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森友問題で「安倍叩き」を続けるおかしさ

プレジデントオンライン / 2018年4月4日 9時15分

2018年3月27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた参院予算委員会に集まった多くの報道陣。(写真=時事通信フォト)

はたして「総理の意向」はあったのか。「森友文書問題」で当時の財務省で理財局長だった佐川宣寿氏は、国会で安倍首相や昭恵夫人の関与を否定した。「疑惑は深まった」とするメディアも多いが、元理財部長の高橋洋一氏は「疑惑と思惑を取り違えたおかしな議論が続いている」と指摘する。真実はどこにあるのか――。

■元理財部長である筆者にも取材が殺到

この国にはびこる「おかしな議論」を象徴する森友学園問題が、再び息を吹き返した。

きっかけはご存じのように、2018年3月2日付『朝日新聞』が報じた「財務省による決裁文書の書き換え疑惑」だった。世間が大騒ぎするだけのインパクトはある。公文書の改竄は刑法の「虚偽公文書作成等罪」にも抵触する。第一報に接したときの筆者の直感は、「もし記事が事実なら財務省が解体、逆に誤報なら『朝日新聞』が解体、巨大組織のクビを賭けた論争になるか?」というものだった。

マスコミが“疑惑”を追及するのは、大いにけっこうなことだ。それが権力の腐敗をチェックするジャーナリズムの正しい姿勢でもある。しかし、この国のマスコミが報じるニュースは、“疑惑”と“思惑”がごちゃまぜになっている。

昨年来、この森友学園問題をめぐっては、元財務官僚で理財部長を務めた経験もある筆者にも、各方面から問い合わせが殺到した。そして、このたびの財務省の書き換え疑惑についても、マスコミの記者から以下のような質問を受けた。

「官僚の一存で文書は書き換えられませんよね」
「政治家の指示があったのでは?」
「指示がなくても、官僚の忖度はあったはず……」

こうした質問は、すべてマスコミの“思惑”から発せられている。識者や関係者から「イエス」の言質をとることを狙いとした、稚拙な取材である。筆者は官僚時代の経験に照らして正直に答えた。

「文書のありかを知っている官僚なら書き換えはできるだろう」
「文書の存在を知らない政治家に指示はできない」
「財務官僚が政治家に忖度していたら、省内で出世できなくなる」

筆者のコメントは、その場で取材記者から「使えません」といわれた。そもそも取材をしておいて、コメントが「使える」「使えない」ということ自体が理解できない。“思惑”どおりの記事に仕立てるためには、都合のいい論調だけが切り取られ、都合の悪い意見は捨てられる。だから筆者が知る「真相」は、闇に葬られる前に自身の連載や書籍に書きとどめてきた。

森友学園問題が最初に報じられたのは2017年2月。当時から多くのマスコミは、「国有地の大幅値引きには安倍昭恵夫人の関与があり、その陰では『総理の意向』が働いていた」というストーリーを展開してきた。そのストーリーに沿って、設立予定だった小学校の趣意書に書かれていた校名が「安倍晋三記念小学校」であったなど、数多の報道がなされた。

たとえば、この趣意書に書かれていた小学校名が「安倍晋三記念小学校」ではなく、実際には「開成小学校」であったことをご存じだろうか? この情報は昨年12月22日付『朝日新聞』で報じられたが、それまで「安倍晋三記念小学校」という誤った情報は半年以上も放置され、それが謝罪とともに訂正されることもなかった。

■実態は「近畿財務局のチョンボである」

さて、この問題が報道されはじめた当初から、森友学園問題と安倍総理は無関係であり、実態は「近畿財務局のチョンボである」と、筆者は繰り返し述べてきた。しかし財務省の責任についての議論は、一向に起こる気配すらなかった。

そして、今年3月に財務省による決裁文書の書き換え疑惑が報道されて以降、どういうことか、「総理の意向」というストーリーがさらに強化された。3月20日付『朝日新聞』には、<改ざん把握いつ、追及「事実関係確認できるのは財務省だけ」官僚に押しつける首相>というタイトルの記事が出た。そこには記者が「使える」と判断したのだろう、筆者と同じような経歴をもつ大学教授のコメントが掲載されていたから、引用しておこう。

<公文書改ざんという危険を冒すことは、やはりよほどの政治的な圧力でもない限りあり得ないことだ。「忖度(そんたく)」の領域をはるかに超えた行為と言える。今のままでは平行線の議論が続く。佐川氏の証人喚問は当然、安倍首相の妻・昭恵氏付の政府職員(当時)の国会招致も必要だ>

そして3月27日。佐川宣寿・前国税庁長官(当時の理財局長)の証人喚問が実施された。結果はご存じだろう。決裁文書の改竄は理財局のなかだけでやったことで、官邸には報告されていなかった。安倍首相、昭恵夫人、菅官房長官、麻生財務相らの関与はすべて否定され、指示も、協議も、相談もなかったと、佐川氏は証言した。1年前から筆者が指摘し、マスコミが無視してきたことが、証人喚問で語られたのである。

この間、国会の一日の開催予算が3億円とすれば、1000億円もの税金が費やされた。証人喚問後、一部のマスコミは証言拒否が多かったことを理由に「疑惑が深まった」と報じたが、現在の法律では、佐川氏自身が刑事訴追の恐れのある事実に限られる場合にしか証言拒否は使えない。彼は自己の権利を行使しながらも、真相解明に協力したといえるだろう。

マスコミにとっては、この証人喚問も「使えない」ものだったかもしれないが、正当な権利である証言拒否について「疑惑が深まった」としている時点で、その“疑惑”は“思惑”にすぎない。

■マスコミは刺激的なストーリーを好む

佐川氏の答弁で面白かったのは、「100問を超えるのか分からないが、(答弁準備が)事実上間に合わないケースもあった」と、国会質問に事実上、対応できていなかったことを明かしたことだ。

もちろん、これは、佐川氏本人がいうように言い訳にはならない。しかし、ノンキャリア中心の理財局国有財産部局で国会想定対応ができなかった可能性は高い。

筆者にも経験があるが、国会質問が100問を超えると、事前準備ができにくくなる。とくにノンキャリアの場合には国会対応に慣れていない。そして、佐川氏自身も国有財産業務はそれまで未経験であり、土地勘がない。そうしたなかで、答弁ミスが生まれたと考えるほうがより合理的である。

しかし、マスコミは実務がわからないので、“疑惑”というストーリーを好む。事実はシンプルなのに、それでは面白くないと感じるのか、より刺激的な展開にもっていこうとしがちだ。

■財務官僚は政治家に忖度するような存在ではない

「総理の意向」という“疑惑”を報じるマスコミには、「総理の責任を問う」という“思惑”がある。これにだまされてはいけない。世間には「安倍叩き」を期待するがあまり、犯罪に手を染めた人に過剰な期待をする人たちがいるが、それでは本末転倒だ。

今回の問題の根底にあるのは、財務官僚のおごりである。財務官僚は政治家に忖度するような存在ではない。むしろ政治家をコントロールする存在だ。内閣人事局ができたことで官僚は官邸を忖度せざるを得なくなった、というストーリーもよく聞かれるが、財務官僚には当てはまらない。たとえば内閣人事局ができて以来、天下りを含めて財務省の意向に反した人事は行われていないからだ。

私が1年前から「森友問題は近畿財務局のチョンボである」と言ってきたのは、「総理の意向」ではなく、財務官僚のおごりによって起きたことだとわかっていたからだ。より深刻な問題は、政治的な圧力がなくても、公文書の改竄という犯罪が起きてしまったことなのだ。

■若者が右傾化したから安倍政権は選挙で勝った?

高橋洋一『なぜこの国ではおかしな議論がまかり通るのか』(KADOKAWA)

“疑惑”は問題の発端にはなっても、攻撃や断罪の理由にはならない。一方で“思惑”は、たどり着こうとしている結論や目的がはっきりしている。強い“思惑”に支配された議論は、「~べきだ」という言葉で締めくくられる。そういう話を筆者は「べきだ論」と呼んで、なるべくかかわらないようにしてきた。

筆者は元数学者だから、数字による客観的な裏づけがない話は鵜呑みにしないようにしている。しかしここ数年、「べきだ論」で展開する「おかしな議論」が、あまりにも増えた。「フェイクニュース」という言葉を頻繁に耳にするようになったという実感は、一般の人にもあるだろう。

さすがに「物言い」の手をあげておかねばならない、という問題意識から、拙著『なぜこの国ではおかしな議論がまかり通るのか』(KADOKAWA)という新刊を上梓したのである。

■この国の「おかしな議論」を助長する人たち

無知や不勉強や悪意で「おかしな議論」をしている論者のなかには、学界や業界内で権威とされ、社会に対して影響力を及ぼしている人も多い。筆者の得意分野でもあるマクロ経済分析に関しても、間違った分析と当たらない予測ばかりを繰り返している御用学者やエコノミストが山ほどいる。間違っても謝らない専門家たちと、彼らを都合よく使い続けるマスコミが、この国の「おかしな議論」を助長している。

しかし経済政策にしても、内政・外交にしても、「おかしな議論」に振り回され、時間を浪費しているうちに、ほんとうに行うべき真の議論が後回しにされている。北朝鮮問題などの国際情勢一つとっても、目まぐるしく状況が変わるなかで、「おかしな議論」に足をすくわれていては、間違いなく日本の国力は弱退化してしまう。

筆者は海外のメディアも日常的にチェックしているが、日本が抱える問題について、日本のマスコミ以上に的確な論考が報じられるケースも少なくない。たとえば、昨年10月の衆議院選挙で安倍政権が勝利した理由にしても、マクロ経済理論の裏づけを知っている欧米メディアは「金融緩和が継続された結果である」と正しく分析していた。一方、日本では「若者が右傾化した結果」と論じた新聞まであった。見識を疑わざるをえない。拙著でも分析しているように、内閣府の「外交に関する世論調査」を“思惑”なしにきちんと分析すれば、「若い世代は右傾化していないが、自民党支持が強い」という結論を、きちんと導くことができる。

フェイクを見破るのは、決して難しいことではない。正しい前提から始めれば、誰でも「おかしな議論」を排除し、正しい未来を見通すことができるはずである。

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高橋洋一(たかはし・よういち)
政策工房会長、嘉悦大学教授
1955年東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。80年大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞。

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(嘉悦大学教授 髙橋 洋一 写真=時事通信フォト 撮影(加藤氏)=Shu Tokonami)

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