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日本人が海外で活躍するための4つの習慣

プレジデントオンライン / 2018年6月14日 9時15分

撮影=千葉格

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門オリンピック・マルセイユで不動の地位を確立、世界の注目を集めるサッカー選手になった酒井宏樹選手。順風満帆なサッカー人生に見えるが、彼はサッカー選手に不向きな「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主。そんな彼がどのように「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、世界で活躍できるようになったのか――。

※本稿は、酒井宏樹『リセットする力』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■【習慣1】適応力を磨く

海外で活躍するために必要な要素のひとつとして「適応力」が挙げられるかと思います。僕は2016年の夏に、マルセイユへ移籍するため、ドイツからフランスへ渡る決断をしました。

海外で成功を目指すのであれば、その国を知る、その街を知る。まずは、それが適応力を磨く第一歩である。僕はこの教訓を、海外挑戦を通じて学びました。日本でも「郷に入れば郷に従え」という諺(ことわざ)がありますが、自ら望んでフランスという地を選んだわけですから、自分がフランスの文化に合わせるのは当然です。

にもかかわらず、「この国の文化にはなじめない」と自分がうまくいかない理由をその国や文化のせいにするのであれば、海外ではなく日本に帰ってプレーすべきだと思います。

先ほどの教訓に出てきた「その国を知る、その街を知る」ためには、そこに暮らす人々との会話は欠かせませんから、やはり言葉は重要です。

また、会話だけでなく、言語というのは、その国の文化や、そこで生活する人々のルーツを知ることにもつながると僕は考えています。どこから来たかがわかれば、どこに向かっているのかも理解できるように思います。

フランスに来る前はドイツでプレーしていたので、そのときにドイツ語も勉強していましたが、異なる言語を話せるようになると、新しい世界が開かれていくイメージがあって、少し大げさかもしれませんが、生まれ変わるような新鮮さみたいな感覚があったことを覚えています。

まだ僕は流暢(りゅうちょう)にフランス語を話すことはできませんが、毎日勉強しているので、周りが何を話しているのかまでは理解できるようになりました。

■【習慣2】変化をプラスに捉える思考習慣

当たり前ですが、日本と海外では文化における違いはたくさんあります。最初はその違いに戸惑い、ストレスを感じることもありました。でもいまの僕は、その違いをストレスとしないで、できるだけポジティブに考えてみる思考の工夫ができるようになりました。

ドイツでは「日曜日は家族で過ごす日」という考えがあるため、日曜日にはほとんどのお店がお休みになります。ドイツに行ったばかりの頃は、せっかくの日曜日に買い物できないことがストレスになっていました。

しかし、ハノーファーはとても住みやすい街で、治安は良く、サポーターも優しく接してくれる人ばかりでした。その環境、その場所の良い部分に目を向けてみると、「日曜日にお店が営業していない」という不満は、不思議と気にならなくなっていきました。

また、日本では何事も正確なので「荷物があと10分で到着する」となれば10分できっちりと届きますが、フランスでは10分以上待っても届かないことが多いのです。

そこで荷物が届いたとき「10分と言ったのに20分もかかったじゃないか!」と怒鳴るようであれば、フランスで生活していくのは大変だと思います。

「10分ってさっき言っていたけど、多分20分はかかると思っていたよ」と笑って相手に伝えるくらいがちょうどいい。そういった意味では、僕はフランスに適応して「気長に待つ」ことができるようになりました。

僕がドイツからフランスへの移籍を決断したように、誰の身の回りにも環境の変化は起こるものです。

たとえば、転勤、社内の異動、転校、クラス替え、引っ越し……。その変化をストレスに感じるより、転校して新しい友達ができる、異動で新たなプロジェクトに参加できる、引っ越した先の街で好きなカフェを見つけるなど、変化自体をプラスに捉え、あとは新しい環境を楽しむ余裕が少しあれば、適応力は磨かれていくと思います。

撮影=千葉格

■【習慣3】やらない自分を正当化する言い訳をしない

マルセイユでは、日々の練習や試合からチームメートの能力の高さを強く感じるようになっています。

ハノーファー時代にも、FCバイエルン・ミュンヘンやボルシア・ドルトムントのような、リーグ上位の世界的な強豪クラブとの対戦はありました。しかし1シーズンにホームとアウェーの2度の対戦だけでは、彼らの能力を感じる機会は少ないですし、どうしても対戦相手という目線で見てしまうため、力の差があっても彼らには負けたくない、力の差を認めたくないという気持ちが働いてしまいます。

しかし、マルセイユに来て、フロリアン(・トヴァン)やディミトリ(・ペイェ)、その他の各国代表選手のハイレベルなプレーを毎日目の当たりにしていると、彼らのような特別な才能と自分との実力差は相当な開きがあると認めざるを得ない。

■仲間に対して「かなわない」と感じることは素晴らしい

そこで「彼らにはかなわない」「彼らを越えることはできない」と割り切るというか、いい意味で切り替えるのは、自分としてはありだと思っています。マルセイユという大きなクラブに来て、サッカー選手として上の景色を見ることができたうえで「ああ、ワールドクラスの選手って、本当にすごいんだな」と実感できました。

それで悔しいという気持ちが起こらないのは、自分の持つサッカー選手としての能力の最高到達点に来たのかなという思いがあります。

日本人の若いサッカー選手のなかには「自分が世界でどの位置にいるかを知りたい」と話す人がいます。サッカー選手として、自分の位置を知ることはすごく幸せなことですし、だからこそ海外挑戦はとても意味のあることです。

もちろん応援している人たち、ファン、サポーター、家族、友人は、いまの僕に対して「諦めるな」「努力すればもっと上に行けるよ」と叱咤激励(しったげきれい)してくれると思いますが、自分なりにもがきながらサッカー選手としての最高到達点まで這い上がってきて、仲間に対して「かなわない」と感じることは単純に素晴らしいことであり、まさに選手冥利(みょうり)に尽きることだなと思っています。マルセイユというクラブが、僕の知らない世界、まだ見たこともない世界まで連れてきてくれたわけですから。

サッカー選手個人として、できることをやり尽くし、そのうえでフロリアンやディミトリといった世界最高峰レベルには「かなわない」と感じるからこそ、世界トップレベルまで来られた事実に自信が深まりました。だから、これは「諦め」という感覚とはまったく違います。

撮影=千葉格

■【習慣4】自分の価値観を押しつけない

マルセイユの右サイドでコンビを組むフランス代表のフロリアンは、事あるごとにフランスのメディアに対して僕を称賛するコメントを出してくれます。それは、相手を尊重する僕の意思が彼にしっかり伝わっている証拠だと感じて、本当に嬉しいです。きっとフロリアンも「ヒロキ、伝わってるぜ」という意味合いでコメントしてくれているんだと信じています。

柏レイソル時代にコンビを組んでいたレアンドロ(・ドミンゲス)は、僕がハノーファーに移籍したあとのインタビューで、「私と酒井は良いコンビだった」と言ってくれていたようですが、それを聞いたときは本当に嬉しかったです。

■世の中に自分とまったく同じ価値観を持つ人はいない

僕と彼ら2人は言葉も通じなければ、国籍も、育った文化も異なります。彼らとは当然価値観の違いがありました。

酒井宏樹(著)『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』(KADOKAWA)

「そもそも価値観が違う相手とは本当の意味でわかり合えないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、それは誤解だと思います。

フロリアンが「僕の活躍はヒロキのおかげ」とコメントしてくれるのも、レアンドロが「私と酒井は良いコンビだった」と言ってくれるのも、お互いにわかり合えた結果だと信じています。

世の中に自分とまったく同じ価値観を持つ人は存在しません。

生まれた環境はもちろん、見た目や性格、歩んできた道のりも違うわけですから、価値観はそれぞれ違って当たり前なのです。そのため、相手が誰であろうが、まずは価値観が違うという前提に立ってコミュニケーションを始める意識が大切なように思います。

「価値観が異なる=自分とは合わない」と、こちらが一方的に決めつけてしまえば、お互いの関係性はおろか、自分自身の器も広がっていかない。

■どう歩み寄るかを考えることが大事

苦手な人がいる場合でも「あの人とはなんか合わないんだよな」と人間関係を嘆くのではなく、「自分の知らない考え方を持っている面白そうな人がいるな」とまずは前向きに捉えて、そんな相手に対して、どう歩み寄っていくべきかを考えると、いまより少しは楽しく感じるのではないでしょうか。

そうした考え方が日常的にできるようになれば、海外でありがちな人間関係のストレスはグッと減ると僕は思っています。

サッカーにおいても、これまでの自分のプレーを肯定したいがために「自分の価値観が絶対正しい」と思ってしまい、自分のサッカー観を相手に押しつけがちになる場合があります。でも、そのやり方では、押しつけられた側は、自分を否定されたように感じるので、本当の意味での信頼や連携は生まれないと僕は感じています。

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酒井宏樹(さかい・ひろき)
プロサッカー選手、サッカー日本代表
1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。ツイッターアカウント:@hi04ro30ki

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(プロサッカー選手 酒井 宏樹 撮影=千葉格)

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