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「トランプは予測不能」は明らかに間違い

プレジデントオンライン / 2018年4月27日 15時15分

17年11月に訪中した米・トランプ大統領(左)と中国・習国家主席。(時事通信フォト=写真)

■トランプを突き動かす最も大きな要素は「選挙」だ

多くの有識者は「トランプ大統領の言動は予測不能だ」と評して、同大統領の言動に関する分析を放棄していることが少なくない。そのため「有識者のトランプ評が根底から間違っており、実は高確率でトランプの行動は予測可能だった」と言ったら、多くの読者は驚くのではなかろうか。しかし、現実にトランプの言動は一定の法則に従って動いていることは明らかだ。

トランプを突き動かす最も大きな要素は「選挙」だ。トランプは選挙に強くはなく、議会交渉を首尾よく運ぶ手腕も不足している。そのため、与野党で議席数が拮抗している議会上院では、共和党内ですら保守強硬派と、実質的に民主党と同じ投票行動を行う穏健派の双方が存在している現状の中で、2017年中は何度も苦杯を喫した。

また、雲行きが怪しいロシアゲート問題の捜査状況などに鑑み、自らへの弾劾を避けるためには最低でも中間選挙における上院での勝利を得ることは必須の状況だ。つまり、トランプが任期中に歴史的偉業を成し遂げ、なおかつ自らの立場を維持するには、中間選挙で勝つ以外に道はない。

そのため、トランプは中間選挙での上院での勝利を政権の至上命令としてきた節がある。そこで、まずはトランプ政権は中間選挙の前年である17年中に調整が難しい保守的な課題(減税政策、最高裁判事任命、ネット中立性問題など)を片づけて共和党内からの支持を確固たるものとした。そのうえで、18年に入ってからは上院の勝敗を分ける改選州にインパクトがある製造業を中心とした保護主義政策やインフラ投資政策に注力している。また、経済政策に関する支持率は世論調査上で高い評価を得ているものの、外交政策への支持率が極めて低い状況を打破するため、年明け早々から中国との貿易戦争や北朝鮮・イラン問題などで積極的な行動に打って出るようになり、自らの外交政策の支持率向上に有効でなかったティラーソン前国務長官やマクマスター前大統領補佐官を更迭している。

上記の一連の流れは、米国における選挙動向や議会情勢に関して基本的な知識を持ったうえで、米国の世論調査状況を見ていれば誰でもわかることだ。トランプの言動はエキセントリックなものもあるが、上記の選挙戦略上の基本路線を一度も外したことがない。

■濫発された大統領令・覚書が意味すること

さらに、トランプの行動予測を歴代大統領よりもわかりやすいものにしている要素がほかにもある。それは大統領就任直後から濫発された大統領令・覚書である。トランプ大統領は、大きな行動を起こす前には必ず大統領令・覚書で事前の調査を命じる傾向がある。

たとえば、18年になってから唐突に開始されたかのように見える中国などとの関税合戦についても同様だ。鉄鋼・アルミに関する関税は17年7月に安全保障と製造業のサプライチェーンに関する調査を命じる大統領令が出されており、それを受けて18年2月に商務省が鉄鋼・アルミの保護の必要性に関するレポートを提出している。つまり、鉄鋼・アルミへの関税は17年からの既定路線として準備されていたもので、2月以降はそれが実際に公表される時期だけの問題となっていたといえる。

また、中国との一連の不公正貿易や知的財産権等を巡る争いも17年に大統領令で調査と対抗策の立案をするよう指示しており、年明け早々に中国の世界貿易機関(WTO)加盟後の行動を批判する文書を米通商代表部(USTR)が公表し、ソーラーパネルや洗濯機への関税措置がジャブとして行われ始めていた。トランプは事前に堂々と弾込めしていた材料を選挙のタイミングに合わせて使ったにすぎないのだ。

国内政策に関してはトランプが任命した閣僚人は極めて特徴的な背景を持つ人々が多く、詳細は割愛するものの、政権の閣僚の経歴・実績を見ればエネルギー政策、環境政策、教育政策、社会保障政策の目指す方向は一目瞭然だ。

「トランプは予測不能」という評価は明らかな誤りで、公開情報をチェックするだけで多くのことが予測可能だ。これほど多くの足跡を残し、動機と行動がわかりやすい米国大統領は稀有な存在であろう。(文中敬称略)

(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉 写真=時事通信フォト)

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