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"残念価格"新型iPhone登場で売れるモノ

プレジデントオンライン / 2018年9月20日 9時15分

昨年登場の「iPhone X」は改良版の「iPhone XS」シリーズに刷新。名実ともにメインストリームの端末に(アップルのプレスリリースより)

アップルが発表した「iPhone」最新モデルの価格が話題だ。最上位モデルの「iPhone XS Max」は16万4800円と、これまでのモデルで最も高くなっているからだ。TechCrunch Japan編集統括の吉田博英氏は、「ライバルのAndroid端末は低価格な高性能端末も増えており強気の価格設定だ。最上位モデルより4万円安い、廉価版モデルのiPhone XRが売れ筋になるのは間違いない」と分析する――。

■新型iPhone発表は6年続く“秋のお祭り”

アップルは今年も9月に新型iPhoneを発表した。2012年の「iPhone 5」発表以降、アップルは毎年9月前半に発表会を開催し、9月20日前後に製品を発売というスケジュールが7年間続いている。

iPhoneは、2年ごとに大幅にモデルチェンジして、その際に新しい製品名(ナンバリング)を使う。昨年は“次世代のiPhone”という触れ込みで「iPhone X(アイフォーン テン)」という新しいプロダクトラインを誕生させた1年目にあたり、今年はこのXの改良版が登場するのが大方の予想だった。

そして日本時間の9月13日未明に発表された製品の名称は「iPhone XS」。当初、「S」の文字が大文字か小文字かで各メディアで表記揺れが見られたが、ほどなく大文字で決着。iPhone 5s、6sと続いていた小文字の「s」から、iPhone 4S以来の大文字の「S」表記に変わっている。厳密には「iPhone 3GS/4S」は、後にアップルが「3Gs/4s」へ表記変更したので、大文字のSを冠するモデルはiPhone XSシリーズのみとも言える。

■スペックはiPhone Xから大きく変化なし

iPhone XSの進化を主要スペックからみると、心臓部となるSoC(System‐on‐a‐Chip)がApple A12 Bionicに変わっている程度。これはiPhone Xが搭載するApple A11 Bionicからの刷新で、プロセスルール(配線の幅。幅が細いほど、同じ面積の半導体の上で複雑な回路を作れる)がA11の10nmから7nmへと微細化した。中国ファーウェイ社が9月上旬に7nmプロセスのSoC「Kirin 980」を発表済みだが、Kirin 980搭載のスマホを発売するのは10月の予定。9月21日発売のiPhone XSは、世界で初めて市場に出回る7nmプロセスSoC搭載スマホとなる。

その他の主要スペックの変化は、モバイル回線の通信速度向上、「ゴールド」の本体色追加、耐水等級のアップ、ビデオ撮影時のステレオ録音など。iPhone Xとの比較ではパっとしない印象だった。

■機械学習の計算能力は8倍強、カメラ機能が大幅進化

Apple A12 Bionicの搭載により、カメラ性能が大幅にアップ。ボケや被写界深度を手動調整できるほか、HDR撮影時の画質なども向上する(アップルのプレスリリースより)

アップルが発表会でしきりにアピールしていたが、iPhone XSのウリは心臓部となるApple A12 Bionicだ。A11 Bionicに比べて、処理速度を司る「性能コア」は15%高速となり、バッテリー寿命などに関係する「効率コア」は消費電力量が50%削減されている。描画を担当するGPUについても、A11に比べて50%高速になった。とはいえこのあたりの進化は、プロセスルールの微細化や動作クロックの変更で達成できるものなので、少し乱暴に言うと想定内だった。

一方で驚いたのは、機械学習に特化した「ニューラルエンジン」と呼ばれるハードウェアが超強化された点だ。これもA11から備わっていたのだが、計算能力がA11の毎秒6000億回から、毎秒5兆回と8倍強の性能アップとなっている。

ニューラルエンジンの大幅な性能のアップの恩恵を受けられるのはカメラ機能。被写体の背景をソフトウェア的に“ボカす”ことができる従来の「ポートレートモード」が進化し、ボケ効果や深度をユーザーが手動で調整できるようになった。そのほか、HDR合成や手ぶれ補正などにもニューラルエンジンの機械学習が活用されているようだ。

■万人受けはしないが、一部ユーザーには羨望の機能も

万人向けには、カメラ機能の強化が最大のアピールポイントとなるが、iPhone XSには一部のユーザーにとってうれしい機能も搭載されている。

モバイルSuicaを使っているユーザーにとってはバッテリーが切れるとその機能が使えないことは致命的な欠点だった。だがiPhone XSは、本体のバッテリーが切れてもモバイルSuicaが使える「予備電力機能付きエクスプレスカード」を搭載した。

また海外出張が多いユーザーにとっては、SIMカードが2つ利用できる「デュアルSIM」仕様なのも見逃せないポイントだろう。日本向けモデルは、物理SIM+eSIM(ソフトウェアによるSIM)によるデュアルSIM仕様となる。

ドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリア(MVNOを含む)がeSIMに対応していないので、当面国内では使えない。だがSIMロックさえ解除すれば、SIMカードを入れ替えることなく海外のモバイル回線を利用できる。

eSIM対応のキャリアは現在10カ国14社。米国に3社、ドイツとインドがそれぞれ2社。そのほかイギリス、オーストリア、カナダ、クロアチア、チェコ共和国、ハンガリー、スペインが各1社と少ないが、主要国は押さえている。

一方、香港やマカオを含む中国ではeSIMの利用が認められていないため、これらの国や地域向けのiPhone XSは、物理SIMを2枚挿せる仕様になっている。香港仕様のモデルは日本の周波数に一部対応していないものの、ヘビーユーザーを中心に個人輸入などで人気が出そうだ。

もっとも、auの「世界データ定額」など国内キャリアのSIMを使った低価格のローミングサービスも充実しているので、社用携帯を持つビジネスパーソンや観光旅行で海外に行くユーザーにとっては、特に気にすることではないかもしれない。

■大画面モデルの名称は「Plus」から「Max」に

2014年のiPhone 6シリーズから、通常モデルより大画面の端末として「Plus」モデルがラインアップに加わっていたが、iPhone XSシリーズではPlusからMaxの表記に変わり、「iPhone XS Max」というモデルが登場した。iPhone 8とiPhone 8 Plusでは、カメラレンズの数や手ぶれ補正機構で差異があり、確かに“Plus”な要素があった。一方、iPhone XSとiPhone XS Maxでは、画面サイズが5.8インチと6.5インチで異なるものの、それ以外のスペックはほぼ同じだ。追加要素が少ないことから名称変更したのかもしれない。

昨年登場したiPhone Xは、同時に発表された大画面モデルの「iPhone 8 Plus」より表示パネルのインチ数は大きかったものの、実質的な表示領域は狭かった。iPhone X非対応のアプリの場合はパネルの天地に何も表示されず、さらに表示領域が小さかった。iPhoneに大画面を求めるユーザーにとっては、iPhone XS Maxの登場は待望だっただろう。

■売れ筋は間違いなく「iPhone XR」

iPhone XSシリーズと比べると、表示パネルが有機ELではなくIPS液晶、カメラのレンズがデュアルではなくシングル。それでいて表示パネルのサイズはXSとXS Maxの間。そして、新モデルの中では最も安い。このように、非常にややこしい立ち位置にいるのが、今回の発表会で最後に披露された「iPhone XR」だ。

シングルレンズながらアップル最新のテクノロジーが詰め込まれたiPhone XR。今回発表のモデルの中では安価で人気が出ると考えられる(アップルのプレスリリースより)

XRは廉価版という位置付けと考えられるが、SoCはXSシリーズと同じApple A12 Bionic。そして前面には顔認証のFace IDに対応した「TrueDepthカメラ」を搭載する。顔認証だけでなく、顔の表情をリアルタイムに反映できる絵文字の「アニ文字」や「ミー文字」も利用できる。ボケ効果や深度をユーザーが手動で調整できるカメラ機能も使える。

廉価版としては、2013年にリリースされた「iPhone 5c」があったが、同時期の上位モデルに比べて明らかにスペックが劣っていたうえ、それほど安価ではなかったこともあり、一代で姿を消した。一方、XRはXSシリーズと肩を並べる性能を備える。アップルにとって再チャレンジとなる廉価版だが、安価で処理性能にも優れるXRは今回のラインアップで人気機種になるのは間違いなさそうだ。

昨年、iPhone Xは発売直後の人気は高かったものの、1年を通してみると売り上げランキングではXよりも安価なiPhone 8が上位となることが多かった。XRが8のような存在になるか注目したいところだ。

■残念な価格設定で旧機種が売れる可能性も

こうした廉価版を投入するのも、新しいiPhoneの価格がかなり高いことをアップルが認識しているからだろう。アップル直営店やオンランストアで販売されるSIMフリー版の税別価格は、iPhone XSが11万2800円から、XS Maxが12万4800円から、廉価版のXRですら8万4800円からだ。

ライバルのAndroidでは、5万円以下でデュアルレンズを搭載した低価格な高性能端末も増えている。日本国内でシェアナンバーワンのiPhoneとはいえかなり強気の価格設定だ。XS Maxの512GBモデルは16万4800円と、一般的なモバイルノートパソコンよりも高い。

一方でアップルは、旧モデルのiPhone 7/8シリーズを大幅に値下げしてラインアップに残している。ここ数年、1世代前のモデルが値下げされて廉価になるケースは見られたが、2世代前のモデルをアップル自身が併売するのは珍しい。32GBの小容量とはいえiPhone 7のSIMフリー版は税別5万800円で、アップルが提供する金利なしの分割払いを利用すると、通信料を含めても月額1万円を大幅に切る価格で利用できる。

■筆者のおすすめは「iPhone XR」

今回の発表を受けて筆者がお勧めするモデルはiPhone XRだ。デュアルレンズではないため、光学2倍相当のズームが使えないという制限はあるが、SoCとTrueDepthカメラ搭載でアップルが提供する最新の機能を体験できる。

「Face ID」に価値を感じないのであれば、デュアルレンズを搭載するiPhone 7 Plusも候補になる。32GBモデルは税別6万4800円だ。アップルはSoCを含むハードウェアとOS、付属アプリなどを自社開発しているため、各モデルの処理速度や各種機能の有無をある程度戦略的に決められる。iPhone 7 Plusは2年前のモデルだが、処理速度は十分だし、デュアルレンズによるカメラ性能も高い。大幅値下げによって、コスパに優れるモデルへと変身した。

デュアルレンズや手ぶれ補正機構も備え、十分なカメラ性能を備えるiPhone 7。2年前の機種とはいえiOSが快適に動作する。6万円台で購入できる高いコスパには注目(アップルのプレスリリースより)

ここ最近、新機種になるほど高価格化が進むiPhoneだが、旧モデルを大幅値下げすることで、結果的にアップルはさまざまな層に響く製品ラインアップを完成させたことになる。高価格で現状では手が出せないApple 12 Bionicチップ搭載モデルも、来年の今ごろには値下げされるはずなので、Face IDやアニ文字がiPhoneユーザーに普及するのもそう遠くないだろう。

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吉田博英(よしだ・ひろひで)
TechCrunch Japan編集統括
1971年生まれ。95年アスキー(現・KADOKAWA)入社。アップル系の総合月刊誌「MACPOWER」「Mac People」編集部などに所属。「Mac People」編集長、「週刊アスキー」編集長などを歴任。に就任。2018年8月より「TechCrunch Japan」編集統括を務める。

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(TechCrunch Japan編集統括 吉田 博英)

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