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女子大生タレントが法律で守られない理屈

プレジデントオンライン / 2018年5月8日 9時15分

写真=iStock.com/BartekSzewczyk

■フリーランスを守る法律はあるのか

2018年2月、公正取引委員会が「人材と競争政策に関する検討会」が報告書を発表した。この報告書は、フリーランス市場に独占禁止法を適用することを提言している。

フリーランスの保護になぜ独占禁止法が出てくるのか、疑問に思う人もいるだろう。

企業に雇用される労働者は、労働基準法などの労働関係法規で手厚く守られている。労働者が保護されるのは、企業の指揮命令下にあるからだ。一方、フリーランスは個人事業主で、発注元企業とは事業者同士の対等な関係。よって労働関係法規の対象外になる。

ただ、個人事業主だから全く保護されないというわけでもない。弱い立場に置かれがちなフリーランス(中小零細企業を含む)は、下請法によって保護されている。

■芸能プロダクションとモデルの契約をしたが…

しかし、下請法が適用されるのは発注元企業の資本金が一定額以上の場合に限られる。フリーランスの契約に詳しい桑野雄一郎弁護士は、かつて下請法が適用されない規模の芸能プロダクションと、消費者契約法を使って争ったことがあるという。

「街でスカウトされた女子大生が、芸能プロダクションとモデルの契約を結びました。レッスン代としてお金を払ったものの、仕事はもらえなかった。『女子大生はアマチュアの消費者。契約は無効だ』と主張しましたが、裁判所からは『個人事業主だ』と退けられました」

フリーランスは労働者でも消費者でもなく、下請法の適用も受けづらい。まさに法の保護の網から抜け漏れた弱い立場だった。

■買い叩く企業は、独禁法の対象に?

ただ、現行でもフリーランスを守れる法律がある。取引上、優越的地位にある者が取引先に不当に不利益を与える行為(優越的地位の濫用)を禁じた独占禁止法だ。

「独禁法の条文は汎用性が高く、フリーランスの契約にも適用が可能。これまで公正取引委育会は動いてきませんでしたが、今回の検討会の報告を機に、パブリックコメントを経てガイドラインをつくり、悪質なケースを取り締まっていくでしょう」

ガイドラインの中身は現時点で不明だが、報告書からある程度の方向性は読み取れる。

たとえば報告書では、発注者の都合で代金の支払いを遅延したり減額することを問題視している。また、必要経費を下回る金額で発注するなど、著しく低い対価での取引を求めること、さらに合理的な理由なく競合他社との取引を長期間制限する契約を結ばせることも、独禁法上の問題になるとしている。

「外注を安く買い叩くなど、フリーランスの犠牲のうえであぐらをかいてきた企業は要注意です。公取に摘発されると、企業名を公表されて社会的に批判を集めるだけでなく、ビジネスモデルの急な変更ができずに事業そのものが立ち行かなくなる恐れもある。いまのうちから対応すべきです」

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 桑野雄一郎 写真=iStock.com)

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