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総裁選を"安倍1強"の追認で終わらせるな

プレジデントオンライン / 2018年8月16日 9時15分

2018年8月6日、自民党執行部による参院選挙合区対象4県連への意向聴取を終え、報道陣の取材に応じる鳥取県連会長の石破茂氏(写真=時事通信フォト)

■予想された通り「安倍対石破」の一騎打ちに

とにかく日本の社会の梅雨空のように息の詰まる状況を大きく変えてほしい。それには長く続く「安倍1強」の政治を壊すか、あるいはこれまでの政治を安倍政権が反省するしかないだろう。

8月10日、自民党の石破茂元幹事長が記者会見して9月の自民党総裁選への立候補を表明した。一方、優位に立つ安倍晋三首相も翌11日、地元山口県の会合で「6年前に自民党総裁選に出た時の志はみじんも変わることはない」と述べ、事実上の出馬表明を行った。

これで総裁選は予想された通り、「安倍対石破」の一騎打ちとなる。両氏とも大いに政策論議を戦わせてほしい。

いまのところ「告示9月7日、投開票20日」という選挙日程が有力だ。投票権を持つのは、405人の国会議員と100万人を超す党員だ。与党第1党の党首の選挙は、政権運営を検証する絶好のチャンスである。

たとえ石破氏が敗れたとしても、安倍首相の得票数に迫ることができれば、強硬姿勢の安倍政権も反省するはずだ。

石破氏の出馬には大きな意味がある。

■「安倍1強」の弊害の核心が「森友・加計疑惑」だ

ここで官邸主導の政治が生んだ「安倍1強」の弊害について簡単におさらいしておこう。

安倍首相や首相夫人と親しい限られた人物が優遇されたのではないかという疑惑。これが弊害の核心となる「森友・加計疑惑」である。

森友学園への国有地の大幅な値引き売却を巡って、財務省の決裁文書が改竄されていたことが明らかにされた。その後6月に公表された同省の内部調査報告では、理財局長だった前国税庁長官の佐川宣寿氏に責任を押し付け、「佐川氏が主導した」とされた。

だが、調査報告内容と3月の佐川氏の証人喚問の説明との間に疑問が生じた。野党は再喚問と偽証罪で刑事告発を求めたが、自民党は同意しなかった。

そればかりか、麻生太郎財務相は佐川氏がなぜ主導したかについて「それが分かれば苦労しない」とまるでひとごとのような態度を取った。あぜんとさせられる。まさにおごり以外のなにものでもない。

■官僚たちは出世を優先し、過度の「忖度」に走る

加計学園問題では、愛媛県の文書の「2015年2月に安倍首相と加計孝太郎理事長が面会した」との記録が、事実か否か。これが大きなポイントになっている。

安倍首相は否定し、加計氏も「加計学園の事務局長による作り話だった」と弁解をしている。愛媛県と、安倍首相、加計氏のどちらかがウソをついていることになる。加計氏は記者会見で「(国会招致を)お待ちしています」と述べたが、自民党側は「必要ない」と一蹴してしまった。

「森友・加計疑惑」以外では、財務省の事務方トップの事務次官がセクハラ疑惑で辞任。文部科学省では私立大学支援事業に絡んだ汚職事件も摘発され、女子受験生や浪人生を差別する東京医大の裏口入学も明らかになった。

霞が関では官僚たちが官邸にただ従うだけでなく、自らの出世を優先し、過度の「忖度」にまで走っている。公務員たるもの、国民の公僕という基本を忘れないでほしい。

これらは直接、安倍政権には関係ないかもしれない。だが、沙鴎一歩には「安倍1強」の緩みや閉塞感がもたらした事件や疑惑、問題に思えてならない。

■現職の総裁に対抗馬が立ったのは2例だけ

朝日新聞は8月11日付の社説で「安倍1強を問う論戦に」とのストレートな見出しを掲げ、「石破氏は、党三役や閣僚を歴任した論客だ。具体的で実のある論戦を期待する」と主張する。朝日は石破氏に加勢するようだ。

安倍首相を嫌う朝日らしさがそのまま出ているが、次に「結党から63年になる自民党の歴史でも、現職の総裁に対抗馬が立ったことはそう多くない」と指摘して過去の総裁選を振り返る。

「94年に自社さ連立で政権に復帰して以降では、小渕首相に加藤紘一、山崎拓の両氏が挑んだ99年と、小泉首相と亀井静香、藤井孝男、高村正彦の3氏が争った2003年の2例だけだ」
「加藤氏らは、小渕氏が進めた自自公の連立路線に異議を申し立てた。亀井氏らは、『抵抗勢力との対決』を演出して官邸主導を強める小泉氏の政治手法に修正を迫った。いずれも首相が勝利したが、対立軸は明確で、挑戦者の舌鋒も鋭かった」

なぜ朝日社説は過去の総裁選を振り返るのだろうか。そう考えながら読み進むと、納得できそうな答えが待っていた。

■安倍政権への直接的な批判を控えている石破氏

「今回、石破氏が掲げたキャッチフレーズは『正直、公正』だ。森友・加計問題で、行政の公平・公正に対する信頼が失墜し、野党の質問に正面から答えようとしない首相の不誠実な対応に批判が集中したことが念頭にあるのは間違いない」

朝日社説は、挑戦者となる石破氏が鋭い舌鋒で、安倍氏に迫ることを期待しているのだろう。

「きのうの立候補会見では『政治・行政の信頼回復100日プラン』の実行を掲げた。期限を切って、強引な国会運営を見直し、官邸主導のあり方も見直す考えを強調した」
「石破氏は安倍政権の現状に対する直接的な批判は控えていたが、問おうとしているのはまさに、安倍1強政治の弊害そのものだろう」

「官邸主導のあり方の見直し」と「安倍1強政治の弊害」。いずれも冒頭で沙鴎一歩が指摘した問題である。

■そんなに選挙に勝ちたいのか

続けて朝日社説はこう指摘していく。

「総裁選後の党役員・閣僚人事を見据え、こぞって首相にすり寄る姿は、1強の下、活力を失った党の現状を物語る」

「寄らば大樹の陰」とばかり安倍首相にすり寄る国会議員たちは、もはや自らの利益しか考えていない。そんなに選挙に勝ちたいのか。むなしいことだ。痩せても枯れても、国民の福祉の向上を目指すのが、国会議員ではないだろうか。

さらに朝日社説は指摘する。

「そんな中で注目されるのが、今回から国会議員票と同等の重みを持つことになった、全国の党員・党友による地方票の行方だ。01年の総裁選では、地方票で小泉氏が圧勝することが分かり、国会議員の判断に大きな影響を与えた」

石破氏はこの地方票の獲得に強いといわれている。小泉氏のときような大展開があれば、自民党総裁選は中身のあるものになるはずだ。

■国民の目に争点が見えてこそ、民主主義だ

対する読売新聞も8月11日付の社説で「安倍首相との政策面での対立軸を明確にし、積極的に論戦を挑んでもらいたい」と石破氏に“エール”を送る。

読売社説は「首相と『ポスト安倍』の候補が政策を論じ合う意義は小さくない。現職首相が挑戦を受けるのは、2003年の総裁選以来だ」と指摘し、こう訴える。

「安倍内閣の運営について、どこが問題で、どう修正すべきか。石破氏は自らの主張をぶつけ、首相の見解を引き出すことが重要だ。建設的な論戦が政権政党である自民党の政策を磨くことになる」

具体的に「安倍政権の問題点と修正点」を指摘してこそ、総裁選の議論だろう。沙鴎一歩はこの読売社説の主張に賛成する。

この後、読売社説は金融・財政政策、朝鮮半島情勢、憲法改正など政治課題をひとつずつ挙げながら「政策の対立軸を示せ」との主張を繰り返す。

読売社説の主張の通りだと思う。どんな選挙でも旗幟を鮮明にすることが基本だ。ましてや今回は次の首相が決まる重要な選挙である。私たち国民の目に争点がはっきりと見えてこそ、民主主義の社会といえよう。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)

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