ローソン社長"年配クルーに教わったこと"

プレジデントオンライン / 2018年10月5日 9時15分

ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、ローソンの竹増貞信代表取締役社長のインタビューをお届けしよう――。

■既存店の日販を55万円から60万円へ伸ばすことが目標

2016年9月にファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスが経営統合し、サークルKサンクスがすべて18年8月末までにファミリーマートへ切り替わる。そして、17年2月にローソンが三菱商事の子会社になった。すでに国内のコンビニの店舗数は5万5000店を超えて、飽和状態との指摘もある。そうしたなか、求められる人材像も変わってきているのだろうか。

──三菱商事の社長業務秘書を務められていた竹増貞信社長が、ローソンに副社長として入社されたのは14年5月。竹増社長の目にローソンというコンビニ事業はどのように映ったのでしょうか。

流通・小売業と無縁だったわけではありません。三菱商事に入社して初めに配属されたのが畜産部です。2年ほどで食肉販売子会社へ出向し、全国のスーパーや外食に売り込みをかけていました。食肉売り場の一角を借りて、エプロン姿で自前のホットプレートで牛肉を焼きながら実演販売を毎週のようにしていたこともあります。足かけ13年ほど食肉の仕事に携わり、その取引先のなかにはローソンも含まれていました。

その私がローソンに入って実感したのが、「マチの暮らしにとって、なくてはならない社会インフラであり、とても面白いビジネスだ」ということです。

たとえば、18年2月に記録的な大雪となった北陸では幹線道路が寸断されて物流が滞り、多くの小売店が店を閉めました。しかし、ローソンの各フランチャイズのオーナーや店長は「マチを支え続ける」という信念のもとに、お店の営業を続けてくださり、本部も全面的にバックアップしました。そして「ローソンのおかげで助かった。これからも利用しますよ」との高い支持をお客さまからいただけました。

──しかし、国内の店舗数で見るとローソンは2月末時点で1万3992店。ファミリーマートとサークルKサンクスの合計1万7232店に引き離されて業界3位です。

そのことは、ほとんど気にしていません。なぜなら、私たちは店舗数という規模の拡大よりも、一つ一つの店舗の継続・発展を第一に考えているからです。先ほどの社会インフラとして認知していただけるのも、「平時でも非常時でも、ローソンに行けば、自分が必要なモノが揃っている」という、お客さまの信頼感があればこそ。その信頼に応えるためにも、各店舗の売り上げを拡大し、継続していくことを最優先課題に掲げているのです。

現在、ローソンの既存店の1日当たりの平均売上高は約55万円ですが、それを60万円へ伸ばすことを目標に掲げています。しかし、人口減少という厳しい時代に入り、客数を増やしていくのは容易ではありません。それでも客層を拡大し、トータルの売り上げを増やしていく方法を模索しなくてはなりません。

■「説明の文字が小さすぎて高齢者には読みづらい」

──そうしたなか、コンビニ事業を担う人材に最も求められている点とは、何なのでしょうか。

それは、お客さまのニーズ、そして商品やサービスのトレンドなどの変化に敏感なことです。各店舗とのつなぎ役であるスーパーバイザー(SV)だけではなく、実は本社スタッフにも、そうした素養が求められています。

そうした変化について最も重要なヒントを与えてくれるのは、やはり「現場のナマの声」です。SVなら週に1回訪問する各店舗のオーナー、店長やクルーと話をすることで、個別商品の売り上げデータなどからでは窺えない、お客さまの真の嗜好や要望をつかめます。

シニアに人気の商品に「うの花」「いわしの生姜煮」があるのですが、私自身ある店舗を訪問した際、年配のクルーの方から「説明の文字が小さすぎて高齢者には読みづらい」といわれました。こういったことを改善し、シニアのお客さまも気軽に来店していただけるようにして、お客さまの層の拡大につなげるわけです。

■「荷物を家で待っている時間がない」という新事業

──とはいえ個々人の気づきだけにとどめていたら、組織全体の変革にはつながりません。

そこでもう1つ大切なことは、そうやって得た気づきから「仮説」を立てて「実行」し、その成果の「検証」を行っていくことです。当然、自分1人で実行できるわけがなく、会社全体を巻き込んでいかなくてはなりません。ですから「実行力」や「巻き込み力」も兼ね備えた人材が求められてきます。

──かねてから取り組んでこられた多様な人材を積極的に活用するダイバーシティで、本社スタッフの意識も変化しているようですね。

05年度から本格的に取り組むようになり、その一環として08年入社からは外国人留学生の採用も始めました。11年の間に定期採用したのは男性が773名で、女性が698名とほぼ同数です。外国人留学生も271名を数えます。そうした違う価値観を持った者同士が意見を交わすことで、変化を含めて新たな気づきを得たり、どうしたら周囲を巻き込んでいけるかを日々学んでいくのです。もちろん多様なお客さまへの対応も進みます。

その成果として直近では、午前8時までにスマホで予約すると、当日の18時以降に指定した店舗で商品の購入・受け取りができる「ローソン・フレッシュ・ピック」が、18年3月から東京都世田谷区や神奈川県川崎市などで始まりました。これは「荷物を家で待っている時間がない」というお客さまの声を受け、身近な実店舗を活用していただく新しい試みです。

■評価システムを切り替えて、スピードアップへ

──最後に懸念されるのは、現場や若手からあがってくる意見や提案が、経営陣にスムーズに届くかです。

支店長から部長、そして本部長へと上がってくる段階で、ややもすれば自分たちの行ってきたことへの否定と捉え、「現状のままでOK」と遮断してしまうことがあります。そのようなことがないよう、新しい提案を数多く出してきた部署は、提案者とともに、積極的に経営陣にあげてきた中間管理職も評価するシステムに切り替えています。

▼QUESTION
1 生年月日、出生地

1969年8月12日、大阪府池田市
2 出身高校、出身大学学部
大阪教育大学附属高等学校池田校舎、大阪大学経済学部
3 好きな言葉
百里の道を行くものは九十九里をもって半ばとす
4 最近読んだ本
『仏教のこころ』五木寛之
5 尊敬する人
松下幸之助
6 私の健康法
水泳、ジョギング

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竹増貞信(たけます・さだのぶ)
ローソン 代表取締役社長
1969年、大阪府生まれ。93年大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。畜産部時代のグループの米国豚肉処理・加工品製造会社勤務、三菱商事社長業務秘書などを経て、2014年ローソン副社長に就任。16年6月から社長を務める。

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(ローソン 代表取締役社長 竹増 貞信 構成=伊藤博之 撮影=小田駿一)

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