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トランプの政策が世界のマネーを翻弄する

プレジデントオンライン / 2018年8月13日 9時15分

この先5年、日本経済はどのように変わっていくのか。雑誌「プレジデント」(2018年7月2日号)の特集「あなたは今、何を学ぶべきか」では、6つのポイントにわけて識者に解説を頼んだ。第1回は「世界マーケット」について――。(第1回、全6回)

PART1:世界マーケット いま世界中の投資家が気にかける「5大リスク」

世界のマネーの動きを考える際に真っ先に浮かんでくるリスク――。それは2018年5月8日に米国のトランプ大統領が「イラン核合意」からの離脱を表明し、経済制裁再開へ進むことによる、地政学的なリスクだ。

「今回の離脱で、もともとイランと対立関係にあったイスラエル、そしてサウジアラビアとの緊張関係が、さらに高まってくるかもしれません」と経済アナリストの中原圭介さんは指摘。

同時に、原油高という2つ目のリスクも発生。「イランの原油輸出が減って需給が逼迫すれば、ニューヨーク原油先物市場で1バレル=70ドル台を超えて上昇することも考えられます」と法政大学大学院教授の真壁昭夫さんはいう。原油高はコストプッシュ型の物価上昇というマイナス要因として世界中に波及する。

これまで世界経済の成長を牽引してきたのは好景気が続く米国だ。リーマン・ショック後の2009年7月から米国は景気拡大の局面に入り、今月で丸9年になる。「ただし、戦後最長の拡大局面は1991年4月から01年3月までの10年間です。永遠に景気拡大が続くということはなく、そろそろ成熟期を迎えつつあるのではないでしょうか」と真壁さんは釘を刺す。

米国の景気拡大の契機は、経営危機に直面した金融機関への公的資金投入とFRB(米連邦準備制度理事会)の量的な金融緩和だった。しかし、FRBは14年10月に量的緩和を終了。15年12月には9年半ぶりの政策金利の引き上げへ転じている。

そこで気になるのが、米国の金利上昇だ。指標となる10年物国債は心理的な節目とされる3%を一時超え、先高観が強まっている。「今後、原油高でインフレが懸念されると、金利上昇を後押しするかもしれません」と真壁さんは警告する。それが3つ目のリスクで、金利上昇は個人消費を抑える。この点について中原さんは次のように語る。

「米国の経済は借金で回されてきました。家計債務の残高を見ると、17年12月末で13兆1500億ドルに達していて、リーマン・ショック直後の水準を超えています。クレジットカードローンや自動車ローンについては延滞率が増えてくるリスクが高いでしょう」

そして、4つ目のリスクが激化する貿易摩擦だ。米国は鉄鋼とアルミの輸入品に対して、それぞれ25%と10%の関税を3月23日から課した。さらに、5月23日には自動車の輸入関税アップの検討に入った。日本や中国、そしてEC(欧州連合)諸国の間に保護主義が蔓延すると世界経済全体の萎縮につながる。

こう見てくると米国発のリスクが多く、「18年11月の中間選挙をにらんだトランプ政権の支持率アップの狙いが根底にある。一貫性のない政策は、世界のマネーの動きを翻弄するでしょう」と、5つ目のリスクの存在を真壁さんは指摘する。

では市場はどう動くか。ニューヨークのダウ平均株価は09年の最安値から、すでに4倍以上も上昇している。

中原さんは「一時的にきつい下げが予想されます。ただし、規制が強化されてリーマン・ショック時のような金融不安は起こらないでしょう」という。真壁さんも「20年までに3割前後の調整を入れる可能性が高いのではないでしょうか」と話す。

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真壁昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院教授
一橋大学を卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。みずほ総合研究所勤務、信州大学経法学部教授などを経て現職に。『行動経済学入門』など著書多数。
 

中原圭介(なかはら・けいすけ)
経済アナリスト
1970年、茨城県生まれ。慶應義塾大学卒業。最も予測が当たる経済アナリストとして各界からの評価が高い。近著『日本の国難』がベストセラーになっている。
 

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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫、経営アドバイザー・経済アナリスト 中原 圭介 文=伊藤博之 撮影=加々美義人、研壁秀俊 写真=時事通信フォト)

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