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AIで資料作成する人がプレゼン勝利する

プレジデントオンライン / 2018年10月8日 11時15分

富士通常務理事 首席エバンジェリスト 中山五輪男氏

実生活へのAIの浸透に、今後加速がつくのはいうまでもないが、身近な資料作成においてはどうだろうか? 移籍が話題となったエバンジェリストが、現状と将来像を語った。

■AIならでは! 画像検索の進化

ビジネスの現場ではさまざまな書類が日々作成されています。その中でも提案書や説明資料、要件定義書などを作るとなると、ウィンドウズならパワーポイント、マックならキーノートといったプレゼンソフトが広く活用されています。

ただ、今のところいずれもAI機能を前面に押し出すツールには必ずしもなっていません。しかし、「AIは生産性を上げる道具である」という視点に立つなら、そうした書類作成にかかわる作業こそAIに手助けしてもらって、その分を人間は“考える”時間に充てたいところです。

AIによる資料作成には2つの機能があると思います。まず、作成時間の短縮につながる機能。次に、より芸術的・効果的なビジュアルの資料を作るための作法を教えてくれる機能です。

前者については、過去に作成したプレゼン資料を用途に応じて効率よく検索できるシステム「Ave‐Chance(アベチャンス)」を当社で開発しました。現在、社内実証中ですが、プレゼン資料作成作業において、時間短縮化・作業効率化を実現しています。

おそらく多くの企業では書類の電子化は進んでいて、プレゼンソフトで作成した書類もビッグデータとして蓄積されているはずです。もし提案書や説明資料などを作成しようというとき、それらの大量のドキュメント資産から必要情報を検索したり、それらを再利用したりできれば、最小限の時間と労力ですみます。そうした参照データを引っ張り出す作業を、AIによる検索機能に頼ろうというわけです。

検索の仕方としては、「キーワード」検索や「メタデータ」検索が入り口です。メタデータはAIによって自動的に付与されますが、さらにAIならではの恩恵に浴することができるのが「画像」検索です。実際に、グーグルなどの検索エンジンで、この画像検索を積極的に活用しているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。企業に導入されているIBMのワトソンや富士通のZinrai(ジンライ)などのAIサービスにおいても、この画像検索はどんどん進化しているのです。

アベチャンスでは、スライド単位で検索結果が表示されると同時に、レイアウトや色などのいくつかの観点から類似するスライドを近い位置に並べ替えられます。しかも、検索結果に含まれる用語群からキーワードインデックスが自動的に生成されます。それらをもとに必要と判断したスライドを絞り込み、画面上の特定のスペースにドラッグ・アンド・ドロップしていけば、スライド一式を1つのファイルとしてダウンロードできます。あとは、必要に応じて適宜修正を加えるだけで、新たな書類が完成するわけです。

私は現在、年間250回のペースで講演をしています。それぞれ講演時間も違えばテーマも違う。何度も足を運んでくださる方がいらっしゃるので、まったく同じテーマではできないのです。結果的に講演で使う資料も毎回違います。しかし、このようにAIを活用すれば毎回ゼロから資料を作成する必要がありません。場合によっては、9割方できあがったところから作業を開始することも珍しくないのです。

■“高評価”資料を、AIが機械学習

ただ、AIのもう1つの機能――より芸術的・効果的なビジュアルの資料を作るという部分では、まだAIに頼り切ることができないというのが実情で、私もその点については、専門のデザインチームに依頼しています。

写真=iStock.com/undefined undefined

もっとも、将来的には評価の高かった資料を集めて、なぜ高い評価が下されたのかをAIに機械学習させて、そこから「こういう構図にしたほうがいい」と提案してくれたり、目的に応じて「こういう作り方をしたほうがいい」と示唆してくれたり、さらにこちらが作成した資料に修正を入れてくれるようなシステムができる可能性は十分あります。そこまでいかなくても、「どの資料が顧客受けがよかったか」「どの資料がよく流用・転用されているか」がランキングで表示できるようになるだけでも、営業マンなどの資料作成時間は短縮するでしょう。そのような情報をAIがメタデータとして自動的に付与するなどといった形であれば、すぐにも実用化できそうです。

一方、プレゼンソフトによる書類の作成においては、当然ながら「文字情報」も重要な役割を果たします。ここでAIの力が発揮されるのが「要約」機能です。たとえば、当社のジンライは、AIの中でも日本語の扱いが飛び抜けて秀でていると自負しています。長い文章を要約する能力は、新聞記者とほぼ変わらないところまできていると評価されているほどです。実際、信濃毎日新聞で活用されているくらいですから。

この要約機能を使えば、社内外にある膨大な情報を効率よくキャッチできるだけでなく、書類を作成する際にも有効です。たとえば、最近のプレゼン資料や説明資料は、「1ページ1メッセージ」というコンセプトで作られることが多くなっています。1ページの中でくどくどと長い文章で説明したり、いくつもの情報を盛り込んだりするのは嫌われます。そうしたとき、AIがコンパクトな文字数で的確に要約してくれれば、書類作成の効率が飛躍的に向上するというわけです。

書類作成業務におけるAI活用はまだ緒についたばかりといえるかもしれません。それだけに今後、オフィスの現場に大きな変革をもたらす可能性も秘めているといえるでしょう。(談)

資料作成にAIを活用している現行サービスの主な事例を集めた(図参照)。プロが作成した幾多のデザインの事例から選択できるものや、会議の発言をそのままテキスト化するものなどがある。

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中山五輪男(なかやま・いわお)
富士通常務理事 首席エバンジェリスト
1964年生まれ。複数メーカーを経て2008年ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)首席エヴァンジェリスト。17年より現職。同年12月よりエバンジェリスト推進室長兼務。

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(富士通常務理事 首席エバンジェリスト 中山 五輪男 構成=小澤啓司 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)

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