"あいつはズルい"の嫉妬が止まらないワケ
プレジデントオンライン / 2018年10月12日 9時15分
※本稿は、大嶋信頼『消したくても消せない嫉妬・劣等感を一瞬で消す方法』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
■自分より同僚が大切にされている気がする……
以前、会社に勤めていたときのことです。私よりも仕事ができない同僚が「上司からいい仕事を任されている」のを見て、「なんで?」と思ってしまいました。いつも上司に気を使って、仕事だって一生懸命にやっているのに、上司は同僚のことばかり気にかけていて、ちっとも私に気を使ってくれません。
食事に行ったときも、上司は同僚がいないのに気がついて、「おい! アイツはどうしたんだ?」と私に聞いてきます。「え? 私じゃダメなんですか?」と悲しい気持ちになります。
「どうして、アイツばかり優遇されているんだ!」とだんだんイライラが止まらなくなって、仕事に行くのも嫌になります。
上司から注目されたって、なんの得にもならないことはわかっているし、やっている仕事の内容は変わらないはず。でも、「上司からアイツのほうが優遇されている」と思うと、自分のこれまでの仕事の功績も、仕事ができないあの同僚に奪われるような感覚になります。
ちょっと考えたら「上司は優遇しているんじゃなくて、仕事ができない同僚をなんとかしてあげたい、と思っているだけ」というのはなんとなくわかるのです。それなのに、「許せない!」と、同僚のことも上司のこともものすごく嫌いになって、「こんな仕事辞めちゃおうかな?」という破壊的な気分になってしまうのです。
■嫉妬するとき脳内は「子ども」に
誰かに嫉妬しているとき、脳内では神経ネットワークが過剰に活動している状態です。神経ネットワークの過剰な活動によって、脳内の電流が記憶を整理している海馬を「ビビビッ」と感電させると、「子どもみたいになって嫉妬が止まらなくなる!」という現象が起きます。
記憶を整理させる部位が電気刺激を受けることで、「子どものときの記憶に戻ってしまう!」ということが起きるのです。そのため、嫉妬しているときは、子どもみたいな精神状態になるのです。だからよけいに嫉妬の発作が止まらない。ここで「発作」という表現をするのは、嫉妬が動物的な反応で止めようと思っても止めることができないからです。
幼少期に、親からケーキのイチゴを多めにもらった弟に対して、「ずるい!」と嫉妬していたような感覚で、自分よりもはるかに早く出世した後輩に、「ずるい!」と嫉妬してしまって、「絶対にアイツはおかしい! いじわるしてやる!」というような幼稚な考えしかできなくなってしまいます。
■「未来の自分を想像」で嫉妬の発作を止める
大人の考え方ができないのは、「精神年齢が低い」「器が小さい」ということではなくて、「嫉妬の発作で脳の記憶の部位が刺激されて、過去に戻ってしまう」という現象が起きているから。
脳の電気刺激で記憶がシャッフルしてしまい、「うー! 幼稚園児!」という具合になります。すると、「あの人ずるい!」が止まらなくて、ずっと頭の中で駄々をこね続けてしまうのです。「ずるい!」と連発して嫉妬の発作がおさまらなければ、記憶を整理する部位の電気刺激がおさまらずに、「子どものまま」の精神状態から戻ってこられなくなる、という悪循環になります。
でも、この電気刺激を止める方法があります。それは「未来の自分の脳をまねする」ということ。すると、「あれ? いつの間にか嫉妬の発作が止まった!」という感じになるのです。
■若い子にムカついて仕事が手につかず
ある方が「あの若い子は仕事もしないのに、上司やお客さんから好かれていて、成績を上げていてずるい!」と嫉妬しています。そして、「もうあの職場は嫌だ!」と辞めることまで考えていたのです。周りの人に相談すると、「そんな職場は辞めちゃいないよ!」「そんな仕事を真面目にやらないやつは相手にしなければいいのに!」といろいろな意見を言ってくるので、ますます混乱します。
職場でその若い同僚を見るたびに、ムカついて仕事に集中できなくなって、ミスを連発。「ミスをしたのはアイツのせいだ!」とさらにイライラして、仕事が手につかなくなっていたのです。
そこで、「あの同僚ムカつく!」という嫉妬の発作が起きているときに、「5年後の自分」と思ってもらいます。すると、「あれ? ちょっとおさまったかも?」という感覚に。「若いったって、今だけだからな!」という怒りがまだあったので、今度は「10年後の自分」と思ってみたら、「あれ? どうでもいいかも!」という感じになります。なんだか、南の島のビーチの風景が頭に浮かんできて、「もしかしたら、10年後は南の島でバカンスを過ごしているのかも!」と思ったら楽しくなってきます。
すると、これまで近づいてこなかった若い同僚も近づいてくるようになり、「あれ? こいつけっこういいやつじゃん!」という感じになって、印象が変わるからおもしろいのです。
■未来の自分を想像するのは自己暗示の一種
この「未来の自分」を想像する、という手法は脳内の「ミラーニューロン」という神経細胞を使った、自己暗示の一種です。1996年、イタリアの脳科学者によって、脳内のミラーニューロンという細胞の働きによって、「緊張している人がそばにいると緊張する」という現象が起きることが証明されました。
この緊張している人の脳の状態をまねる現象と同じように、「10年後の自分」を想像したときに、10年後の自分の脳の状態につながって、「10年後の自分の脳の状態をまねする」ことができるかもしれない。
そういった「未来の自分の脳をまねする」というイメージによって、「過度に狭くなった視野」を打破することができるのです。
すると、脳が10年後の自分の脳と同じように「シーン!」として気持ちがいい静けさになったりします。幼稚園児の駄々っ子状態だった脳が、10年後の自分の脳をまねたときに、嫉妬の発作はおさまって、いつの間にか無限の静けさの中に漂っていたりするのです。
■既読スルーは「どうでもいい」
ある女性は、女性が集まる場で、「なんで? あの人ばかり話の中心になってずるい!」と嫉妬してしまっていました。
でも、嫉妬すればするほど、なんだか自分だけが仲間はずれにされているように感じ、周りの人が自分の陰口をたたいている、という感覚になっていきます。LINEなどでも、「なんで私のコメントだけ既読無視?」「絶対にあの人がやっているにちがいない!」という感じで怒りがおさまらず、ムカついて食べるのが止まらなくなっていたのです。
そんなときに、「5年後の自分」と思ってみます。すると、「あれ? なんで自分はみんなの中心的な人物になろうとしていたんだろう?」とちょっとびっくりします。「あの人に任せていれば、自分は楽ができるし」と思えるようになり、「5年後の自分ってすごい!」と感動します。
LINEのグループ画面を開いたときに、一瞬嫉妬の発作が起きそうになっても、「5年後の自分」を想像すれば、「そんなにマメにチェックしなくていいのかも!」と思って画面を閉じることができます。気が向いたときだけコメントするようになったら、「ちゃんとみんな私のコメントに反応してくれるようになった!」となるから、おもしろいのです。
5年後、10年後、そして15年後や20年後の自分の脳にアクセスしてみる、と思ってみると、嫉妬の発作がいつの間にかおさまって、周りの人たちと不思議な一体感が感じられるようになります。
嫉妬から解放されると、人の成功をまるで自分のことのように、「うれしい」と思うことができ、一体感を抱いたときに、不思議と力がわいてきます。
「よ~し! 自分もやるぞ!」と、それまでできなかったことに挑戦できるようになり、それまで見えなかったことが見えるようになります。
もし、「ずるい!」「不公平!」と思うことがあったら、まずは一呼吸おいて、「10年後の自分」を想像してみる。それでモヤモヤが晴れるかもしれません。
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心理カウンセラー
米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。ブリーフ・セラピーのFAP療法(Free from Anxiety Program)を開発し、トラウマのみならず多くの症例を治療している。嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長などを経て、現在は株式会社インサイト・カウンセリングの代表を務める。カウンセリング歴25年、臨床経験のべ7万9000件以上。
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(心理カウンセラー 大嶋 信頼 写真=iStock.com)
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