卑屈なオジサンは"50代でも謙虚"に話す
プレジデントオンライン / 2018年5月10日 9時15分
※本稿は、福田健『話し方の「加齢臭」』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■“謙虚”おじさんが嫌がられる理由
「卑屈」っぽい話し方になるきっかけは人それぞれですが、多くは年齢による知力、体力、瞬発力の衰えが原因です。
加齢が原因で、卑屈な言い方になったなと思ったことやきっかけはありますか? という質問をしたところ、
「若い頃に比べて頭の回転が遅くなり、動きも緩慢になり、以前のような仕事能力は、いまや発揮できない自分に気付きはじめたとき〈オレより若いヤツの方がいいんじゃないの?〉と思いました」(運輸業/管理職/54歳)
「もう年だからできないのでは? という気持ちと、まだやれるかな、という気持ちの間を揺れ動いています」(広告/営業事務/58歳)
「もう年だから体がついていかないよ、と言ってしまっている」(不動産/営業/52歳)
という返答でした。
「卑屈臭」が漂う最初のきっかけは、自分のできないことを認めて、「私はもう年だから……」「物忘れが多くて……」と、相手に迷惑をかけないように話しているのですが、やがて、それが日常的な口グセとなって、卑屈臭になってしまうのです。
「卑屈臭」の場合、そもそも初めから卑屈という人はいないはずです。なんらかのきっかけとなる出来事、経験を経て、「卑屈」になるのです。
言ったこちらは何の気なしでも、言われた相手はどう答えてよいか困ってしまいます。
例えば「年だから疲れちゃってね」と言われた場合、「お疲れのところすみません」など、おわびしなくてはいけなくなります。
■自信を失ったことが原因で
システム会社のAさんの例を見ていきましょう。
Aさんは長年勤めた会社で定年をむかえましたが、再雇用制度を使って継続して働くことを選択しました。再雇用のためそれまでの管理職ではなく、給料も新入社員並みに引き下げられました。
もともと管理職の立場だったことからプライドがあるため、
「一般社員並みに働いてるのにこんな給料じゃやってらんねーよ」
「オレなんか老体にむち打ってやってんのに、若いのはなにしてるんだよ」
といった不平不満を漏らしていました。
ところが、いざ社員からお願いごとをされると急に卑屈な態度を取り始めたのです。
「オレも年なんだし、そんなこと言われてもできないよ」
「若いやつのほうがうまいんじゃないの?」
「オレにこんなことできるかな?」
といった言葉が口グセとなっていきました。
Aさんは長年働いた経験やノウハウがあるので、他の社員は頼ろうとしたのですが、そのような発言をされると仕事を任せることもできなくなります。Aさんは社員の信頼を失っていくのとともに、自分自身のプライドも失っていってしまったのです。
このAさんの例のように、初めから卑屈という人は少ないでしょう。しかし、知力、体力の衰えを感じ、若いころと同じパフォーマンスを上げる自信がなくなり、「もう年だから」と卑屈になっていってしまうのです。
■必要以上の“低姿勢”は警戒される
「謙虚」「低姿勢」は一般的には良いこととされています。しかし、それも度が過ぎると相手に嫌な気分を味合わせることになるのです。特に立場が上の人で度が過ぎる人は気を付けなければなりません。
例えば、何かの役割に任命された際に、「私でいいですか」と周りの人に確認を取るのであれば、それは謙虚な態度と見られます。
しかし、「私『なんか』でいいですか」と、「なんか」という言葉が入るだけで、急に卑屈っぽく聞こえてしまうのです。
この言葉の裏には、
「私は期待に応えられないかもしれないけど」
「私にはできないかもしれないけど」
「私は能力が低いけど」
と、期待に応えられなかった時の言い訳が含まれています。そして、相手の期待値を下げ、必要以上の負担を負いたくないという思いが透けて見えるのです。
どんどん新しい仕事ができ、情報も新しいので、どこか加齢による引け目があって、先に一つのよく言えば謙虚、悪く言うと卑屈のガードを作るんですね。
低姿勢、謙虚は決して悪いことではありません。しかし、その言葉の裏に、自信のなさや言い訳が含まれている場合、低姿勢すぎて嫌われることになってしまいます。
■“老化”は成熟と捉えてもらうためには
人は誰でも、「いつまでも若々しくてできる人」と思われたいし、そうありたいものです。しかし、自然の摂理で、なかなか思うようにはいかなくなってきます。
とはいえ、老化=衰えと捉えるのは、一面的な見方でしかないのです。年齢を重ね、経験を積むことで、人は多くのことを学び、人として成熟をしていくのです。特にコミュニケーションは経験を積めば積むほど、相手という存在を知り、言葉を覚え、活用していくものです。
変化のスピードが速く、「十年一昔」はいまや「三年一昔」と言われる時代です。
とはいえ、「変わらないもの」は存在し、相手に思いを伝える手段の話し方は、原理原則があって、いまでも変わらないものが多いのです。
そのことを熟知しているのが、年配者なのです。
せっかくの成熟した経験を、言葉ひとつで、「卑屈」にしてしまうのは、自分を低く見積もりすぎているのではないでしょうか。
「もう年だから」
「毎日疲れてね」
「オレなんかでいいの?」
「ダメダメできるわけないだろう」
「もうおじさんだから、おばさんだから」
「どうせオレが言っても聞いてくれない」
「ごめん、わるいね、すまないね」
「もう時代が違うから」
----------
話し方能力向上協会 代表理事
1961年中央大学法学部卒業、大和運輸(現・ヤマト運輸)入社。1967年、言論科学研究所理事を経て、1983年、話し方研究所を設立。会長職を経て、現職。自治大学校講師。従来のコミュニケーション手法が通用しなくなりつつある状況の中で、世代や価値観の相違を超えた、新しいコミュニケーションのとり方について提言、提唱している。『人は「話し方」で9割変わる』など著書多数。
----------
(話し方研究所会長 福田 健 写真=iStock.com)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
『「超」整理法』シリーズで知られる野口悠紀雄が、シニアになったら文章は「音声入力」で書くことを薦める理由
集英社オンライン / 2024年4月16日 8時0分
-
「うわぁ、教養なさそう…」周囲がドン引く“40代女性の口グセ”3大NGはコレ!(前編)
OTONA SALONE / 2024年4月7日 18時30分
-
創業116年 新たな挑戦を続ける貝印の未来を担う、総勢26名が入社 2024年度KAIグループ新卒新入社員入社式を開催 2024年4月1日(月) 貝印株式会社東京本社にて実施
PR TIMES / 2024年4月2日 15時45分
-
元気な妻についていけない夫、何もできない夫から解放されたい妻…更年期を迎えた夫婦が円満を保つ秘訣とは【医師が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月26日 11時15分
-
賃上げしても「給料安い」と憤る若者の何が問題? 経営者と従業員との間にある「情報の非対称性」
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 10時30分
ランキング
-
1東京円一時1ドル154円87銭、34年ぶり円安水準を更新…経団連会長「円安過ぎる」
読売新聞 / 2024年4月23日 20時39分
-
2いなば食品、大炎上でも「不買運動」が起きぬ理由 キリンはあれだけ盛り上がったが…どこに違いが?
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 18時10分
-
3パナ、電動自転車発火の恐れ バッテリー14万個リコール
共同通信 / 2024年4月23日 18時32分
-
4「配属ガチャ」対策を進める企業が、一度立ち止まって考えるべきコト
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月24日 8時15分
-
5【要注意】自宅に「エコキュートの無料点検をします」と突然の来訪! 悪徳業者の「詐欺」の場合もあるの? 正規業者との見分け方や注意点を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月22日 5時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください