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訪日外国人客は日本語シャッフルがお好き

プレジデントオンライン / 2018年10月21日 11時15分

味処 古川(右上)では、『君の名は。』の聖地巡礼者に対しノートを用意。コメントから客の国名がわかる(左上)。ハツ三館(右下)の仲居さんの英語虎の巻(左中)。観光案内所では訪問者に自国の上にスタンプを押してもらっている。マーケティングにも役立つ(左下)。

つたない英語の接客で、訪日客に人気を博しているスポットがある。現場で使われているのはカタコトの英語だ。なぜそれでも訪日客は不満を漏らさないのか。現場のスタッフたちに「カンタン英会話術」のコツを聞いた。第2回は「『君の名は。』の舞台」だ――。(第2回、全2回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年4月17日号)の掲載記事を再編集したものです。

■最後は「ありがとう」を日本語で言うのがコツ

大ヒットアニメーション映画『君の名は。』の影響でアジア系外国人が押し寄せている町がある。岐阜県飛騨市古川町だ。町には劇中に登場する場所が点在しており、そのスポットを訪ねて歩く、「聖地巡礼」を目的とした観光客が世界各国から訪れているのだ。

「多いのが台湾、香港、中国、韓国、タイからの観光客で、台湾や香港は20代の若い女性が目立ちます。英語が話せるのは香港人、マレーシア人、タイ人の順ですね。中国人や台湾人はあまり喋れず、カタコトの単語で返してくるという感じです」と語るのは、飛騨市まちなか観光案内所の吉田幸香さん。3年ほどイギリスの美容院で働いた経験から、英語担当職員に抜擢されたという。アジア人に英語で対応する際は、どんな点に気を配っているのだろうか。

「アジアの方にはあまり正しい発音で話さないほうが通じる気がします。カタカナ英語でも大丈夫で、単語をゆっくり、はっきり喋るほうが伝わります。お互いに英語が完璧ではないので、臆することなく知っている単語を並べて気楽に喋るといいと思いますよ」

外国人には正しい文法、発音じゃないと通じないと思って萎縮しがちだが、アジア人に対してはむしろはっきり単語を区切ってゆっくり話すほうが通じやすいとはまさに目からウロコ。これなら英会話の初心者でもいけそう。

「もう1つ気をつけているのは、ちょっと日本語を交えて話すこと。全部英語ではなく、最後は『ありがとう』など、日本語で言うようにしています。彼らもうれしそうに笑顔で『ありがとう』と返してきます。せっかく日本に来たのだから、日本語を話したいと思っているのではないでしょうか」

■いよいよ、“聖地”で訪日外国人と接触

「味処 古川」は、地元の食事やみやげ物を提供する店。『君の名は。』の劇中に登場するため、聖地巡礼の人気スポットとなっている。店長の森要さんによると、2016年から同映画ファンのアジア系外国人が急増しているという。

【アジア人との英会話ポイント】(左)観光案内所 吉田幸香さん●発音を気にせず、はっきりと(中)味処 古川 森 要さん●単語、単語で、全く問題なし(右)八ツ三館 池田理佳子さん●挨拶は日本語が喜ばれます

「韓国人は男性の一人旅が多いですね。中国人は家族連れが多い。料理に関しては、中国人は朴葉味噌とラーメンが好きでよく頼みます。台湾の方はフルーツが好きで、りんごなどを買ってその場ですぐ食べてます。アジアの人たちは実用的。お土産より、旅行中に食べるためのお菓子を買いますね」

必要のない物でも旅の記念にとうっかり買ってしまうのは日本人だけ? そんな堅実なアジアの人にお土産を買ってもらう秘策は、「試食」だそう。

「店外のベンチに無料のお茶とお菓子の試食をおいています。アジアの人は試食大好きでよく食べます。ただ、たくさん試食したから買ってくれるというわけではありません。あくまで美味しかったら買う、という感じです」

森さんは接客だけではなく、ボランティアで観光ガイドも行っている。アジア人とのコミュニケーションはどうやって取っているのだろうか。

「私は英語は全く喋れませんが、困ったことはありません。英語版のメニューを見せつつ、英単語で説明しています。ゆっくりわかりやすく、単語を一言ずつ区切って間をおいて話すことを心がけてます。その程度でもなんとなく通じるので、全く問題ありません」

さて、外国人観光客と接する機会の多い場所の代表格と言えば宿泊施設。飛騨にある老舗旅館「八ツ三館」若女将の池田理佳子さんによると、15年から外国人向けの宿泊ポータルサイトに宿情報を掲載したところ、爆発的に外国人の利用者が増えたという。地域別ではやはり香港、中国、台湾といったアジア系が群を抜いて多いとか。

では、アジア系外国人宿泊客への対応はどうしているのだろうか。英語が得意ではないという3人の仲居さんも交え、英語での接客事情を聞いた。

台北から来たご夫妻。2回目の訪日だという。

「食事の際は英語のメニューをお渡ししますが、アジアの方は日本語のメニューのほうがしっくりくるようです。漢字でなんとなくわかるからではないでしょうか。英語とは関係ないですが、台湾の方は、食後にフルーツを必ずといっていいほど召し上がります。あと、外国の方は、鍋からつけ汁に直接つけずに小皿にとってから召し上がります。文化の違いに最初は戸惑いましたが、半年くらいで慣れてきました」

ベッドルームはどこ? 布団をもっと高くして、浴衣の着方がわからない、などの旅館ならではの質問やリクエストにも単語を並べて、身振り手振りで説明すれば理解してもらえるという。

「季節がら、玄関におひなさまを飾っているのですが、五人囃子を見て、彼らは何をしているのか疑問をもたれる外国人の方が多いです。“ミュージシャン”とお答えしています」

「私は挨拶は日本語で、いらっしゃいませ、おかえりなさいませと言うようにしています。英語で挨拶をするより喜ばれるような気がします。片田舎の旅館に海外から来てくださる方々は、日本語での交流を楽しみにしている人が多いのではないでしょうか」

日本語をまぜたほうが喜ばれるとは、訪日外国人恐るるに足らず。調子に乗った我々取材班は、「味処 古川」に来ていた若い台湾人夫婦に、英語で話しかけてみた。

みなさんのアドバイスに従い、ゆっくり、はっきり話すことを心がけたら意外にも通じる! やはり流暢に話そうとする必要はないのだ。また、日本のアニメは何が好きか、と聞いたら、うまく言えず困っていたのでノートと鉛筆を渡したところ、「新海」「言の葉」「宮崎」「魔女」「風の谷」と日本語を書いたのには驚いた。同じ漢字を使う民族同士、いざというときは筆談が大きな武器になるのだ。

(山下 久猛 取材・撮影=山下久猛)

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