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東芝の"6000億円増資"の何が異例なのか

プレジデントオンライン / 2018年8月27日 9時15分

※「ブックビルディング」とは増資する会社の発行価格を決定する方式の1つ。まず機関投資家の意見をもとに仮条件を決め、その条件を広く投資家に示し、需要を把握しながら発行価格を決めていく。

経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「東芝とブックビルディング」について――。

■粉飾決算の分析の第一人者が見た「東芝」の第三者割当増資

「異例ずくめの増資だった」と金融関係者にいわしめたのは、東芝が2017年12月5日払い込みで行った約6000億円の第三者割当増資だ。新規に発行する株数は発行済み株数の53.8%も占め、既存の株主の権利は大幅に低下。「それでも増資をする必要があった」と指摘するのが、元公認会計士で粉飾決算の分析で第一人者でもある細野祐二さんである。

東芝は米国の原発子会社ウエスチングハウス(WH)と同グループの再生手続きによる損失など1兆2428億円を計上し、17年3月期に5529億円の債務超過へ(図参照)。「18年3月期末までに債務超過を解消しないと上場廃止になる。回避策で半導体子会社の東芝メモリの売却があったのだが、なかなか前に進まず、増資が浮上したのだろう」と細野さんはいう。

■名乗りあげた旧村上ファンド系含む「アクティビスト」

しかし、債務超過や、17年3月期の連結財務諸表に「継続企業の前提に関する注記」が付き、東芝自体の継続性に対する疑義が差し込まれたことで、公募増資は無理。残されたのは第三者割当増資で、割当先に名乗りをあげたのが旧村上ファンド系をはじめとする「アクティビスト(物いう株主)」たちだった。

時事通信フォト=写真

彼らに需要見込み調査をすることで、東芝は「ブックビルディングに類似した公正性の高いプロセスを経て適切なディスカウント率(=発行価格)の決定を行った」とする。そして決まった発行価格が262.8円で、その妥当性が気になる。

「当然、引受先は企業価値の詳細な分析を行う。その手法の1つがEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を使うもの。試算すると増資前で1株当たり594.4円の価値があり、安い買い物だったのでは」と金融に詳しい経営コンサルタントの小宮一慶さんは話す。

その後、WHの資産譲渡などで債務超過解消、上場廃止の回避をほぼ手中にする。しかし、アクティビストたちが経営に横ヤリを入れてくることも考えられ、前途は多難なようだ。

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細野祐二
会計評論家
 

小宮一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント
1995年に小宮コンサルタンツを設立し、代表取締役会長CEOに。著書は130冊を数え、累計発行部数は360万部を超える。
 

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(プレジデント編集部 伊藤 博之 撮影=加々美義人 写真=時事通信フォト)

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