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友人と共同で「カフェ」を開いた男の現在

プレジデントオンライン / 2018年9月20日 9時15分

カフェは駅から徒歩3分ほどのところにあったが、人通りの動線から少し外れた横丁で、なかなか人目につかない。不動産業者の「いい物件」という口車に乗り、自分の目で人通りを確認しなかったことも杉原さんは悔やむ。

定年後の60~74歳までの15年間は、元気で好きなことができる「人生の黄金期間」。このとき充実した第2の人生を送るには、50代から準備しておくことが重要だ。8人の実体験をお伝えしよう。8人目は「元カフェ共同経営者で、いまの収入は介護職で月25万円前後」という61歳のケースについて――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年11月13日号)の特集「金持ち老後、ビンボー老後」の記事を再編集したものです。

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杉原義男(仮名)さん 61歳 元カフェ共同経営者
開業:2013年(14年廃業) 形態:個人商店 開業資金:500万円 従業員:2人(当時) 収入:いまは介護職で月25万円前後

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「こんなはずではなかったのに」

5年ほど前の起業を思い出すたびに、杉原義男さん(仮名)は後悔の念にかられる。

大学卒業後、ホテル・レストラン業界で企画や管理畑の仕事に携わってきた杉原さん。52歳だった2008年、老舗ホテルの系列ホテルに企画の責任者として、経営再建に入り、先行きに手ごたえを感じていた。

しかし、東日本大震災の影響で、12年春にホテルの閉鎖が決定される。そんな杉原さんは、「横浜でカフェを共同でやらないか」と、知人から誘われた。オセアニアのヨーグルトの国内製造・販売のライセンス契約を取り、それを売りにしたアンテナショップ兼カフェを個人商店の形で開くという。

実際にヨーグルトを口にすると、クリーミーな食感で確かにおいしい。1個当たり200円と通常商品より倍近い値段だったが、食品の展示会で大手食品卸会社から何社も引き合いがあった。そして知人が1000万円、杉原さんは500万円の資金を出して、カフェを開業することになる。

しかし、躓きはすぐにやってきた。

■知人は「自分のほうが多く金を出している」と主張

コンセプトや内装など、店舗づくりはすべて杉原さんの担当のはずだったのに、「もっと豪華に」と知人が口を出し始めたのだ。杉原さんが反論すると、「自分のほうが多く金を出している」とやり込めてきた。そして、なんとか開業したのが13年4月のこと。

そんな杉原さんに、さらなる厳しい現実が待ち受けていた。ヨーグルトは賞味期限が約2週間。まだ始まったばかりで客足や店頭販売の予測が立たず、仕入れの量が読めない。かといって欠品では商売にならず、廃棄ロスがかさんでいく。販促費も乏しく、割高な商品に手を伸ばさせるアピール力にも欠けた。結果、売っても利益が出ないジレンマに陥った。

「少しでも売り上げアップを」と焦る知人が、インド料理のコックを連れてきて店のコンセプトが一変し、やっと付き始めた固定客も逃げてしまった。結局、開店から10カ月で閉店に。共同経営の難しさを痛感する杉原さんは、いま介護の現場の仕事で生活の糧を得る日々を送っている。

(プレジデント編集部 伊藤 博之 撮影=石橋素幸)

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