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成果が残せない人ほど「自己責任」が強い

プレジデントオンライン / 2018年11月9日 9時15分

写真=iStock.com/g-stockstudio

夜も眠れないような困難に直面したとき、「名トップ」と呼ばれる人たちは、なにを考え、どう動いてきたのか。「プレジデント」(2017年3月20日号)では、エステー、大和ハウス工業、ポルシェジャパンのトップに、場面別の対処法を聞いた。第3回は「仕事の約束が果たせない」について――。
QUESTION
仕事の約束が果たせない

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ポルシェジャパン・七五三木敏幸 社長の答え
心の中では自己中になって責任転嫁。究極のポジティブシンキングで

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■「今月だけがダメだった」と思っていた

仕事の約束が果たせないことなんてしょっちゅうありましたよ。営業本部長をやっていましたから目標の販売台数に到達しない現実が毎月押し寄せてくる。

「今月のターゲットは600台。おまえは今何台だ?」「584台です」「残り16台、どうするんだ」って。それで翌月の1日になってみれば結果2台足りない。そんなことがほぼ毎月繰り返されるわけです。

仕事のコミットメントが週単位である人もいれば、年1回の人もいれば、10年に1回という人もいるでしょう。人それぞれですが、短いスパンでコミットメントが設定されていれば、守れないケースだって当然出てくる。それでいちいち悲観したり、自分の能力を低く見積もってしまうと、目の前の仕事にも影響してきます。反省は必要ですが、すぐに次のコミットメントに向けて動き出さなければならないわけですから、切り替えることも大切です。

「今月だけがダメだった」。私はいつもそう思っていました。ついでに責任転嫁する。「今回はあのディーラーが売らなかったからだ」とか「最後にインセンティブを出したけど、それが1週間遅かったからだな」と。

私は違いますけど、営業マンというのは自己中が多い(笑)。私が見たところ、優秀な営業マンほど自己中ですね。ある後輩の営業マンがいて、優秀なヤツなんですけど、何しろ言い訳がひどい。「すみません、聞いてくださいよ。これがこうだから……」と見事に全部他人のせいにする。「分析と称して人のせいにするのはやめておけ」なんて注意していましたけど、究極のポジティブシンキングだなとこっそり感心していました。

■「どうせ自分には手が届かない」は仕事のプラスにならない

そいつのように言い訳ばかりしていると人格を疑われるから、口に出して言う必要はない。内心で「今回は失敗したけど、こういう事情があったから。次は絶対大丈夫だ」と考えるくらいでいいんです。「あのディーラーが売らなかったからだ」と責任転嫁できれば、「よし、来月はもう1週間早くあの社長にコミットさせよう」と対応策も浮かんでくる。

仕事の約束が守れなかったときに、コミットメントや目標値が高すぎると感じることもあるかもしれません。でも「どうせ自分には手が届かない」という自己否定的な考え方は仕事のプラスにはならないと思います。

以前、ある団地で4階くらいから子供が落ちたのを近くにいた主婦がとっさにキャッチしたというネットニュースを目にしたことがあります。驚くべきことに警察の現場検証の結果、子供の落ちる数秒の間に落下地点まで、どう考えても30代の女性が走って追いつける距離ではなかったそうです。でも現実には追いついて子供を抱きかかえている。

つまり火事場のバカ力ではないですけど、我を忘れるほど集中したときに潜在能力が発揮される。仕事も真剣勝負ですから、集中してやる気が高まれば自分が思っている以上に能力はストレッチする。

問題は、能力をストレッチするインセンティブは百人百様だということです。「給料を何%上げてマネジャーにしてあげる」と声をかけて伸びた部下もいれば、伸びなかった部下もいます。「1年頑張ったらオレが本社に口を利いて、販売企画に戻してやる」と言ってぐっと伸びた営業マンもいる。与えるインセンティブとコミットメントのバランスを取るのがマネジメントの仕事。仕事の約束が果たせないとき「上が私のインセンティブをわかってないからだ」という言い訳もありですね。

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エステー・鈴木 喬 会長の答え
大げさすぎるぐらいに土下座。許してもらったら、抱きつく!

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■まずいと思ったらすぐに出向く

一番いい対処法は頭を下げちゃうことですな。相手の足下にタタタッと走っていって、汗をかきかき土下座する。「まことに申し訳ございません、この通りです」って。嘘でもいいからとにかく頭を下げる。相手の怒りが爆発する前に、気配がよくないなと思ったら、すぐに出向いて先手を打つ。「ただいま全力を尽くしておりますので、いましばらくの猶予を」とか「奮闘努力しておりますが、なかなか衆寡敵せず(多勢に無勢)」なんて大げさなことを言うわけですよ。

3回も頭を下げれば相手もうんざりして「わかった、わかった」となるかもしれないし、「大したヤツだ」と逆に株が上がるかもしれない。許しを得たら「ありがとうございます」って抱きついてみたり。それくらいの演技をすればいいんです。私がそうされたら「アホか。その手は食わんぞ」って言いますけどね(笑)。世の中、先に頭を下げられて命まで取ってやろうという根性のあるヤツはそうそういない。腹を括って先に頭を下げたら勝ちなんです。

敵もさる者で、誰か謝りにきそうだったら居留守を使うとかね。入院していると言うと見舞いに来られちゃうから、海外出張とか適当なことを言ってね。「先に頭を下げられたら負け」と思って用心しているしたたかな人もいる。居留守を使う相手には朝、会社の前で張っているといい。朝イチから衆人環視で「申し訳ありません!」ってやられたら、無下にはできない。

頭なんて、帽子を被るか、人前で下げるか、それくらいしか使い道がないですよ。頭の下げっぷりのいい人は、とにかく人に可愛がられる。わざとチョンボをやって頭を下げて、相手の懐に入っていく強者もいますからね。

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大和ハウス工業・大野直竹 社長の答え
そんなにすぐに、成果は出せない。落ち込む暇があればとにかく動く

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■四季報を開いて地道に新規開拓

新入社員で配属された静岡支店の1年目、私が受注できたのは物置十数棟だけ。他の支店に行った同期のなかには住宅を何棟か受注した人も結構いて、私の5倍も10倍も数字を挙げていた記憶がありますね。

私の場合、仕事の約束を果たせないどころか、入社してからしばらくは赤字続きでした。新入社員のときはよくわからなかったんですけど、万年赤字の営業所でお客様が全然いなかったんです。昔からのお客様の引き継ぎというのがまったくない。大きい会社も小さい会社もすべて新規開拓するしかなかった。会社から四季報を1冊もらって、静岡にある会社を一生懸命探しては自分で考えてアプローチしていく。後にも先にも一から新規開拓したのはそのときだけかもしれませんね。

約束した数字が出せるようになったのは3年目くらいから。体当たりで飛び込んだところからポツポツと仕事がくるようになりました。比較的大きな会社を片っ端から攻めていたのが徐々に実を結んで、新規の取引先を獲得していく手応えを肌で感じることができた。そのときの経験は私個人の財産になったし、会社の財産にもなったと思います。

今思えば大変だったかもしれませんが、そのときは、とにかくがむしゃらにやっていました。不安を感じたり落ち込んだりする暇はなかったですね。

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鈴木 喬
エステー会長
一橋大学卒業後、日本生命入社。エステーに出向し、1998年社長。「消臭力」などヒットを連発。
 


大野直竹
大和ハウス工業社長
慶應義塾大学卒業。入社以来、一貫して営業畑。副社長、営業本部長などを経て現職。
 


七五三木敏幸
ポルシェジャパン社長
一橋大学卒業。群馬銀行、メルセデス・ベンツ日本、クライスラー日本などを経て現職。
 

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(ジャーナリスト 小川 剛 写真=iStock.com)

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