"賠償費7兆円"でも東京電力は倒産しない
プレジデントオンライン / 2018年10月15日 9時15分
■「必要なときに必要なだけのお金」を受け取れる仕組み
東日本大震災の原発事故で賠償責任を負った東京電力。あれから莫大な損害賠償費を負担しているが、なぜ破綻しないのか。
背景には「必要なときに必要なだけのお金」を受け取れる仕組みがある。2011年9月、官民共同出資により設立された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(支援機構)」の資金援助だ。
「東電が毎年支払うべき賠償金は、東電と支援機構の協議によって決まります。その分の金額を支援機構が国から交付国債というかたちで受け取り、それを現金化して東電に渡しています」(東電に詳しいアナリスト)
それは財務諸表にも表れる。
「支援機構から受け取ったお金は、17年3月期の損益計算書(PL)を見ると『特別利益』に『原賠・廃炉等支援機構資金交付金』として2942億円を計上。『特別損失』には『原子力損害賠償費』として3920億円が計上されていて、帳簿上で相殺されます。これがなかったら利益が削られ、本業で儲けても17年3月期の営業利益2586億円という黒字はまず確保できません」(公認会計士の川口宏之さん)
損害賠償費は廃炉や賠償などを含めて21兆5000億円(16年12月、経産省の見積額)に上るという。だが、「交付金の返済義務の全体像が明確でないため、貸借対照表(BS)上に負債として計上されていない」(大和証券アナリストの西川周作さん)。
さらにキャッシュフロー計算書(CF)を見れば現金の流れもひと目でわかりやすい。
「17年3月期の営業CFは7830億円。同時に1兆1617億円の『原子力損害賠償金の支払額』が出ており、合算するとマイナスです。これを補填するのが『原賠・廃炉等支援機構資金交付金の受取額』という支援機構からの1兆1418億円の資金援助。結果、キャッシュの期末残高は9402億円とプラスになっています」(川口さん)
震災後の12年3月期からの賠償費支払額は計7兆2045億円。支援機構の資金援助がなければ倒産は免れなかっただろう。
----------
公認会計士
会計コンサルティング業務や、会計理論をわかりやすく伝える研究・講演を行う。著書に『決算書を読む技術』など。
大和証券 アナリスト
----------
(向山 勇 写真=時事通信フォト)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働 県内への経済効果は約4300億円 花角知事「議論の材料のひとつ」《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年4月24日 19時52分
-
「再稼働・廃炉・停止 3パターンの経済効果は…?」新潟県が調査結果公表 原発再稼働議論の材料のひとつに
BSN新潟放送 / 2024年4月24日 13時8分
-
24年度、廃炉に2540億円 福島第1原発、国が計画承認
共同通信 / 2024年4月8日 21時56分
-
福島第一原発事故から13年 「廃炉までが原子力産業、今後も技術の高度化で人も資金も確保が必要」政策アナリスト石川和男が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年4月6日 9時0分
-
東電の特別負担金、最高額に 原発事故賠償に2300億円
共同通信 / 2024年3月29日 21時5分
ランキング
-
1【速報】1ドル=155円を突破 円安止まらず 日米金利差「縮まらない」見方から円売り・ドル買い強まる
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月24日 21時19分
-
2サイゼリヤ、ギリギリ「国内黒字化」も残る難題 国内事業の利益率0.05%、値上げなしで大丈夫か
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 7時30分
-
3目印は「エコだ値」シール、セブン-イレブン“見切り品”値引き拡大へ 食品ロス削減へ…客「貢献できて嬉しい」【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月23日 20時0分
-
4山手線沿線の再開発が進む 「新宿、渋谷、品川」駅の工事はいつ終わるのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 7時10分
-
5NY市場サマリー(24日)ドル一時155円台前半で介入警戒感、利回り上昇 株まちまち
ロイター / 2024年4月25日 7時13分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください