。

さらにナレーターを務める『おしゃれなひととき』では制作も担当している。「目が見えないと失敗するのが怖くて、メイクをあきらめてしまう人もいます。安心して試せる方法を伝えたいし、より多くの方に喜ばれる情報を盛り込みたい」

同じ職場の仲間は、奥沢さんのひたむきな仕事ぶりに励まされるという。奥沢さんもまた結婚、出産を経て復職。周りの人に支えられながら子育てと仕事に奮闘する日々だ。

「今こうして働けることが喜びであり、ありがたいと思う。だからこそ、自分にできることを一生懸命やりたいし、それが意欲につながっている。働く喜びは自分の感じ方ひとつで、どんな中にも見つけられるのだと思います」

これからも生き生きした自分でいられるよう、そんな姿を周りの人や娘にも見てもらえるようがんばりたい、と願う奥沢さん。

「その人自身が生き生きしているからこそ、おしゃれやお化粧が映えるもの。自分自身の内面の美しさを磨くことも大切にしていきたいですね」

それこそが、今を生きる女性たちに届けたいメッセージでもあるのだろう。

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奥沢美砂

資生堂ジャパンCSR部

1996年、埼玉県立浦和第一女子高等学校卒業。2000年、東京音楽大学(ピアノ専攻)卒業後、株式会社資生堂に入社。社員による社会貢献活動の推進、視覚障害者向けの美容情報「おしゃれなひととき」制作・ナレーションを担当。会社のコーラス部に在籍。

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(歌代 幸子 撮影=石橋素幸)

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