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"必ずいる"有能社員を貶める人の思考回路

プレジデントオンライン / 2018年10月21日 11時15分

写真=iStock.com/AndreyPopov

対人関係で悩んだときに、どんな解決策をとればいいのか。評論家の佐々木常夫氏と哲学者の岸見一郎氏。2人の達人に、5つの「場面別」でアドバイスを求めた。第1回は「自分の悪い噂が流れている」について――。(全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2017年3月20日号)の掲載記事を再編集したものです。

■【QUESTION】自分の悪い噂が流れている

佐々木の答え:噂のピークが過ぎるのを待ち、ワンテンポ置いてから説明

■無実が証明される公算を考えて行動

あるとき、こんな噂が流れたことがありました。「佐々木さんは言うことがころころ変わる。朝令暮改でやりにくい」。私は仕事の指示は手短にパッパと出すタイプ。「まずはこれを最優先してやりなさい」と命じてからほどなくして、「やっぱりこちらから先に着手してほしい」と指示を変えることがある。それに不信感を募らせた部下が流した噂でした。「日頃、仕事は計画的に進めなさいという一方で、自分は一貫性がないじゃないか」というわけです。

ビジネスの状況は刻一刻と変わりますから、状況に合わせて対応を変えざるをえないのは当然のこと。こういう場合はきちんと説明しないといけない。初めに計画を立てる重要性に変わりはないが、柔軟に段取りを変更しなくてはならないことも多い。結果的に朝令暮改となることも必要なのだと説きました。その部下はそれで納得してくれました。

仕事の考え方や方法論について悪い噂が出たとき、それが事実と違うのであれば、グズグズせずにすぐ手を打つこと。噂の発信源がわかれば、その人に面と向かって話します。出所がはっきりしなくても、経路に心当たりのありそうな人に尋ねれば、大抵は原因が見えてくるものです。

一方、業務に直接的な影響が出そうにない場合なら、自分自身のよからぬ噂でも、基本的には放っておいて構いません。しょせん、噂は噂。いちいち躍起になる必要はない。

私も以前、職場の若い女性部下と不倫の噂を立てられたことがありました。出所は同じ部署の男性社員で、どうやら彼女に好意を寄せていたらしい。それもあってか、私が彼女と仕事帰りに2人で会っていることを見つけた彼は、「あの課長は若い女性と不倫をしている。けしからん」とあちこちにいって回ったようです。

その噂に気づいた私がどうしたかというと、何もしませんでした。というのも、噂が事実無根であることは、当の本人がよく知っていたから。私は単に彼女の恋愛相談に乗っていただけです。恋愛が成就して、いずれ結婚ということにでもなれば、周囲にもわかることだと思って黙っていました。実際、数カ月後に2人はめでたくゴールイン。そこで噂はデタラメだったことがはっきりした。

このとき私が動じなかったのは、いずれ事実が明るみに出ることが予想できたから。単に自分が無実だと知っているだけでは、噂が別の噂を呼び、つまらない面倒に発展しないとも限らない。噂への対応を考える際は、無実が証明される公算がいかほどかも考える必要があります。

そのうえで、きちんと釈明するときにもコツがあります。大慌てで否定したり、取り乱したりして火消しに走らないこと。上手にやり過ごすためには、噂のピークが過ぎるのを待ち、ワンテンポ置いてから淡々と落ち着いて説明するのが得策。そのほうがはるかに信頼されやすく、ムダな火の粉を浴びずに済むのです。

「しょせん、噂は噂。数日で消えてしまうことも多い」

岸見の答え:噂が立つのは有能な証拠、「嫌われる勇気」を持とう

■競争社会である限り、避けられない現象

悪い噂が流れるのは、自分が有能である証拠です。劣等感に苛まれた誰かがあなたの能力に嫉妬して、根も葉もない噂を流している可能性が高いことを知りましょう。

仕事で有能な人を貶めようと考える人は、組織に必ずいる。(PIXTA=写真)

日頃から劣等感のある人が、優秀な人に対して取りがちな行動があります。それは相手を貶めること。どんなに頑張ってみたところで到底太刀打ちできないと感じた場合、ダメな人は自分を高める努力を投げ出してしまう。その代わり、他者を貶めることで相対的に自分の価値を高め、優越感を持とうとするわけです。アドラー心理学ではこれを「価値低減傾向」と呼びます。悪い噂というのは、おそらくそのひとつの現象にすぎません。仕事の実力で勝負しても敵わないことがわかっているため、仕事とは直接関係ないような些末なことを取り沙汰して吹聴するのです。

熾烈な競争社会にあって、有能な人がいれば、必ずその人を蹴落とそうとする人が出てきます。ですから、つまらない噂を流して喜ぶ人を特定してやめさせようとしてもムダでしょう。職場全体の対人関係が競争関係に基づいている限り、ある噂を流した人が改心したとしても、また別の誰かが新たな噂を流すものです。

そもそも噂とは、その出所がはっきりしないことも多い。どこからともなく生まれた噂を面白がって無責任に伝播させる「ギャラリー」がいるからこそ、噂になるわけです。つまり主体がないからこそ、「風の噂」も生まれる。原因を追求しようとしても徒労に終わることが多いのです。こういう場合の一番簡単な対処法は、つまらない噂には注目しないこと。何とかしようと思わず、一切関わらないという毅然とした態度が正解。

仕事で有能な人が、その証しとして嫌われることもあるのは、ある意味で避けられません。悪い噂を立てられたときも、そんなふうに思えば気が楽になるでしょう。「それだと職場で嫌われてしまうのでは?」と心配になる方に、2つのアドバイスがあります。まずは、ぜひ「嫌われる勇気」を持ってほしい。なにも「嫌われなさい」といいたいわけではなく、「嫌われることを恐れるな」とお伝えしたいのです。もうひとつは、必ず味方がいることを思い返してほしい。悪意を持っている人がいるとしても、それ以上に信頼してくれる人がいるはず。上司でも同僚でも部下でも、自分の味方になってくれる人を思い起こしてみましょう。

噂にばかり気を取られると、心配性な人は「みんなが自分を悪く思っている」と悲観しそうになるかもしれません。でも、「みんな」ということは、まずありえない。赤の他人とはいえ、日頃一緒に仕事をしている者同士、妙な噂が流れたからといって、手の平を返したように態度を変える人ばかりではありません。ただ、よく思っている人や評価している人は、あまりそれを言葉に出さない。人は悪口をいうときのほうが声高になるものです。

「周囲は敵ばかりではない、味方は必ずいる」

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佐々木常夫
佐々木マネージメント・リサーチ代表
1944年生まれ。69年、東京大学経済学部卒業後、東レに入社。2001年に同期トップで取締役に。03年、東レ経営研究所社長に就任。10年より現職。
 

岸見一郎
哲学者
1956年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋哲学史専攻)。京都聖カタリナ高校看護専攻科非常勤講師。共著書『嫌われる勇気』は155万部のベストセラーに。
 

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(佐々木マネージメント・リサーチ代表 佐々木 常夫、哲学者 岸見 一郎 構成=小島和子 撮影=大沢尚芳、森本真哉 写真=PIXTA、iStock.com)

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