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麻原元死刑囚の「遺骨」は誰のものなのか

プレジデントオンライン / 2018年12月2日 11時15分

■麻原元死刑囚の遺骨巡り「四女vs妻・三女」

麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の遺骨をめぐって争いが起きている。松本元死刑囚は執行前、遺体引き取り先として四女を指名。しかし妻と三女らは遺体引き渡しを求めて上川陽子法相と東京拘置所長に要求書を提出した。

元教祖で崇拝の対象になりうる松本元死刑囚の遺骨の扱いについては慎重な判断が必要だ。ただ、「先妻の子と後妻」「正妻と内縁の妻」など、遺体・遺骨をめぐって争うケースは珍しくない。遺族がもめた場合、遺体・遺骨は誰に引き取られるのが正しいのか。

そもそも生きている人間の身体に対する所有権はない。奴隷制を否定してきた近代社会で、人身売買につながる所有権の設定は到底認められないからだ。しかし、遺体になればモノとなり、所有権の問題が浮上する。

「遺体は相続人のもので、相続の法理により処理されます」

そう解説するのは、小松初男弁護士だ。

「故人が病院への献体を希望していた場合でも、相続人の遺族が反対すれば、故人の遺志があっても献体されません。それは遺体が相続人のものと考えられるからです」

解剖も同じだ。病気の原因を調べる病理解剖は、遺族の了承なしには行われない。

「遺体の処理は緊急を要するため、相続人全員から献体や解剖の同意を取ることが困難な場合は、主な相続人の同意で行います。が、意見が割れていれば、無理して献体や解剖はしないのが普通です」

■「遺体」は相続人のもの、「遺骨」は祭祀主宰者のもの

じつは相続の法理で処理されるのは火葬まで。骨になった後は、別の法理が適用される。民法には、「系譜、祭具及び墳墓の所有権」は「祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」という規定がある(897条)。系譜は家系図等、祭具は仏壇等、墳墓はお墓等を指すが、遺骨もこれらに準じて祭祀主宰者のものとする学説が多数なのだ。

祭祀主宰者とは葬儀や法事を代表して行ったり、お墓の世話をする人で、(1)被相続人(亡くなった人)の指定、(2)慣習、(3)家庭裁判所の総合的判断、という優先順位で決まる。最優先は被相続人の指定なので、遺言などで指名しておけば、内縁の妻などに遺骨を引き取ってもらうことも可能だ。

かつては、墓を引き継げる祭祀主宰者に経済的メリットもあり、その利得をめぐって遺骨の取り合いになることがあった。しかし、近年は事情が変わったようだ。

「いまは墓地余り。管理料やお寺との付き合いなどの負担も大きく、むしろ最近は誰も積極的に祭祀主宰者になりたがりません。いま遺骨で争うとしたら、ほとんどが感情の問題です」

祭祀主宰者になることが難しければ、裁判所に分骨を申し立てることもできる。「分骨はハードルが高く、本妻がいる場合の内縁の妻には認められないことが多い」(小松弁護士)というが、平和的に解決したいものだ。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 小松初男 図版作成=大橋昭一)

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