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「テンポを巧みに操れる人」になる会話術

プレジデントオンライン / 2018年9月18日 15時15分

写真=iStock.com/itakayuki

「間(ま)」をとるのは黙ることですから、勇気がいります。しかし「間」がうまく使えると、テンポよく会話できるようになります。今回はビジネス場面での会話とふだんの会話のテンポについて、お話ししましょう。

■ふだんの会話は、バリエーション豊富

まずビジネス場面での会話とふだんの会話とでは、話すときのテンポ=速さが違います。音楽でいうと、ビジネスはクラシックのような落ち着きのある雰囲気です。あいづちも「なるほど」「わかりました」「承知しました」といった言葉が多く、テンポにそれほど大きな変化はありません。しかし、ふだんの会話は早口だったり、ゆっくりだったり、「えっ」「げっ」といった、言葉になっていない音のリアクションもたくさん出てきたりするので、雰囲気やテンポが変わりやすい。バリエーションが多く、メリハリがきいている分、ビジネス場面よりもふだんの会話のほうが難しいと言えるでしょう。

ビジネス場面での会話では、そう大きく変化しないとはいえ、テンポはそれぞれの会社や業界で異なります。速いところ、遅いところ、さまざまです。1度、ご自分の会社や業界、もしくはチームがどういうテンポなのか、分析してみるのも面白いでしょう。そうすると「うちの会社はテンポが速いようだから、取引先ではテンポを落として相手に合わせよう」「取引先はゆったりしてテンポが遅く、話が活性化しづらい。うちの速めのテンポで進めて、意見をどんどん引き出していこう」などとテンポを戦略的に使えます。

具体的な戦略としては、テンポアップしたいときは、質問をいくつも重ねていくとよいでしょう。さらに、「不便だと思ったことはありませんか?」「ありますよね」と相手に言ってほしい言葉を自分で言いながら話を進めてしまいます。反対にトーンダウンしたいときは、相手の話に対し、ひたすらうなずいてノートをとる。ゆっくりと相手の答えをもう一度繰り返すなどして、一つ一つ確認しながら進めます。このようにテンポを調整することができれば、こちらのペースに持っていき、場をコントロールすることができるのです。

■相手の会話をさえぎらない

こうした話し方や、呼吸などの相手の状態に合わせてコミュニケーションをとる方法は、心理学で「ペーシング」といいます。ペーシングは話し方や呼吸を相手に合わせるだけでなく、ご紹介したように自分のペースに誘導することもできます。ただし、このときには注意点があります。それは、相手の話の途中で、こちらが話し始めないこと。途中で話が変えられると、相手は「まだ話したかったのに、話題を変えられた」と不満が残ります。ビジネスの交渉の席であれば「相手の条件ばかりを押しつけられた」という感覚を持たれてしまいます。相手の息を読んで、息が切れるまで待ってから話す、という「間」の大原則を忘れないことが重要です。

■会話の導入から自分のテンポを知らせる

ふだんの会話では、どうでしょうか。テンポが変わりやすいふだんの会話では、相手のテンポに合わせすぎないことが大切です。そのためには「私はこういうテンポの人です」と、最初からわかりやすく示しましょう。「今日は暑いですね」「この店は混んでいますね」といった導入部分から自分のテンポで話し始めることです。早口なら早口、ゆっくりならゆっくりと、最初からしっかりと自分のテンポを出していきます。いきなり、その曲のサビを聴かせるイメージですね。

最初からテンポを伝えて自分をわかりやすく示せば、相手は「話しやすい人」という印象を抱きます。話しやすいから、つい本音を話してしまう、悩みごとを打ち明けてしまう、そこまで話すつもりはなかったのに話してしまった、というような深い人間関係を築くことができます。単なる聞き上手ではない、聞き方の上級スキルを身につけた人が、テンポを巧みに操れる人なのです。

イラスト=アヤコオチ

■自分のテーマ曲をつくろう

テレビやラジオの番組を思い出してください。番組の最初にテーマ曲が流れますよね。テーマ曲というのは、番組のイメージに合わせた音楽ですから、ニュース番組は宇宙的な無機質な曲、情報バラエティー番組は楽しいアップテンポな曲、重厚な番組ならクラシックが流れ、私たちを番組の世界観に誘います。

ですから私たちも、ビジネス場面の会話であれ、ふだんの会話であれ、「今日は自分のテンポで話したい」というときは、そのイメージに合った音楽を聴いてから臨むのです。じっくりと落ち着いて話したいときは、ゆったりとしたスローな曲、痛快なコミュニケーションを望むなら、心が弾むような軽やかな曲を選びましょう。

クライアントとの商談などで、社外で会う場合は注意が必要です。落ち着いた雰囲気で話をしようと思っていても、選んだ店でかかっている曲が元気な曲なら、そちらに引っ張られてしまいます。どんな音楽がかかっているか、商談場所の下見をしておくとよいでしょう。

野球選手が打席に入るときは、その選手に合わせた登場曲が流れます。ランニングやマラソンをするという方の中には、走るテンポに合わせて、マイテーマソングを聴きながら走る方も多いでしょう。「私プレゼン」でなりうる最高の自分を伝えようと頑張っているあなたには、ぜひ自分のテーマ曲をつくっていただきたいです。いろいろな状況を想定して、マイテーマソングリストをつくれば、自分のテンポで話せ、自分の世界に相手を引きこむことができます。そうすれば、コミュニケーションもあなたの望む方向にもっていくことができるのです。

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矢野 香
スピーチコンサルタント
長崎大学准教授。NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し博士号取得。政治家、経営者やビジネスパーソンに信頼を勝ち取るスピーチやコミュニケーションを伝授。著書に『最高の話し方』(KADOKAWA)など。

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(スピーチコンサルタント/長崎大学准教授 矢野 香 構成=池田純子 イラスト=アヤコオチ 写真=iStock.com)

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