女性が本当に活躍できる企業50社の実名
プレジデントオンライン / 2018年9月14日 9時15分
■今、女性が本当に活躍できる企業トップ10
2016年に女性活躍推進法が施行されて約2年半が経過しようとしています。
厚生労働省「女性活躍の推進企業データベース」によれば、「女性活躍推進法」に関連した情報公開を行っている企業数は9541社(2018年8月2日時点)に上ります。多くの企業が、女性の活躍推進に向けて取り組んでいます。
こうした中、東洋大学の人間価値研究会ダイバーシティ研究グループ(※)は、今年8月、「女性活躍インデックス」による法人ランキングを発表しました。これは厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」の18項目の中から、女性活躍を示す項目を抽出し(下記参照)、これらを独自の計算式によりポイント化したものです。
※《人間価値研究会(会長=福川伸次 理事長)ダイバーシティ研究グループ(座長=松原聡 副学長)》
抽出項目は以下の通りです。
・男性の平均勤続年数(または、男性の採用10年前後の継続雇用割合)
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性の割合
・労働者に占める女性の割合
・男性の育児休業取得率
・女性の育児休業取得率
東洋大学によると、今回分析対象とした法人は、「女性の活躍推進企業データベース」に2018年3月末日現在登録されている8963法人から従業員1001人以上の2639法人を選び、さらに女性労働者の割合が80%以下、かつデータベースの主要項目に回答している1078法人とした、ということです。
同大が1078法人から選んだ上位50法人のうち、トップ10は図1の通りです(20位~50位は後述)。
このうち1位の賃貸マンション建設・仲介業大手「東建コーポレーション」は、男性の育児休業取得率が100%に上る点が特徴です。ホームページ上で、「パパ・ママサポートブック」を作成し、その内容を全て開示するなど、男女問わず子育て支援に取り組む姿勢がうかがえます。
2位の中国料理のレストラン経営・加工販売の「銀座アスター食品」では、役員や管理職に占める女性の割合が3割を超えており、女性の登用が進んでいます。
■今、女性が本当に活躍できる企業11~50位
3位のコンビニエンスストア大手「ローソン」では、役員に占める女性の割合が3割を超えていることに加えて、男性の育児休業取得率が実に8割を超え、女性の登用だけではなく、男性の働きやすい職場づくりに取り組んでいることがわかります。
4位の大型ショッピングセンター内で児童向け遊戯施設を運営するイオングループの企業「イオンファンタジー」では、労働者に占める女性の割合は2割程度ですが、管理職に占める女性労働者の割合は5割を超えています。
5位も同じイオングループの企業でディスカウントストア事業を展開・運営する「イオンビッグ」。こちらも4位と類似の傾向が見られます。
この東洋大学のランキングでは、企業のさまざまな取り組みをスコア化して総合的に評価しています。上位ランクの企業でも「女性の活躍推進」について100点満点というわけではありませんが、こうした調査により、大企業や知名度の高い企業でなくても、女性活躍に力を入れている企業があることがわかります。
11位以下のランキングは図2の通りです。
■「業種別」女性活躍推進度 非製造業と製造業に大きな差
今回の東洋大学の調査で興味深いのは、業種別の女性活躍推進度も分析している点です。
女性活躍推進度で上位の業種は、「報道」「医療・福祉」「情報通信業」「電子部品・デバイス・電子回路」「金融業・保険業」でした。
一方、女性活躍推進度が下位となった業種は、「複合サービス産業(郵便局・協働組合)」「プラスチック製品製造業」「ゴム製品製造業」「石油製品・石炭製品製造業」「宿泊業・飲食サービス業」「運輸業」「郵便業」でした。
これを見てわかるのは、非製造業と製造業の違いです。非製造業は製造業に比べて業態の特性上、女性の活躍が進んできた経緯があります。例えば、「医療・福祉」は、昔から女性管理職の比率が著しく高い業種です。同じく非製造業の「情報通信業」もテレワークの導入など働き方改革を通じて、近年、仕事と家庭の両立がしやすくなりました。
女性活躍推進度が下位の「建設業」や「宿泊業・飲食サービス業」でも、個別の企業でチェックしていくと上位の企業もあります。女性の活躍推進に向けた社会の流れを受けて、今まで取り組みの遅れていた産業でも意識の高い企業が出始めていると言えます。
■ローソンは男性の育児休業取得率が8割を超える
今回の東洋大学の調査では、スコアを独自の計算式でポイント化しており、2017年と2018年の比較ができるようになっています。例えば、「女性の平均勤続年数」は、0.79ポイントから0.82ポイントに、「女性育休取得率」は0.59ポイントから0.63ポイント)に、それぞれ上昇しています。それだけ女性が育児と仕事を両立しやすい環境づくりが進んでいると考えられます。
しかし、「女性役員割合」については、0.22ポイントから0.23ポイントと、上昇度合いは最も小さくなっています。年齢や経験とともに、女性役員に登用(あるいは外部から採用)できる人材が不足していることが影響していると考えます。
課題が最も浮き彫りになったのは「男性の育休取得率」です。
17年0.05ポイント→18年0.09ポイントと上昇率はごくわずか。厚生労働省の「雇用均等基本調査」を見ても男性の育休取得率は3%程度なので、今後のさらなる努力が求められます。
その意味で、「女性活躍インデックス 法人ランキング2018」で3位となったローソンの「男性社員の育休取得率8割」という数字は高く評価できます。取得率が8割を超えているのは、2017年度、2018年度と2年連続です。
同社のサイトによれば、全社員(単体)の8割は男性です。男性社員の意識改革を図るには、育休取得率を上げることが必要だと考えたのでしょう。
同社には他にも、1日3時間までの時短勤務が可能な「育児時短」や、週3~4日勤務が可能な「勤務日数減少」という制度があります。いずれも小学校3年生以下の子供をもつ社員が希望した場合に使うことができるそうです。
さらに女性社員限定の幹部候補養成研修の開催や、育児休職中の社員向けに会社の情報提供など、女性社員の活躍推進に向けた取り組みも積極的に行っています。
■女性活躍を進める上での重要な課題は「男性の働きやすさ」
今後さらに女性の活躍を推進していくためには、男性が育児休業を取得しやすい環境づくりを進め、男性の育児参加を促し、女性の家事や育児の負担を軽減することが必要ではないでしょうか。
■高学歴の女性は「仕事と家庭の両立できる企業」を選ぶ
今回、東洋大学では、ランキングの結果を校内に貼り出したところ、多くの学生が関心をもったそうです。このような取り組みは、企業の女性活躍推進を後押しすることにもつながるでしょう。
日本総合研究所が実施した「東京圏で暮らす高学歴女性の働き方等に関するアンケート調査」(2015年)によれば、年齢が若く学歴の高い女性ほど、就職活動で「仕事と家庭の両立ができる企業か否か」という点を評価したことが明らかとなっています。つまり、企業側が女性の活躍推進に向けた職場環境づくりを進め、対外的に発信していくことは、優秀な女子学生を採用するために意義があると考えられます。
一方、筆者の取材によると、「女性支援制度」を当てにせず、本当に自社のビジネスに関心を持って応募してくる学生を採用したいという経営者の思いから、充実した女性支援制度が整っているにもかかわらず、その内容をあえて開示していない企業もあります。
女性活躍推進の勢いを強めるために、そうした企業にも積極的に情報開示をしてほしいところですが、現実には開示していない企業があるのです。就職活動の際は、開示された情報だけで判断せず、OBやOGのつてをたどってヒアリングを行うなど、しっかりと情報収集する必要があるようです。
(日本総合研究所 創発戦略センター ESGアナリスト 小島 明子 写真=iStock.com)
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