マネー情報通が落ちる"セミナー貧乏"の穴

プレジデントオンライン / 2018年10月6日 11時15分

写真=iStock.com/Jaruwan Jaiyangyuen

家計改善の近道はなにか。第一歩は「支出を減らすこと」だが、節約ばかりでは人生を楽しめなくなってしまう。なにを削り、どこを守ればいいのか。3人の「マネーのプロ」に、実際の家計簿をみてもらって、対策を聞いた。第2回は年収760万円で「結果が伴わない“意識高い系”夫婦」という亀井家のケースについて――。(第2回、全4回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年1月15日号)の掲載記事を再編集したものです。

■マネー情報に詳しい人ほど貧乏になる

マネーリテラシーが高いと自負する亀井さん夫妻は、さまざまなマネー情報にアンテナを張り、家計管理と資産運用に余念がない。

住宅購入に際しては、年金生活に入る前にローンを払い終えようと、頭金の準備ができないまま全額を金融機関からの融資でまかない、頭金0円でフルローンを組んだ。住宅ローン控除による税の還付も狙っている。保険も掛け捨てはもったいないと、夫婦とも貯蓄性のある医療保険と、ほかに個人年金、外貨建ての終身保険にも入っている。一見すると賢い資産運用に思えるが、「将来」を見据えすぎて、実は「いま」の家計は保険やローンの支払いに追われてがんじがらめ。貯金をする余裕もないほどだが、赤字が出ているわけでもないからと、夫婦はなんの問題も感じていない。

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亀井家の場合
●家族構成:夫 33歳 営業、妻 33歳 事務 契約社員 ●年収(額面):夫 460万円(うちボーナス 夫 69万円)、妻 300万円 ●貯蓄額:220万円


マネーリテラシーが高いと自負する夫婦。将来は夫婦で起業しようとセミナーに行ったり書籍を買って読んだり自己投資する。だが専門家から見ると、保険はメリットの少ない商品を選ぶ、住宅ローンは頭金なしのフルローンを組むなど、脇が甘い。

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大きな固定費から見てみよう。まずは住宅だ。「マネーリテラシーが高いという割に、フルローンはいただけない」と経済評論家で個人投資家の加谷氏は疑問を呈する。「返済期間が長いほど、利払いの絶対額が増える。ローンはできるだけ短いほうがいいというのが一般常識。繰り上げ返済が可能ならぜひそうすべきです」。

保険についてはどうだろう。亀井さん夫妻と面識のある家計再生コンサルタントの横山氏は、「実はかなり評判の悪い保険に入っている。いまは外貨建てが人気だと勧められるままに即決してしまったらしい。保障内容もよく理解しておらず、マネーリテラシーが高いと思っている割には脇が甘い」と残念がる。自分の知識が正しいかどうか、専門家のアドバイスに耳を傾ける必要もあるだろう。

一方、投資コンサルタントの午堂氏は「貯蓄性の保険を選んでいること自体には賛成」と擁護するが、「ただし月4万円は掛けすぎ」と指摘。「保険は年間8万円以上の払い込みで最大4万円の所得控除、2万8000円の住民税所得控除を受けられる。月々8000円弱ぐらいの貯蓄性の高い保険に入っていれば、保険料を払っているうちは所得税と住民税が節税になり、満期になれば100%以上で戻ってきます」。

固定費のほかに、亀井家の家計を圧迫しているのは自己投資代。資産運用の情報収集や、将来起業したいという夢のために、各種セミナー類に夫婦そろってせっせと通っているのだ。「『セミナー貧乏』になりかねないので要注意」と加谷氏は危ぶむ。「これからは独学力がすべてを決める時代。たいていのことはネットや書籍から学べるはず。高いお金を払ってセミナーに行くのは、表立って言えない『リアルな話』を聞きたいときだけでいい」と断言する。

さらに細かいところでは、1万5000円もかかっている新聞などの「その他」の費用も気にしたい。情報感度が高いと自負する2人だけあって、新聞もそれぞれ別々に購読しているため、コスト高になる。午堂氏は、「紙の新聞の必要はないでしょう。少なくとも資産形成につながる情報は新聞にはほとんどない。雑談用のネタを収集したいなら、スマホのニュースアプリで十分」。

■30代前半からの運用で、資産1億円も夢じゃない

こうして無駄な出費をなくしたうえで、せっかく資産運用の意欲があるのだから、投資に振り向けたいところ。年収700万円台の世帯に加谷氏が勧めるのは株式投資だ。「月4万円の自己投資代を丸ごと株に充てればいい。セミナー費を払うより、自分で株をやるほうがよほど勉強になる」という。

では何に投資すればいいのか。加谷氏はインデックスより個別株を勧める。「最もシンプルなのは、投資先の過去5年間の業績推移を見ること。財務諸表など読めなくても売り上げだけ見れば大丈夫。5年間順調だった会社が、翌年、急にダメになることはまずない」。

いざ株式投資を始めるなら、少しはまとまった「種銭」が欲しい。「自己投資代をまずは5カ月分貯めて20万円。これを原資にして、たとえば四半期ごとに一定額を買い増していく。配当が出たらすべて再投資に回す」。短期間に売却して荒稼ぎしようとするのではなく、長期間保有し続ける、いわゆる「バイ・アンド・ホールド」という投資手法だ。ある程度の価格変動があるとしても、長期的に見れば、一定の利率でリターンが得られるという考え方が根底にある。「こうして長期的なリターンを狙うのが株式投資の王道。30代前半のいまからはじめれば、50代のころにはかなりの蓄えになっているはず。大袈裟ではなく、1億円の資産形成も夢ではありません」(加谷氏)。

こうして、月々の支出を減らして将来に備えておけば、安心して起業に踏み出せるだろう。

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加谷珪一
経済評論家
日経BP社、野村証券系投資ファンド運用会社を経て独立。億単位のお金を動かす個人投資家としても知られる。
 

午堂登紀雄
投資コンサルタント
米国公認会計士、不動産コンサルタント、個人投資家、ビジネス書作家。33歳で資産3億をつくる。
 

横山光昭
家計再生コンサルタント
マイエフピー代表。ファイナンシャルプランナー。代表著作は55万部を超えるベストセラーに。
 

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(小島 和子 撮影=大沢尚芳、小原孝博 写真=iStock.com)

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