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なぜあなたの話は"1分で終わらない"のか

プレジデントオンライン / 2018年5月29日 9時15分

「1分で話せないような話は、どんなに長くても伝わらない」。ソフトバンクの孫正義社長に「プレゼンの達人」として認められ、ヤフーアカデミアの学長を務める伊藤羊一さんはそう断言します。それでは短く話すには、なにが必要なのでしょうか。伊藤さんは「データでも感想でもなく、まずは結論を話しましょう」といいます――。

※本稿は、伊藤羊一『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■「てっぺんのないピラミッド」になっていないか

1分で話せない人、頑張って話しているのにさっぱり伝わらない人は、「てっぺんのないピラミッド」になっています。

たとえばよくあるのは、

「Aさんもいいと言っていました」
「お得意さんも喜んでいました」
「実際に数字も上がっています、以上」

で終わる人。聞いている人は、「で?」ってなります。

ロジカルシンキングを多少なりとも勉強した方は、ピラミッドストラクチャーを学んだ方も多いと思います。

初めて聞く方のために簡単に説明すると、話には結論と根拠があり、その結論を一番上に、根拠をその下に並べたものです。根拠は複数あることが多いので、三角形、つまり、ピラミッドのような形をしているので、「ピラミッドストラクチャー」といいます。

■データや事実を伝えられても「で?」となってしまう

次の2つの言葉を見比べてください。

【A】
この商品はお客さんが絶賛していました。
販売店も受注に前向きです。
実際に数字も上がっています。
【B】
この商品は増産すべきではないでしょうか。

Aの人は、ピラミッドでいう「根拠」だけがあり、結論がありません。

「Aさんがいいと言っていた」「数字が上がっている」など事例やデータをいくら重ねても、相手はこのデータや事実から、何を読み取ればいいのかまったくわかりません。だから、「で?」となってしまうんです。

逆にいえば、このピラミッドがしっかり組めれば、話が長くなったり、伝わらなかったりすることはなくなります。

「これが結論です」
「理由はAでBでCだからです」
「わかった、了解」

これだけです。

「1分で考えよ」の根幹はここにあります。まず伝えようとすることの骨組み、つまり、結論と根拠のセットを構築します。これができれば驚くほど説得力を増す伝え方ができます。

そのキーワードは「ピラミッドでロジカルにストーリーを考えよう」。

「ロジカルに考える」と書くと難しそうですが、そんなことはありません。意味がつながっていればロジカル、それだけでかまいません。型にはめて、「ロジカルに」考える癖をつけましょう。これができれば、確実に説得力が増す話をすることができるようになります。

■「考える」とは「結論を導き出す」ということ

さて、ビジネスマナーなどでは、よく「結論を先に」と言われます。

では、結論ってなんでしょうか? たぶん、みんな「結論を先に」ということはわかっているのに、なぜか、

「売上が伸びています」
「今年の展示会はEVが増えていました」
写真=iStock.com/g-stockstudio

などという話をしています。むしろ、こうしたことが結論だと思われているのかもしれません。でも、これらを伝えても事実の羅列となり、結局、「てっぺんのないピラミッド」になってしまいます。

たとえば、「分析したのですが、Aはこんな状況で、Bはこんな状況なんです」と、ただ伝えても相手はそこから何を読み取ればいいのかがわかりません。「現段階ではAのプランを優先させるべきです」と結論を言ってから、「分析したのですが、Aはこんな状況でBはこんな状況で、Aのほうが○と×と△の点で優れています」と加えるとよいでしょう。

「結論」については間違ってとらえている方も多いように思います。これについて、大前研一さんは「考えるとは、知識と情報を加工して、結論を出すことだ」と説明しています。

知識と情報というのは、いずれにせよデータです。「知識」とは「すでに自分の中にあるデータ」、「情報」とは「自分の外にあるデータ」です。

つまり、「考える」とは、「自分の中にあるデータや自分の外にあるデータを加工しながら、結論を導き出すこと」なのです。

■「曇りの後は、大抵雨になる」と同じこと

こう書くと難しいようですが、私たちは普通にこれをやっています。

たとえば仕事をしていて眠い時。「情報」として「あれ、僕は今、眠いぞ」と気づく。でも、寝てはいられない。「知識」として、「カフェインをとると、眠気がとれる」ということを知っている。で、この2つの、「情報」と「知識」を頭の中でがっちゃんこして、「よし、(カフェインが入っている)コーヒーを飲もう!」と決めて、行動するわけです。

もう1つ例をあげると、曇っている時、「情報」として、曇っているぞというのがわかる。そして「知識」として「曇りの後は、大抵雨になる」と知っているわけです。

で、この2つを掛け合わせる(加工する)と、「どうも、雨が降りそうだ」となり、「では、傘を持って行こう!」と決めて行動する。これが、結論ですね。

これが、「考えない」とどういうことになるか。「曇っているな……」「雨が降りそうだな……」で終わる。そして、外出して雨に降られ、コンビニエンスストアで傘を買うはめになります。私は特に朝は「考えていない」ことが多いので、しょっちゅう外で傘を買っています。

■あなたが伝えたい結論は何か

話を伝え方に戻しましょう。まず何より、きちんと結論を出しましょう、表現しようということです。

伝えるべきことの結論は何か。聞き手に受け入れてほしいことは何か。これをはっきりさせましょう。

伊藤羊一『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(SBクリエイティブ)

考えてみれば、伝えたいことがあるから伝えるのですから、その結論がない、というのはおかしいのです。しかし、実際には、そんな当たり前のことができていません。最初に「結論は何か?」「相手をどこに動かしたいのか?」と明確に決めずに話し始めて迷走したり、資料を作り始めて、「結局、何?」というような資料になってしまったりすることがあるんです。

そして準備を始める段階ではしっかり結論を明確にしていたとしても、準備しているうちに、あれやこれや言いたいことが出てきて、それを加えているうちに、何だかよくわからないストーリーになっていくこともあります。完璧にしようと頑張るうちに、そもそもの結論が見えにくくなってくるわけです。

また、これは日本人に特徴的かもしれませんが、結論を明確にすることで、その結論に反対の立場をとる人が傷つかないだろうかとか、自信がないところを突っ込まれたらいやだから、ちょっとぼやかしておくかとか、余計なことを考えてしまいがちです。すると、どんどん何が結論なのか、賛成なのか反対なのかわからなくなってきます。

この場で、あなたが伝えたい結論は何か。これをはっきりさせましょう。それが「考える」ということです。

結論を出していくためには、「自分に問いを立ててみる」のがよいと思います。まずはピラミッドの下にある「根拠」を並べて、「だから何?」と問うてみる。そして出てきた「答え」に対して「ファイナルアンサー?」「本当か?」と問うてみましょう。

■「だから何?」「ファイナルアンサー?」「本当か?」

「考える」というのは、結論を出す行為だと申し上げました。人間の頭はそう賢くはないですから、頭をなんとなく動かしていると、いつまでたっても結論が出ません。

これは「悩んでいる状態」です。仕事をしていると、「これは悩ましい」とか「少し悩んでしまう」という状態になることがあるのではないでしょうか。

ただ「悩む」と「考える」は、明らかに違います。「悩む」は考えが頭の中をぐるぐる回って、結果、無限ループにはまっている状態というイメージです。

「悩んで」いても結論は出てきません。この「無限ループ」を避けるためにも、機械的に「考える」=結論を出す習慣をつくるのです。そのために自分に問う。黄金の質問は、「だから何?」「ファイナルアンサー?」「本当か?」です。

■「売れます(だからやりましょう)」には方向がある

なお、企画を通す場合などにおいて、「こういう企画です」ということと「これは売れます」ということと、どちらが結論なんだ?と思われませんか?

正解は「これは売れます」が結論です。もっといえば、「これは売れます。だからやりましょう」が結論です。結論とは、相手に動いてほしい方向を表したものです。

「こういう企画です」という言葉は、方向を表していません。いいのか悪いのか、好きなのか嫌いなのか、売れるか売れないか、わかりません。

「売れます(だからやりましょう)」には方向があります。売れるか、売れないかという選択肢がある中で、「売れます」と言っています。

プレゼンは相手に「動いてもらう」ために行うもの。だから、どちらに向かうのか、動いてもらう「方向」を出すのが結論です。

■「頑張ったこと」を話してはいけない

さて、ここでは、私がさまざまな人の話を聞いていて、「これを言っちゃうから長くなるんだよね」ということをまとめます。

×頑張った「プロセス」を話す
私は今年と昨年の資料を検討したのですが、それだけでは足りないと思い、 10年間分の資料を前任の山田さんからもらって調査した結果、全体としてはA案を押していくべきではないかと思いました。

報告するにせよ、提案するにせよ、私たちはつい「自分が頑張ったこと」を話し始めます。でも、それは、相手が聞きたいことでしょうか?

たとえ内心、「2年くらいのデータを見ても正しいことはわからない。信憑性を高めるために言うんだ」と思っていても、いろいろ話すとかえって伝わりません。

あなたは頑張ったことを認めてもらいたいかもしれませんが、多くの場合、相手は、すぐにあなたの結論を聞いて判断したいと思っています。特に会社で上司に説明する際にはよく見られますので注意してください。

×気を遣いすぎる
そうですね。Aさんのプランもよかったですね。資料もわかりやすく、説明も丁寧でしたし。でも、Bさんのプランはよくてですね……。

会議への参加者一人ひとりに気を遣いすぎて、発言しても、結局何が言いたいのかわからない人もいます。後で説明しますが、ビジネスパーソンにとって、ポジションを明確にすることは大事なのです。そうでないと頼りなく思われてしまいます。

×自分の意見とは違うことを言う
私はA案を押していますが、実はA案にはこんな欠点もあって、その分はB案のほうが優れています。その点、A案は心配もあるのですが……、でもそれを覆せる強みもあると思うんです。
×笑いを入れる
この提案ですが、おおむね評判がよくて、うちの大家さんもいいって言ってくれたんですよ。

たまに間違った方がいるのですが、特にプレゼンの場では、笑いはいりません。ビジネスで「おもしろい」のは、ロジックです。相手は、あなたのロジックを聞きにきているのです。たまに静かだからと笑いを入れてうまくまとめる人もいますが、大抵は、しらけて終わりです。

繰り返しますが、まずは「結論」です。データでも感想でもなく、「結論」です。その後、その結論に至る根拠を述べる。これなら大抵1分あれば伝わるでしょう。

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伊藤羊一(いとう・よういち)
ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長
株式会社ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年日本興業銀行入行。プラスマーケティング本部長などを経て、 2015年にヤフーへ。ソフトバンクアカデミアでは孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を収めた経験を持つ。

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(ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 伊藤 羊一 写真=iStock.com)

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