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エクセルが使えれば中小企業再生は楽勝だ

プレジデントオンライン / 2018年6月13日 9時15分

写真=iStock.com/filmfoto

中小企業の経営者向けセミナーでは、ワードやエクセル、パワーポイントの“使い方”がテーマになることがある。その内容は一般企業の新入社員研修さながらだ。数多くの中小企業再生を手がけてきた三戸政和氏は、「それでも中小企業は回っている。そうした中小企業に大企業の“仕組み”を導入すれば、もっともっと儲かるようになる」という。そうした実態の一部を紹介しよう――。(第4回)

※本稿は、三戸政和『サラリーマンは300万円で会社を買いなさい』(講談社)の一部を再編集したものです。

■前近代的でも黒字の中小企業

投資ファンドを運営する私たちは、3期分の財務諸表を見れば、その会社がどのような経営状態にあるかをほぼ把握することができます。自身の会社でそれができなければ、経営者とはいえないと思うのですが、実際には、中小企業では財務諸表が読めない経営者がほとんどです。

さて、あなたは財務諸表が読めるでしょうか。「自信がない」という人は、社長になるには会計を少し勉強する必要があるとは思います。ただ、大企業で管理職をしていた人ならば、おそらく予算編成や決算で、自分たちの業界における決算数値の意味はわかっていると思います。それだけで旧態依然の中小企業の経営者より、経営スキルの面では進んでいる可能性が高いといえます。

大企業には、“仕組みの導入”に特化した担当者がいますが、中小企業にはいません。経営企画室など業務改善を促す部署自体がありませんし、そんな人を雇う余裕もありません。

そのため仕組みの導入は、社長がやるしかありません。しかし致命的なことに、社長自身がそもそもどんな新しい仕組みがあるのかを知らないのです。これまで中小企業は、親族内承継が9割以上でした。ですから社長も、大学を出ていったんどこか大きな企業に新卒で入り、ほんの数年の経験しかないままに家業を継ぐために戻ってきて入社し、10年勤めて社長になったというようなケースが、本当に多いのです。

それぞれの地域に、中小企業の若手経営者が集まる団体がいくつかあります。多くは地元貢献と、家業を継ぐ息子たちの経営者としての育成を目的に運営されています。といっても、団体によっては、ワードやエクセル、パワーポイントの“使い方”を勉強したり、アジェンダの作り方や議事運営の仕方、人前でのしゃべり方を勉強したりしています。一般企業の新入社員研修さながらの内容です。しかし、これが中小企業の社長に求められる平均的なレベルだったりするのです。

■それでも回る中小企業

そこで私が言いたいのは、「それでも中小企業は回っている」ということです。大企業で鍛えられた人にとっては、びっくりするほど前近代的で、まともな管理もされていない。にもかかわらず仕事が回り、経営は黒字で安定している中小企業がたくさんあるのです。

経営システムが改善されたら? ビジネスモデルが洗練されたら? もっともっと儲かる企業がたくさんあります。改善余地も成長余地もたっぷりあるのです。

私の投資ファンドは、このように事業内容は良いものの、経営手法や管理が脆弱な中小企業に向けて、株主としてハンズオン支援(投資先に取締役を派遣して経営を担う支援)を行い企業価値を上げることで、投資リターンを得ることを業としています。大企業の仕組みや東京の最先端で闘っているベンチャーの経営戦略や手法を地方の中小企業に取り込むだけで、その地域では、相当優秀な中小企業へと生まれ変わるのです。

つまるところ、このような潜在力のある中小企業を買い、あなたが経営しませんか? というのが、私からの提案です。

■あなたの部署が会社になったら?

三戸政和氏

まだ半信半疑の人が多いかもしれませんね。

ちょっと違う視点で考えてみましょう。ある程度の規模の企業で管理職を務めた人なら、15-30人程度のチームを率いている(いた)はずです。ならば、そのチームが会社になったと考えたら、どうでしょう。会社にするにはいくつか機能が足りませんが、それで毎年経営計画を立て、予算を執行し、売り上げを伸ばし……と、ほとんど1つの小さな会社のように回してきているはずです。

そういう人は、自分のいた業界で、従業員が同じ規模の中小企業なら十分マネジメントすることができるでしょう。以前のチームがそのまま本当に1つの会社になった、と思えばいいのです。そして、その規模のチームを運営していくためのノウハウや経験は十分にあるはずです。

なによりも中小企業を買うことの大きなメリットは、あなたが専門性を生かすことができ、勘所もわかる業界で、今、経営が成り立っている会社を設備も、顧客も、従業員も、仕入れ先も、取引銀行も、そのまま引き継ぐことができる点です。

どんな企業であれ、経営上の一番の課題は「事業が継続できること」です。きちんと利益が出ているのであれば、とりあえずは現状の業績をそのまま保てばOK。そう考えれば、マネージャー経験のある人にとって決して難しい仕事ではありません。

流れを大づかみに把握できたら、それから会社をよく見て、「よくない」「古い」と思う部分に改善の手を加えていけばいいのです。

中小企業は経営上無駄が多く、非効率であるため、業務改善によって利益率を上げやすいことが管理職であったあなたにはプラスに働くのです。

■“当たり前の改善”を実直に

商品ごとの利益管理や在庫管理、従業員の労務管理等が甘い、昔からの取引関係から相見積もりを取ることもなく高額で支払い続けている、売れば売るほど赤字になる商品を何の疑問も持たずに一生懸命売っている、年に数個出るか出ないかの在庫を大量に保管したままになっている……などなど、大企業では考えられないことがいくらでもあるのです。

そこで、前の会社で使っていた管理システムを入れて業務を効率化する、仕入れ先と交渉して原価を下げる、IT管理を導入するなど、大企業がやっている“普通のこと”を実行するだけで、たちまち効率化と収益向上が図れます。業績も大きく改善する可能性が高いのです。

さらには、これまでやっていなかった新規営業を当たり前に実行するだけで、ほとんどのところが誰もがうらやむ利益を創出することができるようになります。私の知り合いの投資ファンドが経営する中小企業では、長年自動車メーカーAの下請け“だけ”をしていたのですが、投資ファンドが主導して、自動車メーカーBに同じ製品を供給したところ、2倍の値段で売れるようになった、という事例もありました。

このように、ポテンシャルは高いものの、経営のやり方がよくないために業績が悪いままの中小企業は少なくありません。私たちのような投資ファンドも、そんな中小企業に投資をして、“当たり前の改善”を実直に行っています。

事業そのものは良いが、経営のやり方を間違えているために利益が出ていないような会社を比較的安価で買収する。そして、大企業では当たり前と思われることを実行し、経営のテコ入れをして黒字化させ、次のオーナーを見つけ、売却する。

そのとき会社の価値は、5倍にも10倍にも跳ね上がっている可能性があります。出資した金額は、何倍にもなって返ってくるのです。

■投資ファンドが成功する秘密

三戸政和『サラリーマンは300万円で会社を買いなさい』(講談社)

とはいえ実際のところ、投資ファンドには対象事業に関する高い専門性はありません。たとえば、あなたのように事業に精通した大企業の管理職の方にお願いし、投資先のマネジメントをしてもらいます。たとえば、50歳を超えたビジネスマンになると、仕事人生の最終コーナーからゴールに向けての走り切り方をいろいろと考えている方が多くいます。そんな高い意識と深い知識、さまざまな経験を持った方に、投資ファンドはマネジメントを委任するのです。

きちんとした企業でマネジメントを習得したあなたが、そうしたポテンシャルに恵まれた会社を安価で買い、社長になったとしたら、画期的な改革の導入によって、たちまち企業の経営を好転させることができるでしょう。画期的な改革といっても、すでに見たように、対象となる中小企業にとって画期的だということであって、あなたにとってはそれまでやってきた、やり慣れた普通のやり方を踏襲するだけでしかありません。

たとえば、次のようなことです。

1|在庫を洗い出して整理する。
2|製品ごとに営業利益率を計算する。
3|赤字の顧客との取引をやめるか、値上げ交渉をする。
4|不良在庫を処分する。
5|不採算部門を止める。
6|帳票をシステム化する。
7|全仕入れ先から見積もりを取り直す。
8|部品の発注ロットを小さくする。
9|部品の納期を確認し、早い発注を抑える。
10|在庫の置き場所を最適化する。
11|運送会社と運賃の交渉をする。
12|ホームページを作り、自社の技術を公開する。
13|新規の展示会に出展し、PRしてみる。
14|業務効率化のクラウドを利用する。
15|新規営業の見込み顧客リストを作ってみる。
16|見込み顧客へパンフレットを郵送してみる。
17|見込み顧客への電話をそれぞれ3回ずつしてみる。
18|名刺管理システムを導入する。
19|勤怠管理クラウドサービスを使い、社員の生産性を可視化してみる。
20|会議を開き、社員の意見を聞き、自分の考えを社員に伝える。
21|朝礼で、前日と当日の行動管理をする。
22|週次会議で、先週と今週のPDCA管理をする。
23|月次、四半期、年度計画を立てて、実行に向けて進捗管理する。

いずれも、あなたがこれまで当たり前に行ってきた簡単なことです。何か革新的な技術開発をするわけでも、大規模な先行投資をするわけでも、スクラップ・アンド・ビルドをするわけでもありません。細かいところを見て、時代遅れのものや、ずさんなやり方を、少しずつアップデートするだけです。

それだけのことで、意外と、中小企業の経営は革新されてしまうものなのです。

(株式会社日本創生投資代表取締役CEO 三戸 政和 写真=iStock.com)

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